ソフトウェアライセンスを把握――しかも社員に嫌われず良い管理者 悪い管理者 普通の管理者(1/5 ページ)

体系的な管理の難しいソフトウェアライセンス。違法コピーを防ぐには情報システム部門が重要な役割を担う。あなたは「悪意はなかった。知識不足でつい……」という事態を防げるか?

» 2008年08月08日 08時00分 公開
[木村尚義,ITmedia]

ソフトウェアはいとも簡単に「コピー」できる

 いつもと少し趣向を変え、ソフトウェアライセンスについて、過去にあった体験を書かせてもらおう。1980年ごろ筆者は、パソコンショップで販売員をしていた。当時はまだPC-9801とMS-DOSが全盛の時代だ。そんな時、筆者の勤めるパソコンショップが新たに地方展開することとなった。そのパソコンショップは、本部で一括して仕入れを行い、複数の直営店に送る方法をとっていた。直営店が10店舗あると仮定して、パソコン本体を各地で10台買うよりも、本部で一気に100台買ったほうがずっと仕入れ値が安いのだ。そのような理由で、地元のショップなどライバル視していなかった。

 しかし、これが甘かった。筆者の店舗が軌道に乗ってしばらくすると、地元のライバル店が特殊なサービスを始めたのだ。パソコンセットを買ってくれた人には、ハードディスクがいっぱいになるほど、ソフトウェアをインストールするサービスを無償で行ったのだという。

 ソフトウェアインストール代行作業のサービスではなくて、ソフトウェアそのものをサービスでバンドルするのだ。ゲームから表計算ソフト、ワープロソフトまで、人気のソフトウェアが何でも入っているという。当時は、表計算ソフトが20万円近くしていたころだ。少なめに見積もっても、ざっと50万円を超えるソフトウェアが入っている勘定となる。

 これには、頭を抱えてしまった。どう考えてもライバル店のサービスは、「違法コピー」である。そして、ライバル店のサービスに合わせてソフトのインストールを要求してくるお客様に、いくら違法性を説明しても分かっていただけなかった。あわよくばタダでソフトウェアが使えたらいいと考える人は、意外と多いことを実感した。

会社で、こんな不正使用が行われていないか?

 さて、会社における違法コピー防止をどう考えれるべきか。会社で使っている違法コピーのソフトウェアはバレないと考えている経営者、管理職は、まだまだ存在する。「うちの社員ならバラさない」という意識だ。

 ところが、ACCS(コンピュータソフトウェア著作権協会)への通報者のほとんどが内部告発だという。ソフトウェアの違法コピーに対する意識の高まりとともに、違法コピーの実態を積極的に通報しやすくなったのだ。会社で起こりうる違法コピー(不正使用)の例を挙げると次のような形態がある。

  1. オリジナルを1本だけ購入して、「業務で必要だからインストールするように」と回覧される。従業員は、これは違法コピーだからできませんと言いにくい。回覧されずにシステム管理者がインストールして回った場合は、従業員は違法かどうか区別が付かない
  2. サーバにオリジナルのソフトウェアをインストールして、ネットワーク経由で複数のクライアントが実行する。オリジナルをインストールしているのは1台だから、という論法だが、基本的には不正使用である。デスクトップにショートカットアイコンだけあって、ソフトウェアを使うときには、これをクリックしてと指示される。コンピュータに詳しくなければ違法かどうか分からない。
  3. 会社のオリジナルディスクをコピーして、社員の私物のPCにインストールしてしまう。逆に、社員の私物を会社で使い回してしまう。会社の仕事を自宅でもやるのだから、会社のためだと、会社業務の名の下に正当化しようとしても、一部を除いて違法である。
  4. ソフトウェアがインストールされているPCを破棄するので、新しいPCに移植する。ほとんどのプリインストールソフトウェアはそのPCでの使用のみ認められているので、別のマシンにはインストールができない。しかし正規版を買うからと言いつつ使い続けているケースが多い。どのような言い訳をしても、使い始めた時点で違法である。

 ソフトウェアライセンスによっては、1つのライセンスを複数のPCで使用することが特別に認められているケースもある。

 例えば、マイクロソフトのOfficeを例に挙げてみよう。基本的にパッケージ版はデスクトップ1台とデスクトップの所有者が持つノートPC1台にインストールができる。会社で購入する場合はボリュームライセンスのソフトウェアアシュアランス契約がある。この契約により、従業員が自宅で使用できる。このように、違法コピーは許さないが、ユーザーの利便性を高める努力をソフトウェアメーカーも行っている。

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