「もしもの時どうなさるのですか」――分割発注への疑問に答える闘うマネジャー(2/2 ページ)

» 2009年01月27日 12時25分 公開
[島村秀世,ITmedia]
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仕事を上手に分け合い大きな仕事をする

 話を元に戻そう。システムの分割をどのように行うかだが、答えは簡単だ。人が仕事をするのと同じように分割すればよい。1つの仕事を終えたらDBに記録し、次のシステムに「DBに情報を書いておいたからよろしく」と通信で伝える。連絡をもらったシステムは、DBを見て内容確認し、処理を行い、結果をDBに記録した上で、次のシステムに「私の仕事は終わったから、次よろしく」と伝える。

 常に通信で伝える必要もない。通信に頼りすぎると、通信障害があったら処理されないものが出てしまうし、リトライも考えなくてはならないので面倒だ。そのような時は、前述の(B)や(C)の方式を使えば良い。朝の6時になったら、DBを見て申請書があったら論理チェックを行い結果をDBに記録し、7時になったらその結果を見て別のシステムが動くような感じだ。

 戦略立案などの非定型的な業務ならいざ知らず、日常業務であれば、1人の超精鋭より2人の一般的職員の方が多くの仕事ができたりする。1人ひとりの能力は高くなくとも、皆で仕事を上手に分け合えば大きな仕事ができたりする。システムにおける分割も同様だ。個々のシステムは単純なものなので、簡単かつ安く作れるが、全てが集まると便利ですごいシステムとなる。

 注意していただきたいことがある。大手ベンダーは、分割を行うと仕事が減るだけでなく、他社の参入を許すことにもなるので、分割発注が嫌いだ。おまけに「もしもの時どうなさるのですか」と不安を駆り立てることさえある。だが、焦ることはない。個々のシステムの内容が単純な分割発注では、「もしも」の時、結果がDBに記録されているため、どこで障害が発生したかを突き止めるのは容易だ。後は障害の発生した部分のログを見て、SEに連絡すればいい。

 人には2つのタイプがある。不安なことがあった場合、自らが動くことで不安を少しでも減らして安心を得たいと思う人と、不安なものは全部他人に任せ不安なことはなかったことにしたいと思う人だ。もし自身が後者に近いと思うのなら、分割発注には向かない。やめておいた方が良い。「もしもの時どうなさるのですか」との声に耐えられるとは思えない。

 ただ、筆者は信じています。日本の企業なら、不安を駆り立てることなんて決してしない。まして、脅すなんてあり得ないと。自社のSEの技術力に誇りを持ち、正々堂々と仕事をすると信じています。

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プロフィール

しまむら・ひでよ 1963年3月生まれ。長崎県総務部理事(情報政策担当)。大手建設会社、民間シンクタンクSE職を経て2001年より現職。県CIOとして「県庁IT調達コストの低減」「地元SI企業の活性化」「県職員のITスキル向上」を知事から命じられ、日々奮闘中。オープンソースを活用した電子決裁システムなどを開発。これを無償公開し、他県からの引き合いも増えている。「やって見せて、納得させる」をマネジメントの基本と考える。


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