インドのオフショア最大手、難航する日本攻略に新たな一手Weekly Access Top10

インドや中国のオフショア企業の好調さは世界的に知られているが、実は日本ではそれほどでもない。インドのオフショア企業、タタコンサルタンシーサービシズのラマドライCEOが来日した。

» 2008年02月24日 14時01分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 先週は大企業の約8割、2ちゃんねるにアクセス制限ネットの私的利用、管理者と従業員の考えに「大きなズレ」とネットスターのように、企業が持つ情報システムにおけるセキュリティ確保に関する記事が読者の関心を集めた。

 ITが企業の業務と深く絡み合った現在、企業文化、市場環境、法制度などさまざまな要素を取り込んだ上でITを考えなくてはならなくなっている。そんな複雑な状況に、ITサービスを提供する側も苦労している。例えば、企業の情報システム開発を受託するいわゆるオフショア企業だ。インドや中国のオフショア企業の好調さは世界的に知られているが、実は日本ではそれほどでもない。

 「日本企業の商品開発リードタイムは非常に短く、日本の商習慣を理解していないとシステム開発を任せられない」(オフショア企業関係者)という。もちろん、英語圏でのビジネスとは違い、日本語の壁も存在する。

 インドの大規模財閥であるTATAグループの一つ、オフショア企業のタタコンサルタンシーサービシズ(TCS)は、世界での2007年の売上高は43億ドルという規模を誇る。だが日本でのビジネスは大きいとはいえない。

来日したタタコンサルタンシーサービシズのラマドライCEO

 そんなTCSのスブラマニアン・ラマドライCEOが先週来日した。現在2000人前後の日本市場向けの技術者を「今後数年で6500人まで増やす」と強気の姿勢を見せた。

 背景に、日本市場での一点突破が成功し始めていることが挙げられる。日産自動車や富士ゼロックスにおける組み込みソフトの開発がここ数年好調だという。日本独自の商習慣や仕事のやり方を理解し、準備を進めた結果が出てきている。「日本はローカライズが重要な市場」と話すラマドライCEOは、横浜に組み込み開発向けの拠点を設置するなど日本攻略の布石を一つずつ打っている。

 最近になり、2月20日に日本ユニシスとインフォシスが提携するなど、日本市場でのオフショアベンダーの動きが活発化しつつある。

 日本の中堅システムインテグレーター関係者は「オフショア企業は(顧客企業から直接受注する)一次請け案件がまだ少ない」と指摘する。二次請け、孫請けなどの案件ではなく、利幅の高い一次請け案件を増やすこともオフショア企業の課題といわれている。

 3年、5年、10年後にインドや中国といったオフショア開発企業が日本でのIT市場でどのような役割を担っているかに注目したい。

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