シスコ、拠点のIT環境を改善する新施策IOSのAPIを初公開

シスコは支社や支店などのIT化を推進するソリューションを発表した。ルータにアプリケーションを統合するためのAPI公開や、小規模事業所向けISRルータの新製品を発売する。

» 2008年05月28日 20時11分 公開
[ITmedia]

 シスコシステムズは5月28日、支社や支店など拠点におけるIT環境を改善するソリューションを発表した。ISRルータ(サービス統合型ルータ)にアプリケーションを統合するためのAPIを公開し、APIを利用するためのモジュールや小規模事業所向けISRルータなどの新製品を7月に発売する。

平井氏

 3月にエンタープライズ&コマーシャル担当副社長へ就任した平井康文副社長は、生産性向上や経営基盤のボーダーレス化、リアルタイム性の高い情報といった経営課題に対し、「ネットワークおよびアプリケーションに近いレイヤでの最適化を提案したい。特にユニファイドコミュニケーションやデータセンターの仮想化に注目し、“コラボレーション”と“仮想化”をキーワードに企業向けソリューションを順次展開する」と表明した。

 従来は規模の制約から、拠点に対するIT投資の優先度は低くみられてきたが、平井氏は「コンプライアンスや全社レベルでのインフラ最適化で拠点における環境整備の必要性が高まっている」と狙いを説明した。

 新ソリューションの柱として、シスコはISR製品などに採用している「IOS」のAPIを初めて公開し、APIを利用するアプリケーションの開発(SDK提供を含む)およびマーケティング、販売を支援するための「Cisco Application eXtension Platform(AXP)」を7月に開始する。この仕組みを利用することで、ISRルータにアプリケーションを統合し、例えばネットワーク状況に応じてアプリケーションを制御する、アプリケーションのパフォーマンスを高めるためにルータの設定を変更するといったことが可能になるという。

AXPのアーキテクチャ

 AXPを利用するには、対応ルータの「ISR 1841」「同2800シリーズ」「同3800シリーズ」と、新たに発売される追加モジュール「APPRE」シリーズが必要。APPREシリーズは、CPUやHDD(SSDモデルも用意)、メモリなどを搭載したLinuxベースのハードウェア製品で、従来はサーバなどで提供していたアプリケーションをルータで集約する。アプリケーションベンダーやユーザー企業の開発担当者はAXPを利用して、ネットワーク環境と密接に連携したシステムを開発できるようになるとしている。

APPREモジュールと3GワイヤレスWANモジュールを利用することで、小規模オフィスの運用がまかなえる

 海外ではすでに3月から始まっており、特定業界向けやユニファイドコミュニケーション、ネットワーク管理のソリューションを提供するベンダーがパートナーとして参画。国内では、ナイスシステムズとアボセントの2社が参画する予定で、シスコでは提携先を順次拡大していく。

 シスコはこのほか、小規模拠点向けでは初の統合型ルータ「Cisco ISR 880/860」とISRシリーズに携帯電話網への接続機能を追加する「3GワイヤレスWANモジュール」も発表した。

 ISR 880/860は、ルータとしての基本機能にファイアウォールやURLフィルタリング、VPN接続、IPS(不正侵入検知)の各種セキュリティ機能を統合し、高速無線LAN規格「IEEE 802.11n ドラフト2.0」や本社、データセンターからの集中管理などに対応する。

 3GワイヤレスWANモジュールは、GSMおよびUMTS、W-CDMA(HSDPA)の携帯電話網に対応し、災害時におけるIP-VPNのバックアップ回線用途やイベント時に臨時オフィスを開設する場合のWAN接続設備としての利用を見込む。対応ルータは「ISR 1841」「同2800シリーズ」「同3800シリーズ」。現在は国内の携帯電話事業者と接続性試験や、同製品に対応するサービス内容の検討を進めており、2008年度第3四半期までに提供を始める計画だとしている。

新ソリューションの活用事例(小売業の例)

 平井氏は最後に、「これまでエンタープライズ分野はネットワーク機器の提案が中心だったが、今後はソリューション型の提案を拡大させたい」と述べた。

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