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» 2008年08月29日 16時08分 UPDATE

「1粒で3つおいしい」:「札幌の真面目な土地柄」を生かした弥生のカスタマーセンター

中小企業向け業務ソフト大手の弥生は、ユーザーサポート拠点であるカスタマーセンターを、大阪に加え、2007年7月に札幌にも開設した。同社におけるコールセンター運営の戦略やオペレーターの満足度について聞いた。

[怒賀新也,ITmedia]

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 中小企業向け業務ソフト大手の弥生は、ユーザーサポート拠点であるカスタマーセンターを、大阪に加え、2007年7月に札幌にも開設した。今年10月には増床も予定している。コストではなく利益を生み出す拠点にするのが狙いだ。札幌のカスタマーセンターで、コールセンター運営の戦略やオペレーターの満足度について聞いた。

大阪のセンターが抱えた課題

 弥生は1997年10月、大阪市住之江区の南港地区にあるワールドトレードセンタービルにカスタマーセンターを開設した。受け取る電話数は年間82万件、顧客への提案などのために電話を掛ける件数は30万件に上る。坪単価は1.1万円、ほとんどの担当者を派遣や契約社員で運用するなど低コスト運営を実現する。一方で、顧客への対応率は93%、アンケートによる顧客満足度も90%と高い品質を維持している。

yayoi1.jpg 札幌にあるカスタマーセンターの様子。PCは1人2台使用、顧客情報確認用と弥生製品の操作用だ。座席はオペレーターごとに固定している。通信インフラにはIP電話を採用している

 だが、問題もあった。大阪の南港地区は立地条件が良くないため、派遣社員の採用難に直面したという。10社の派遣会社と契約しても人員確保が難しい状況になり、特に12月から3月に掛けての繁忙期は深刻だった。年間100人以上の採用を毎年実施しているのが実態だった。製品ラインアップも年々増加し、オペレーターに求められるスキルも多様化したことから、ワールドトレードセンタービル以外の新たなカスタマーセンターの設置が必要になった。

 候補地を選ぶ上での基準は4つ。テクニカルサポート業務ができるだけの人材の質、人材の数を安定確保できること、人件費、その他賃料および助成制度などだ。札幌カスタマーセンターのセンター長、國光玄二氏は「福岡、仙台、沖縄などと比較した」といい、「札幌の人材の質は目を見張るものがあった」と話す。土地柄通り「真面目な人が多い」のだという。

 人材の数、人件費、賃料といった観点で、いずれも札幌が比較した他の地域を上回る結果となった。これが札幌に新センターを開設する決め手になったとしている。

自社採用し、離職を抑える

 國光氏は、オペレーターが弥生のカスタマーセンターで働く際の優位性について「企業向けのセンターであるため勤務は平日のみ。夜間の業務はないこと」と話す。

yayoi2.jpg 國光玄二氏

 現在の従業員数は45名。操作質問を受け持つテクニカルサポートと一般相談を担当するインフォメーションの2部門に分かれている。基本的に自社採用の契約社員として募集し、不足した場合に派遣を活用する。地域の支援を最大限に活用した。札幌市の就職セミナー、合同企業説明会、ジョブカフェなどで説明会を実施した。

 1年目の採用は、契約社員が50人、派遣社員が2人の計52人。200人以上の応募者の中から105人と面接した。他コールセンターの経験者が70%、簿記および経理経験者が60%に上るなど、優秀な人材を順調に確保した。応募者の動機として「土日祝日休み、立地、自社ソフトのサポートという安定感、(会計などの知識を得ることによる)キャリアアップ、新センターに創立メンバーとして参加できる点」などが挙がった。

 離職防止策も取り入れている。まずは採用段階で「PCテストを実施している」(國光氏)。ゲーム形式の研修も用意した。トレーナー制度や飲み会によるコミュニケーション活性化なども積極的に実施した。

 こうした取り組みで得たノウハウを2年目以降に生かすという。10月1日に増床することもあり、今後1年ほどで80人程度を新たに採用する予定だ。

オペレーターの生の声

 では、同社のコールセンターで働くオペレーターは実際にどんな考えを持っているのか。

 証券会社で4年、通信会社で15年間コールセンターのオペレーターを務めていたという関由香さんは弥生での仕事について「1粒で3度おいしい」と笑う。「ソフトウェアの特性上、会計や給与の知識を身につけられ、コールセンター業務を経験しながら、電話での営業テクニックも習得できる」という。「対面なら身振り手振りが使えるが、電話では言葉しか使えないことが苦労する点」だ。

yayoi3.jpg オペレーターを務める3人。左から関さん、恵庭出身という東宏行さん、「実家のある関西に戻るために弥生に入社したが結局札幌に来てしまった」という西部さん(右)

 カスタマーセンターを経ても活躍する場は多い。そのまま正社員登用されるのをはじめ、品質保証や営業など他部署、会計の知識を生かした経理などの専門職、センター内でトレーナーや分析などの担当に就くなどさまざまな例がある。

 札幌テクニカルサポートセクションのマネジャーを務める西部淳子さんは「スタッフの9割は自分で採用しているため、思い入れは強い」と話す。採用の面接で見るのは電話を想定したコミュニケーション力だ。顧客の話を理解できるか、ストレス耐性、感情のコントロールなども基準になる。駅から面接会場までの道順を説明させるなどの質問をすることにより、論理的に説明する能力などを見抜くこともある。

見える化システムを導入

 弥生は2008年2月に、全従業員向けに「顧客の声ポータル」を公開した。東京、大阪、札幌、福岡、名古屋などの各拠点から、顧客の「声」の原文に簡単に触れられる仕組みだ。問い合わせランキングを利用した問い合わせ件数の報告と次期製品への検討材料として利用することを想定している。

 顧客のクレームなどによるストレスで離職率が高いというカスタマーセンターのオペレーターだが、弥生はさまざまな可能性を考慮した上で、満足度の高いセンターの運営に成功している。

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