日本企業の“生命線”――知的財産戦略Weekly Memo(1/2 ページ)

今回は、富士通が4月4日に行った「2008年度 研究開発・知的財産戦略説明会」での話をもとに、企業における知的財産戦略のあり方について考えてみたい。

» 2008年04月07日 12時00分 公開
[松岡功ITmedia]

まだ少ない知財戦略の本格運用

 このところ、製造業をはじめとして特許情報などの知的財産(知財)を研究開発や事業戦略に役立てようとする企業の動きが活発化している。政府も国家プロジェクトの「知財立国」推進に力を入れ、まさに国を挙げての知財戦略が展開されつつある。しかし、知財を経営の視点でマネジメントし活用している企業はまだまだ少ない。

 これが企業の知財戦略に対する筆者の問題意識だが、さらに言えば「知財戦略は経営戦略そのもの」で、企業のすべての領域を支える役割を担っていると筆者は捉えている。それは取りも直さず、IT戦略と同じだ。そう考えると、知財戦略のあり方にIT戦略が投影される部分も少なくない。

 そんな思いを抱いていたところ、富士通が4月4日に「2008年度 研究開発・知的財産戦略説明会」を開いたので参加した。同説明会では、同社の研究開発機関である富士通研究所の戦略や最新技術の研究発表なども行われたが、ここでは同社の知財戦略にフォーカスする。ちなみに同社の知財戦略は、国内企業の中でも先進的だと目されている。

知財戦略とスタンダード戦略

 説明に立った富士通 経営執行役 法務・知的財産権本部長の加藤幹之氏によると、同社の知財戦略は事業・研究開発の促進を知財の側面から支えるべく、「戦略的な権利(特許権・商標権・意匠権・著作権)の取得・維持・活用」、「他社権利を含む権利尊重のための取り組み」、「トレードシークレットを含む情報管理の徹底」、「政策提言のための積極的な社外活動」、「戦略的な人材の育成と確保」といった5つの施策を推進している。

富士通が4月4日に行った「2008年度 研究開発・知的財産戦略説明会」で質問に答える富士通研究所社長の村野和雄氏(左)と富士通 経営執行役 法務・知的財産権本部長の加藤幹之氏

 その目的は、スタンダード(標準化)戦略と相まって、「事業の競争優位性」、「事業の自由度」、「事業収益」の3つを確保することにある。具体的には、自社の保有する技術を知財で支えることによって、より効果的に製品やサービスを差異化して事業の競争優位性を確保。より良い条件で他社と連携することによって事業の自由度を確保。ライセンスなどの活動を通じて事業収益を確保するために、知財戦略とスタンダード戦略を立案し実施している。そして、保有技術を知財でバックアップして事業を支えることが、知財戦略とスタンダード戦略のより重要な役割であり、それを実現するために、両戦略は事業戦略、研究開発戦略と一体に存在するものであるべきだとしている。

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