Microsoftユーザーに手を差し伸べるIBM Lotus(1/2 ページ)

「Notes vs. Exchange」の戦いはもはや過去のものだ。企業は、イノベーションのために、組織の枠を越えたコラボレーションを求めている。

» 2008年02月25日 09時04分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「不幸にしてExchangeを選択してしまったユーザーにペナルティを与えるようなことはしない。彼らにも、より良いインスタントメッセージング、より良いソーシャルコンピューティングのプラットフォーム、そしてより良いオフィススイートを提供したい」── 先週、「Lotus Spring Forum 2008」のために来日したNotes/Dominoの責任者、ケビン・キャバナー副社長はそう話した。

Notes/Dominoの開発責任者として日本のユーザーにも知られているキャバナー副社長。現在はNotes/Dominoの製品全体を統括する立場へと昇格した

 「Notes vs. Exchange」の戦いはもはや過去のものだ。コミュニケーションやコミュニケーションの手法も多様化し、即時にレスポンスが得られるインスタントメッセージングや、より多くの人たちとつながるソーシャルコンピューティングが企業の外では浸透している。

 1989年にNotesのバージョン1が産声を上げて以来20年が過ぎようとしているが、キャバナー氏は、最初の6カ月を除き、そのすべての歴史にかかわってきた。そんな彼の言葉に、「Notes vs. Exchange」の戦いを乗り越えた余裕だけではなく、IBMもコンシューマー市場で大きなうねりとなっている新しい技術の波に乗らなければならないという危機感を感じる。

 「20年前、日本企業では役員らがキーボードをタイプできないから電子メールは普及しないといわれた。しかし、世代交代は否応なく進むものだ。ソーシャルコンピューティングも限定的な市場に留まらず、労働力の世代交代とともに企業のイノベーションに欠かせないものとなる」とキャバナー氏は話す。

 ある米国のコンサルティング会社が社内調査を実施したところ、ほとんどすべての若手社員が、FacebookのようなSNSで顧客やビジネスパートナーに関する情報を書き込んでいた。最近、キャバナー氏がその会社の経営陣を訪問したら、情報漏えいのリスクを懸念すると同時に、「なぜ同じエネルギーを社内のコラボレーションのために使ってくれないのか? 彼らが好んで使ってくれる革新的なツールは何なのか?」を知りたがっていたという。

文書中心から人中心、そしてコミュニティー中心へ

 Lotus Spring Forum 2008で基調講演を行った営業戦略担当のジェイソン・デュモン氏も「ワークスタイルの違い」に応じた新しいツールが企業にも必要だと話す。

 電子メールを交わしたり、文書を電子的に共有しながら仕事を進めていくのが「文書中心」のワークスタイルだとすれば、「すぐに専門家の意見を仰いで顧客の問題を解決したい」といった即時性の高いワークスタイルが「人中心」のワークスタイルだ。

 確かにワープロや表計算のツールによってさまざまな文書がデジタル化され、それらをチームで効率良く共有することでコラボレーションは随分と進化したが、即時性へのニーズには上手く応えられない。

 Notes/Dominoによって文書中心のコラボレーションをリードしてきたIBM Lotusは、新たなコミュニケーションツールで既存製品を機能拡張する道を選んだ。しかし、Outlookとの連携も図ったSametimeは、多くのMicrosoftユーザーに採用されているという。

 1月のLotusphere 2008カンファレンスでは、2007年の新規導入企業のうち、3分の1はExchangeユーザーだったことも明らかにされている。後づけだが、非Notesユーザーであっても選択できるインスタントメッセージングのためのプラットフォームとして機能強化が図られてきた。

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