ファイル共有ソフトの利用で犯罪者になる可能性もネットの逆流(4)(1/2 ページ)

なぜWinnyなどのファイル共有ソフトから情報が流出してしまうのか。安易に利用すると逮捕されかねない危険なツールの仕組みを紹介する。

» 2008年11月30日 09時02分 公開
[森川拓男,ITmedia]

ネットの逆流過去記事はこちらです。


 これまで3回にわたって、インターネットからの情報流出について検証してきた。そこで今回は、新たな事例からと考えていたが、第3回で取り上げた、Winny(ウィニー)などファイル共有ソフトについて説明不足ではないかという指摘もあったので、もう少し掘り下げてみたい。

ファイル共有ソフトが用いるP2Pとは?

 Winnyは、P2P技術を利用したファイル共有ソフトの一種である。インターネットを通じて、ファイルを多数のユーザー間で共有することからそう呼ばれているが「ファイル交換ソフト」とも呼ばれている。同じようなファイル共有ソフトには「Gnutella」「BitTorrent」「WinMX」「Cabos」「Share」「ansem」など多数存在する。

 P2P(Peer to Peer)とは、サーバを介さずに、クライアント(ユーザー)同士が直接データのやり取りを行うネットワーク形態のことだ。

 インターネット上のサービスは、サーバを介してデータがやり取りされるのが普通だ。例えばWebページを閲覧する場合、URLで指定されたサーバに接続してデータを読み取り、ブラウザに表示している。また、メールの場合も同じだ。メーラーが指定されたメールサーバへ接続して、クライアントのメーラーにメールの送受信が行われる。

 これと異なり、P2Pの場合は、クライアント同士がネットワークとして直接つながって、データのやり取りを行う仕組みとなっているのだ。つまり、P2Pにおいて、ネットワーク上にあるPCが、クライアントであると同時にサーバの役割も果たしているといえる。これらがWinnyなどのソフトを通じてつながることによって、巨大なネットワークが構築されるわけだ。

 といってもすべてのP2Pがサーバを介さないわけではない。クライアントだけで構成されるP2Pは「ピュアP2P」と呼ばれ、一部でサーバを用いるものを「ハイブリッドP2P」と呼ぶ。

 そして、匿名でデータのやり取りを行うWinnyなどファイル共有ソフトでは、ピュアP2Pが採用されていることが多い。ハイブリッドP2Pを利用しているものとしては、インスタントメッセージソフト、インターネット電話ソフト、グループウェアなどがあり、サーバ側でユーザー情報などを管理しているのだ。

一度流出してしまった情報は完全に削除できない?

 P2Pを用いることの最大の利点は、サーバ障害などによるサービスの停止がないこと。仮に、P2Pで接続されたクライアントPCに障害が起きたとしても、データが分散して共有されるため、利用しているユーザー数が多ければ多いだけ、データの転送などの支障は少なくなるのだ。

 しかし、それは同時に問題も生じさせる。ネットワークでつながったユーザー間でバケツリレーのようにデータが送信されているため、そこで流通するデータの著作権保護、課金などといったことが難しくなるといった点だ。

 事実、Winnyの作者が逮捕されたのは、著作権法違反容疑である。なお、この裁判は、京都地裁では有罪判決が下りたものの、現在、大阪高裁で係争中となっている。初公判は、2009年1月19日に開かれる予定。さらに有罪となった地裁の判断でも、Winnyの技術そのもの(ファイル共有)に関しては、価値中立的であることも認めているのだ。

 Winnyでさらに問題となったのは、キャッシュ機能だ。Winnyなどのファイル共有ソフトでは、つながっているPC同士がサーバも兼ねるので、自分が知らないうちにPCの中にキャッシュファイルが保存されていくのだ。こうして情報が拡散していく。もし、この情報が、流出してしまった機密情報だったり、公開されては困る個人的なものだった場合どうなるか。キャッシュの中は、利用者がダウンロードやアップロードするのと関係なく蓄積されていくため、違法なファイルなどが含まれていても気付かないことも多い。

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