「日本市場は独特、SaaSのような賭けも必要」――ビル・ゲイツ氏が来日

ビル・ゲイツ氏が来日し、米Microsoftの今後について言及。米Yahoo!とは「独立した路線を進むべき」とし、買収の再提案を否定した。

» 2008年05月07日 20時24分 公開
[藤村能光, 怒賀新也,ITmedia]

 米Microsoftのビル・ゲイツ会長は5月7日、都内で記者会見を開き、Microsoftの今後の戦略や米Yahoo!の買収提案に言及した。同氏は7月から会長兼相談役としてMicrosoftの戦略策定などを手掛けるが、経営の第一線からは退く。世界の健康と教育の課題に取り組むビル アンド メリンダ ゲイツ財団での活動に注力する考えだ。

image 「Microsoftでは17歳からフルタイムで仕事をしてきた。今後は財団の運営に力を注ぐ。わたしがやってきた仕事は小さい、ほかの人がもっと評価されるべき」とゲイツ氏。「(経営を退く)7月1日はキャリアが変化する地点」と述べた

 ゲイツ氏は会見で、米Yahoo!の買収を断念したことに言及した。「Yahoo!と対話をするために努力をした。その結果、それぞれ独立した路線を進むべきとの結論に達した」という。スティーブ・バルマーCEOの声明にのっとり、買収の再提案は実施しないことを明らかにした。

 今後Microsoftは存在感をどう示していくのか。ゲイツ氏は「野心的な取り組みを行っていく」と自信を見せる。その候補として、インターネットサービスとデスクトップアプリケーションを組み合わせる同社の戦略「ソフトウェア+サービス」を挙げた。

 特にWebサービスでは米Googleとの比較を常に強いられる。ゲイツ氏は「Microsoftはソフトウェアの技術で競争したい」と述べ、検索をビジネスの核とするGoogleとの立ち位置に一線を引いた。今後はソフトウェアのリリースに注力していき、「Vista、Officeの成功を超える」と意気込む。

 「Googleは検索では強いが、Microsoftは携帯電話やゲーム、タブレットコンピューティングなどさまざまな市場を持っている。競争するのは検索だけではない」(同氏)

チーフソフトウェアアーキテクトのレイ・オジー氏が製品開発を監督し、最高研究戦略責任者のクレイグ・マンディー氏がMicrosoftの研究活動や新技術の育成を手掛けると話したゲイツ氏

 日本市場では、Xboxやポータルサイト「MSN」が不振となっている。ゲイツ氏はコア製品を中心にてこ入れを図るなど、基本姿勢を崩さない構えだ。「OfficeやExchange、SQL Serverといった製品がどの国でも順調にシェアを伸ばしている」と述べ、これらの製品が市場をけん引してきたことを説明。「国ごとにシェアの高い製品、低い製品があるが、今後もブレイクスルーは生まれてくる」と期待を寄せる。

 一方で「日本市場は独特。SaaS(サービスとしてのソフトウェア)で賭けにでるしかない」といった発言も出るなど、弱気な一面も見せた。

 同会見では学生の開発者を支援する取り組みを始めると発表。Microsoftの統合開発環境「Visual Studio」やWebデザインスイート「Expression Studio」といった有償ツールを、学生が無償でダウンロードできるようにするという。

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