スマートフォンとWebで位置情報を巧みに連携――トーテックの取り組み日本企業のためのスマートフォン導入術(1/2 ページ)

電気設備工事を手掛けるトーテックは、リアルタイム性の高い情報の活用を目的にスマートフォンを導入した。現場・本社間での情報共有だけでなく、外部への情報公開などにも活用の幅を広げている。

» 2008年03月25日 00時05分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 電気設備工事を手がける東京電力グループのトーテックは、2006年2月にスマートフォン「W-ZERO3」を導入し、2007年11月からは同シリーズの最新モデル「Advanced/W-ZERO3[es]」を運用する。スマートフォン導入の目的は、現場と本社での音声およびデータによるコミュニケーションの効率化だ。位置情報を駆使し、リアルタイム性の高い情報の活用へ取り組んでいる。

 スマートフォンと連携するのが自社開発した「電力工事アクティブサポートシステム(ASシステム)」だ。同システムは、Webベースの業務システムで、営業エリア内で1日当たり350件におよぶ工事の場所や内容、必要となる資材、工程、通電の開通/停止の日時といった詳細な情報のほか、工事の進捗状況、作業チームの現在位置、日報、地図データなどを管理している。

 スマートフォンでは、これらの情報の閲覧や作業進捗の報告入力に加えて、基地局の位置情報を利用した各作業グループの所在地検索ができる。さらには、この位置情報を自社のWebサイトなどを通じて外部にも公開している。

トーテックが構築したシステムの概要

リアルタイムへ近づける

 ASシステムとスマートフォンの導入以前は、現場ではハンディターミナルとPHSのデータ通信カードという構成で業務データを処理し、本社の基幹業務システムと連携させていた。業務連絡には携帯電話を利用していた。だが、現場の状態や作業チームの現在地を迅速に把握するのが難しく、これにより住民などからの工事に対する問い合わせ対応が十分にできないという課題があった。また、帰社後の事務処理に時間がかかる、作業予定の電柱の所在地が現場で分からないといった課題も抱えていた。

ASシステムやモバイルシステムの開発・運用を担当する福島氏

 システムの開発と運用を担当する業務システムグループの福島昭稔リーダーは、「データ処理や通話などができるスマートフォンに注目し、現場と本社の方で効率を高める取り組みをしたいと考えていた」と話す。スマートフォン導入で、通話と業務データ処理を1台の端末に統合して、リアルタイム性の高い情報を活用したコミュニケーションと業務の効率化が最大の狙いだった。

 現在、スマートフォンの導入状況は、作業チームに約100台、管理部門に20台を配備している。また、また、同業者である埼玉配電もASシステムおよびスマートフォン約100台を導入している。現場では、スマートフォンで工事内容の確認や到着および出発、作業進捗の報告、ほかのチームの位置確認などの情報を利用する。管理部門では、各チームの作業状況や現在確認などに利用している。

 位置情報は、作業チームの最寄りにあるPHS基地局の位置情報とデジタル地図データ、電柱1本1本ごとの緯度・経度が登録されているデータベースをそれぞれ連携させている。スマートフォンから送信される位置情報を、ほかのスマートフォンや社内PCで参照したり、Webサイトで公開できるようにした。外部に情報を公開することで、作業現場周辺の住民や地域の交通機関に最新の工事内容などの情報を役立ててもらうのが目的だという。

同社のPCサイトでは工事の予定や進捗状況を公開。現場作業をしている場所には自動車のアイコンが表示される

 こうした運用により、従来に比べて外部からの問い合わせ対応の時間を半分にできたほか、報告などの事務処理時間を約5分の1に効率化できたという。また、スマートフォン導入以前は、現場周辺の地図情報を紙文書で管理していたが利用料金や印刷代などのコストが発生していた。スマートフォン導入で、デジタルの地図データを利用できるようになり、年間約100万円のコスト削減効果を得られたという。スマートフォンの導入は同社の情報活用に大きな効果をもたらしたようだ。

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