電話会議の3割は携帯電話――SaaSとスマートフォンのコラボレーション

ビジネスコミュニケーションを円滑にする「ユニファイドコミュニケーション(UC)」が提唱されて久しい。UCの新たな展開として、米国企業ではSaaSやUCとスマートフォンの連携に関心を寄せているという。

» 2008年10月20日 07時05分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 電話会議サービス利用者の3割が携帯電話からアクセスしている――。インターネット上で会議や文書配信などのビジネスプロセス支援サービスを行う米Premiere Global Services(PGS)のグループ副社長、ピーター・スチュワート氏は、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)やUC、スマートフォンに注目する米国企業が増えていると話す。同社ではWebサービスとスマートフォンとの連携を推進しているという。

スチュワート氏

 PGSは、Web会議や電子メール/FAXの文書配信といったUC関連の機能やオンラインマーケティングなどの機能をSaaS形式で提供し、約5万社の企業顧客が利用している。同社のSaaS基盤「PGiCOS」では、提携するSAPやMicrosoft、Cisco傘下のWebExなどのアプリケーションを組み合わせたサービスも提供している。

 スマートフォンに注目する理由として、同氏は「われわれのWeb会議サービスを月間810万人が利用しているが、このうち3割が携帯電話からの参加だ」と話す。また、米メディアの調査では、企業のCIOが注目する技術としてデータセンターやアプリケーションの仮想化が上位を占めたが、それらに続いてUCやモバイル、SaaSがほぼ同率で並んだという。

UCをスマートフォンアプリで

 UCの機能を見ると、リアルタイムに連絡したい相手の状況(プレゼンス)を確認でき、状況に応じて電話や電子メール、インスタントメッセンジャー(IM)、留守番メッセージなどの手段を選び、相手とコミュニケーションを取るというものだ。

 しかし、スチュワート氏は「実際にはデスクトップ利用を前提にしたものや、IMの機能にフォーカスしたものなど、サービスによって内容に差がある。このため、ユーザーに“UCとは具体的に何か分からない”という混乱を招いている」と話す。

 同氏は、UCの定義について「手段を選ばず、簡単にサービスを利用できること」だといい、同社の会議サービス「Conferencing 2.0」では、Webブラウザやグループウェア、電話機、他社の会議製品などからSeasプラットフォームにアクセスできるようにした。さらに同サービスをモバイル環境で利用するために、BlackBerryおよびWindows Mobile、Palmの各プラットフォーム向けアプリケーションを提供し、近くiPhone向けに提供する予定だ。

 モバイルアプリケーションでは、さらに文書配信サービスの使い勝手を高めているという。例えば、ユーザーが端末で受信したFAXデータを同社のサービス経由で指定したFAX番号に送信すると、最寄りのFAX機からメッセージをプリントアウトできるものがある。

Webサービスを経由してモバイル環境で紙文書も取り出せる。スマートフォンとWebサービスで利便性を確保する

 「モバイルならFAXのメッセージをどこでも受け取れ、必要ならば近くのコンビニで印刷して持ち歩ける。電子メールアカウントだけで利用できる。こうした使い勝手はWebサービスならではだ」(同氏)

 こうしたサービス連携は、SaaSプラットフォームやマルチベンダー対応の環境を用意することで、実現したという。

国内はWebサービス強化から

 スマートフォンでこうしたUCアプリケーションを利用できるのは、OSプラットフォームが汎用的であるという背景がある。一方、国内の一般的な携帯電話アプリケーションは通信事業者が定めた基準を満たす必要があるなど制約が存在する。モバイルアプリケーションの健全な利用環境をある程度保てる半面、自由度の高いアプリケーションの流通環境を実現するのが難しい。

 国内市場に対して、スチュワート氏は「ユーザーが求めるモバイルの利用スタイルに合わせて、通信事業者と連携するか、端末メーカーと連携するか、注意深く見たい」という。同氏はまた、以前在席した米携帯電話事業者のSprint Nextelでアプリケーションのオープン化に携わった経験を例に挙げ、「すぐに80社以上から200種類以上のアプリケーションが提供されたこともあり、日本でもビジネスを含めたオープンアプリケーションの普及に期待したい」と話す。

 国内向けには、まずSeas型サービスの拡充を図り、ユーザーがサービスを利用しやすい環境の整備を進める。2009年初頭にWeb上のユーザーポータルのサイトで音声やFAX、電子メール、携帯電話のショートメッセージを相互に配信できる機能を導入するほか、オンラインマーケティングサービスの日本語化、ビデオ会議サービスの導入などを計画している。

FAX配信サービスでは複合機とデスクトップの連携だけでなく、モバイルやキオスク端末との連携も可能にするという

 「われわれはサービスだけを日本語するのではなく、サービス運営やユーザーサポートも含めて日本に合わせた体制を広げる。携帯電話ユーザーの多い日本市場でもモバイルのニーズは高いと考えており、UCを企業に定着させるよう取り組みたい」(同氏)

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