コラム
» 2008年04月22日 03時50分 UPDATE

闘うマネジャー:行政のシステムコストは健全か?――削減に向けた視点の転換 (1/2)

民間からCIOとして長崎県庁に入り、8年目。「電子自治体化にかかるコストを大幅に削減せよ」というミッションを与えられ奮闘中だが、自らの経験をもとに、コスト削減に必要な「視点」について考えてみた。

[島村秀世,ITmedia]

見積もりに納得感が生まれない理由とは

 大型汎用機といわれるコンピュータが自治体に導入されたころ、「金食い虫」といわれながらも、そろばんや電卓による手作業が激減したことから人員が大きく削減された。つまり費用対効果でみると「効果」の方がはるかに大きかった。電子自治体化が進めらている現在の状況はどうであろうか。費用対効果が高いと胸を張って言えるのだろうか。

 筆者は2001年に民間からCIOとして長崎県庁に入り、8年目を迎えている。入庁し初めて知事と会ったとき、「電子自治体化にかかるコストを大幅に削減せよ」というミッションを与えられた。自治体が高い買い物をしているのは知っていたので、削減できる場所はどこにでもあるさと思ってはいたが、同レベルの人口を抱える他県と比べ1/2にできるかと言われれば言葉に詰まったのも事実だ。

 いくらベンダーの言いなりであるとはいえ、県庁の職員は優秀である。ならば一定の範囲において言いなりであっただけで、明らかに無駄と考えられるような支出をしていたはずがない。事実、調べていくと大型汎用機に関するコストは他県と比べさほど違っていない。またベンダーの方々も極めて誠実で、トラブル対応なども的確かつスピーディーに対応してくれていた。しかし、目の前を通過していく見積書を見ると納得できるものではない。

 納得感がない理由をつらつらとメモしながら考えてみると、何のことはない、「他県と比べ」という言葉にごまかされていただけだった。どのような考えの下でコストを削減していくかの視点がまったく抜け落ち、目先のシステム開発を何とかこなすことのみに意識が向いていたのだ。このような意識の下では、「ほかの組織と共同開発を行うことでコストを下げることがベストだ」といった発想になりがちだが、正解だろうか。

業務システムは組織文化の上に

 実例をみてみよう。政府では2003年に「全省庁の人事・給与システムを全面刷新し、単一のアプリケーションとすることで、政府全体として初期開発コストを400億円程度削減する」とした。しかしその後、政府からこの件に関する自慢話は聞こえてこない。調べてみたら、「省庁の人事・給与システム、予算凍結勧告へ」(2006.6.25付日本経済新聞)とあった。最終的にどうなったのか筆者の知るところではないが、業務システムの共同開発は極めて難しいことが分かる。

 筆者は、「業務システムは、組織の生い立ちや組織文化の上に成り立つものだ」と考えているが、先の例では、省庁の組織文化の違いはシステムでいかようにも吸収できるとしてしまったように思える。

 また、省庁職員は自組織の人事・給与のあり方を丁寧に説明すればよく、要件をとりまとめ、設計書を作成するのはベンダーの仕事としているように思える。一見、何も間違ったことはしていないようだが、大きな誤解がある。設計書を作成するSEはシステム開発のプロであって、各省庁の人事・給与業務のプロではない。SE本人がいかに優秀であろうと、こと業務に関しては素人に過ぎないのである。業務の素人に400億円もの削減が可能なシステムが設計できるであろうか。筆者は否だと考える。

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