発展途上のEDIをいかに進化させるかIT Oasis(1/2 ページ)

日本経済を支えている中小企業の生産性向上は、非常に重要な課題だ。生産性向上にITを活用することは必須だが、実態を見るとそれほど簡単な話ではない。

» 2008年10月03日 16時15分 公開
[齋藤順一,ITmedia]

イット革命演説と国家戦略

 「企業が電子商取引に共通して利用できる国際的にも調和した汎用的な共通基盤(例えばEDIプラットフォーム)を構築し、2010年度までに、電子商取引を実施する企業のうち汎用的な共通基盤を利用する企業の割合を60%以上とする」

 「こんなこと書いて大丈夫か?」と思うが、この文章は2006年に閣議決定されたわが国の新たなIT国家戦略である『IT新改革戦略』に記載されている。日本には中小企業がたくさんあるのに60%以上もEDIを使えるようになるのだろうか。現状を見てみよう。

 その前にIT国家戦略のおさらいである。

 2000年に、ITを「イット」と発音したと報じられた当時の森首相が、第百五十回国会所信表明演説の中の“国民運動としてのIT革命”で「E-ジャパンの構想」として、IT基本法の提出やIT国家戦略の策定などの諸施策を示した。

 IT基本法に基づいてIT戦略本部が作られ、ここでIT国家戦略となるe-Japan戦略が作られた。『IT新改革戦略』はe-Japan戦略、e-Japan戦略?に続く第3世代のIT国家戦略である。

 このように国の政策や各省庁の施策は首相の所信表明、閣議決定、法律などに基づいて遂行される。各省庁は『IT新改革戦略』に基づいてIT政策を立案し遂行していくわけである。

 経済産業省・中小企業庁もこれに沿って中小企業向けのEDIシステムの開発を推進している。EDIは電子的データ交換のことであるので、具体的に何を指すかについてはいろいろな解釈が可能である。前述の『IT新改革戦略』では「異なる企業間で、受発注や決済などの取引に関する情報を広く合意された規約に基づきコンピュータ間で交換すること」と定義している。

EDIの使用料だけで儲けが吹っ飛ぶ

 一口に中小企業と言っても業種、業態、業容は千差万別である。

 サービス業や商業系では注文手段は電話かFAXというところも多いし、製造業、建設業でも紙伝票を使っていることが主流であろう。

 大企業の下請けとして、製造ラインの一部を担当したり、大企業に部品や部品ユニット提供している中小企業は得意先の指導によってEDIシステムを導入しているところが多い。

 EDIは得意先の各企業が、場合によっては工場や事業所単位で開発したもので互換性はない。

 一方、中小企業は一社依存によるリスクを避けるため、特定企業からの受注比率を下げようとする傾向にある。このため得意先ごとに、異なるEDIを何セットも導入している。私が調べた範囲で一番多かったのは、得意先6社のEDIを使用している例で、それぞれに対応するためEDI受付用のPCを6台設置していた。得意先から提供されるEDIシステムは現在ではWeb EDIが主流であるが、開発費の負担を求められ有償支給のケースもある。ひんぱんに受注があれば使用料を払うこともやむを得ないが、年に数度しか受注がなくEDI使用料で儲けがトンでしまうと嘆いている経営者もいた。

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