IT予算をどう決めるか――調査結果から考えるGartnerColumn(2/3 ページ)

» 2008年07月04日 09時31分 公開
[小西一有(ガートナー ジャパン),ITmedia]
表2

 この表は、2007年末に実施した「ガートナー EXP CIO サーベイ 2008」の結果を分析したものです。表は、ビジネス視点からの優先事項への回答を分析した結果に基づいています。表左の項目は「CIOが企業からどのようなことを期待されているか」という問いに対する回答を4項目に集計し、さらに個々のCIOがどのようなITを目指すのかをセグメントして、CIOのIT予算の前年対比を表にしたものです。

  • 独自のIT(20%)

 独自のITの創造を目指している企業。こうした企業のCIOは、チャネルの拡大、顧客の拡大、新商品・新サービスの開発などを必要とする事業部門の期待に直面しています。

  • 一般的なIT(14%)

 一般的なITの管理を求めている企業。コストの抑制、ビジネスプロセスの改善、ITサービス品質の向上といった課題に集中している期待に応えることが、こうした企業のCIOに求められています。

  • 両方(42%)

 独自のITと一般的なITの両方をバランス良く期待する企業。

  • 公共機関(24%)

 公共分野の組織。公共分野特有の一連の業務上の優先事項に対応する必要があります。

 要するに、独自のITを創造しようと目指している企業では、IT予算の増加比率が高く、企業変革のためのITの能力に投資する傾向が強くなっているということです。IT予算が増加する要因は、明確にご理解いただけたと思います。

 問題を元に戻すと「IT予算の妥当性を経営トップに説明できない」のはなぜでしょうか。それはITの価値を、企業業績(ビジネスパフォーマンス)に置き換えて説明していないためです。

 経営トップの関心事は、意思決定した投資がその後のビジネスパフォーマンスにどのような影響を与えたかに尽きます。では、多くのIT投資に関して、本来的なビジネスパフォーマンスとして説明できているCIOはどれほど存在するでしょうか。

 こういうCIOに出会ったことがあります。「当社の(経営)トップは、ITに関して非常に理解がある。わたしはIT費用について、売上と利益のトレンドから、IT費用比率がある一定の割合で推移させていることを説明した上で、トップからは費用増を認めてもらっている」と説明してくれたのです。

 簡単に説明するために、2、3行で書いてしまいましたが大変論理的に説明してくれました。間違いではないでしょうし、実際にその説明でトップが納得し、IT予算が承認され企業運営が滞っていないのですから、文句をつける気もありません。しかし、経営トップの側に立って考えてみると、本当に説明して欲しかったことだったのでしょうか。つまり、本当にITに関して理解したのでしょうか。

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