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» 2009年02月03日 08時00分 UPDATE

伴大作の木漏れ日:日本の技術力が生きる「グリーンニューディール」 (1/2)

バラク・オバマ氏が米国第44代大統領に就任した。米国で長年虐げられてきたカラード出身者では最初の大統領だ。彼は就任演説で、幾つかの政策を明らかにしたが、その中で僕が注目しているのは「グリーンニューディール政策」だ。

[伴大作(ICTジャーナリスト),ITmedia]

 バラク・オバマ氏が米国第44代大統領に就任した。米国で長年虐げられてきたカラード出身者では最初の大統領だ。彼は就任演説で、幾つかの政策を明らかにしたが、その中で僕が注目しているのは「グリーンニューディール政策」だ。

 折りしも、富士通は1月23日環境経営セミナーを開催したが、しばらくは「クリーン」あるいは「グリーン」がビジネスのキーワードになりそうだ。

 富士通の発表会でもそうだったが、「環境」という言葉は非常に幅広い意味合いを含んでいる。1)炭酸ガスあるいはそれに換算したCO2の排出を抑えようという話、2)自然環境の破壊を食い止めようという話、3)事業所、各家庭でエネルギー消費を抑えようという話、4)化石エネルギーに関する代替エネルギーの開発、5)環境に優しい新エネルギーの開発、6)環境汚染を引き起こす有害物質の排出を抑える、7)塵として出されている資源の再資源化などさまざまな要素が複雑に入り混じっている。これに加え、政府が定めたエネルギー消費の削減割り当てなども重なってくる。

 企業で最も重視されているのは低炭素社会だそうだ。これは、前記した企業の炭酸ガス発生を極力抑える京都議定書に基づく規制に従って行われている。具体的には、電気代とかガス代、ガソリン、重油の請求書を合計して、どれだけ下がったかという話だ。

 はたしてそれだけでよいのか――富士通の常務理事で環境本部本部長を務める高橋淳久氏に尋ねたところ「それだけではいけない」と認識しているという。野副州旦社長は「金融危機で生産が落ち込んでおり、事業所の操業度も明らかに下がっているが、それでエネルギー節約が実現したという説明では納得しない」と話しているそうだ。

 確かに、同社の展示会を見る限り、33種のソリューションとは掲げているが、富士通本社を含め、関連会社が特定のクライアントからある目的で開発されたモノが並んでいるだけで、体系づけられ、整理されているという印象は全くない。ただし、環境本部の高橋常務理事を責任者に据え、今後3年間で累計330億円の売上を目指すという具体的な目標を掲げたことは評価できる。

グリーンニューディールに注目

 一方、米国に目を転じると、ブッシュ元大統領が就任早々京都議定書からの離脱を表明し、壮大なエネルギーの無駄使いである戦争にまい進したが、オバマ大統領はCO2削減に本格的に取り組むと表明した。というよりも、それにより起こる新産業で新たな雇用を創出すると表明したといった方が確かかもしれない。オバマ氏が提唱する「グリーンニューディール」とは、再生可能なエネルギー分野に今後10年で1500億ドルの投資、500万人の新たな雇用創出で景気回復をはかるというものだ。

 具体的には、太陽光発電、風力発電の生産量を3年間で倍増、2015年までにプラグイン・ハイブリッド車100万台の普及を図るほか、200万世帯の住宅に省エネ設備を導入、送電網の更新などの公共事業にも重点投資する。2025年までに同国のエネルギー供給量全体に占める再生エネルギーの比率を25%にするという野心的な目標も掲げた。

グリーンIT経営

 前記した話には幾つかの話が入り混じっていて、余計に話がややこしくなっている。富士通の進めようとしているのはあくまでも環境ビジネスで、それにICTを用いることにより、より効率を高めようという話がコアにある。併せて、企業トップの環境への意識改革を図り、富士通のビジネスチャンスをさらに増やそうという思惑がありそうだ。

 残念なことに、富士通および富士通研究所がこのテーマに関し、十分に消化しきれていないようだ。環境とは前記したように非常に裾野が広い話だ。だからこそITの活用は必須なのだが、それへつなぐためのシナリオがしっかりと出来ていない。

 さらに言えば、現場を知らない机上の空論になっている。それなら、身近な環境コンサルタントの方がはるかに知識や経験が豊富だ。その人たちを巻き込んで大きな流れを作らない限り、このビジネスの成功はおぼつかない。

環境と経営

 富士通が強調したいのは中国製餃子やメラミン混入騒ぎで起きたような企業の存続を揺るがしかねないリスクマネジメントである。そのためには、ICTの利活用が不可欠という話に持っていこうとしているのは分かるのだが、会場の展示を見る限り、それに有効な解決法の1つと考えられるRFIDを利用したシステムの展示などはほとんどなかった。消費電力の少ないPCやサーバ、ディスク装置といった製品が大きなスペースを占めていた。

 ちなみに、僕は、環境に関して問題なのは、特にホワイトカラーの仕事の進め方だと思っている。多くの知的労働者は一時間以上かけて職場に通っているが、果たして、実際に集まる必要があるのかを誰も分析していない。東京へ一極集中したお陰で道路は慢性的に渋滞し、自動車の平均時速は30kmにも満たない。これで起きているエネルギーの無駄は壮大な規模だ。

 これは1つの企業で解決できるようは問題ではないもの、日本のように、ネットワークが発達した社会なら勤務形態を見直すことで改善の可能性が見えてくる。実際、もう踏み切っている企業は数多い。富士通も、そのような企業のシステム構築を実施しているはずだが、そういった技術展示がないのは残念だ。もう少し、そのあたりを強調すれば方向性も明確になったという印象がある。

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