発掘した知を現場に組み込む――SPSS社長データマイニングは今

データマイニングソフトの提供で知られる米SPSSのヌーナン社長、日本法人の真島英一社長に話を聞いた。

» 2008年06月19日 18時54分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 データマイニングソフトの提供で知られる米SPSSの日本法人、エス・ピー・エス・エスは6月17日、都内でユーザーカンファレンスを開催した。来日した同社ジャック・ヌーナン社長兼CEOと、日本法人の真島英一社長に話を聞く。

 「膨大なデータから発掘した知恵を現場に組み込むのが現在のSPSSの取り組みだ」と真島氏は話す。

外資系ベンダーの日本法人を経験して社長に就任した真島氏

 例えば、携帯電話会社のコールセンターの担当者が顧客と話している場合。SPSSのデータマイニングソフトを組み込んでいれば、エージェントが顧客と話をしている中で得た利用状況などのさまざまな情報から「この顧客は解約して別の携帯電話会社に乗り換えそうだ」といったことが事前に把握できる。そこで、間髪を入れずに、特別な料金プランを顧客に提案するなどの施策がリアルタイムに打てるようになる。事前に予測する仕組みの実現がユーザーにとって最大の利点だ。

 ヌーナンCEOは「コールセンターの担当者が見る画面に指示がポップアップするので教育する必要がない」と加える。「これまでは過去の出来事をレポートするだけだったが、これなら未来を予測しながら業務を遂行できるようになる。結果として企業のビジネスプロセス変革につながる」(同氏)。

 損害保険会社のコールセンターで、保険料の不正請求が見つかる事例もあるという。データマイニングでは、過去の自動車事故をすべてデータとして取り込み、複数の次元で分析するため、特異性や予測分析などが可能になる。

 「自動車事故が起きた」としてコールセンターに連絡してきた顧客がいた場合、担当者が顧客との話を通じて得る情報を1つ1つシステムに入力していくと、その情報の妥当性をSPSSのソフトウェアがリアルタイムに分析する。そうした仕組みを構築している企業があるという。「事故遭遇者が4人もいるのに警察を呼んでいない」などの報告は、過去のデータから見て不正が絡んでいる場合があるなど、データ分析の成果が現場で生かされている。

SOAの普及で広がる市場

 データマイニングで最も有名な事例の1つは、米Wal-martのオムツとビールの法則だ。Wal-martが顧客の購買履歴データを調べた結果、金曜日にオムツとビールを同時に購入する男性客が多いことが分かったというもの。古典のようなイメージもあるが「データマイニングの基本的なエンジンはこの40年変わっていない」(ヌーナン氏)という。

「レポートだけでなく意思決定を自動化するのが現在のデータマイニング」と話すヌーナンCEO

 「変わったのはデータマイニングの周辺の技術動向だ」(同氏)。SOA(サービス指向アーキテクチャ)が利用されるようになったことで、企業が既存のシステムに追加する形で、SPSSの製品を導入するようになった。SAP、Oracleなど大手ERPおよびビジネスインテリジェンス(BI)ベンダーの製品を利用している企業に、SPSSのデータマイニング機能を提供し、システムに組み込んでもらうといったニーズが生まれている。

 日本法人の真島社長は2008年の5月に就任したばかり。伊藤忠テクノサイエンス、SAPジャパン、i2テクノロジーズを経て、アジャイル・ソフトウェアでは社長兼米Agile Softwareの副社長を務めた。

 生産管理ソフトウェアを担当した経験が長いが「ビジネスサイドのソリューションを提供する会社なので、内容は違っても手法は共通している」と自信を見せる。特に、日本でのセールスモデルの構築に着手する考えだ。パートナーシップのやり方、直販、注力する業種などを分析した上で「顧客に的確なメッセージを伝えたい」と話している。

 SPSSの日本法人は世界シェアで10%以上を占めている。病院などで設備やサービスへの顧客の満足度を分析できる共分散構造分析ソフトウェア、AMOSの浸透が非常に早かったことなどから、SPSS全体での日本法人への注目度は高い。

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