「ワンマンコントロール」と「潔さ」――富士通トップ交代Weekly Memo(1/2 ページ)

新連載の初回は、3月27日に富士通が発表したトップ交代のニュースを取り上げながら、マネジャーにとっても関心の高い、経営の「あるべき姿」について考えてみたい。

» 2008年04月01日 16時00分 公開
[松岡功ITmedia]

的確なマネジメントへの危惧

 今のご時世、大手企業といえどもいつトップ交代があっても不思議ではないが、その企業の経営状況やトップの在任期間などから、およそ予想がつくし、周りからも予兆が感じられるケースが少なくない。

 その点、富士通の黒川博昭社長(64)は就任して5年。「まだ短い」という在任期間ではなくなったが、就任時の経営不振から脱し、業績を回復させてきた手腕は誰しも認めるところだっただけに、今回のトップ交代は意外だった。

 富士通が3月27日に発表したトップ人事では、6月下旬に野副州旦経営執行役副社長(60)が社長に、間塚道義副社長(64)が代表権のある会長に昇格。黒川社長は相談役に、秋草直之会長(69)は取締役相談役に退く。同日に行われた記者会見の内容も含めてすでに詳細な報道がなされているが、以下に筆者がとくに印象に残った黒川社長、野副次期社長の会見でのコメントを挙げておきたい。

記者会見で抱負を語る富士通次期社長の野副州旦経営執行役副社長、左は黒川博昭社長、右は次期会長の間塚道義副社長

 「ワンマンコントロールの弊害が出てきた」(黒川氏)

 今回のトップ交代の大きな理由について、黒川氏はこう話した。同氏によると、「システム構築で培ったプロジェクトマネジメント手法をもとに、経営にもプロジェクトリーダーのような強いワンマンコントロール体制を敷いてきたが、それがいつしか何事も私の顔色を窺い、常務会でも意見が出ないようになり、下からの情報に統制がかかるといったことも見受けられるようになった。当初はワンマンコントロールも効果を発揮したが、このままでは的確なマネジメントができない可能性がある。会社を引き続き成長させていくためにも、ここはリーダーを変えたほうがよいと思った」という。

 「やり残したことは考えたことがない」(黒川氏)

 記者から「社長としてやり残したことはないか」と聞かれてこう答えた黒川氏は、「経営は駅伝競争のように、タイミングを図って次の人にたすきを渡していくもの。課題は常に出てくるが、それはその時のリーダーが解決し、また新たな課題に立ち向かっていけばよい」と説明した。

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