コラム
» 2009年02月08日 01時00分 UPDATE

日曜日の歴史探検:マインドシーカーから20年目の「ブレイン・マシン・インタフェース」

生体の神経系と、外部の情報機器の間で情報空間を共有するためのインタフェースである「ブレイン・マシン・インタフェース」(BMI)。いつまでも空想の世界だと思っていると、現実に驚くかもしれません。

[前島梓,ITmedia]

 「BMIとは何ですか?」――こう訪ねると、ほとんどの方はヒトの肥満度を表す指数、いわゆるボディマス指数(Body Mass IndexBMI)をイメージするでしょう。しかし、科学者・技術者たる者、ここでボディマス指数などと答えてしまってはメタボを気にしているようで少しかっこ悪いというもの。やはりここは当たり前のように「ブレイン・マシン・インタフェース(Brain-machine Interface)か。電脳通信技術には必須だよね」と答えたいものです。というわけで今回は、デジタルネイティブのBMI、「ブレイン・マシン・インタフェース」のお話です。

ブレイン・マシン・インタフェースとは?

azusa02.jpg コンシューマ向けの脳波マウス「Neural Impulse Actuator」。ちなみに、活動電位の変化を正しく認識させたいなら、余計な意識を集中しない方がよいそうです

 わたしたち人間の生体の神経系と、外部の情報機器の間で情報空間を共有するためのインタフェースは、主に医療分野で早くからその必要性が訴えられてきました。BMIには大きく2つの方向性というかステップがあり、脳内の電気信号を外部の情報機器に送って制御するものと、その逆に、外部の情報機器から電気信号を送ることで生体を操作しようとするものです。後者は応用として、生体で機能不全となっている部位を治療するための技術も考えられており、パーキンソン病などの治療法の1つとして脳のある部位の働きを刺激して補う用途などが現実に存在します。これらは、運動出力型BMI、感覚入力型BMI、直接操作型BMIなどと区別されることもあります。

 これらの技術がなぜ医療分野で渇望されたかについては改めて説明するまでもありません。人間が抱えている何らかの身体的障害を補うための技術として有望だからです。例えば、事故などで重い障害を抱えてしまい、手足が動かせなくなった場合にパソコンなどを利用するにはどうすればよいでしょう。脳内の神経情報から必要なものを区別し、それを電気信号に変換して直接操作できれば、目的は達せられます。また、感覚神経に外部から電気信号を伝えることで、視覚、触覚などの感覚を人工的に生成できるということにもなります。高齢化で身体機能に衰えが出た場合などでも、いわゆるサイボーグ化、攻殻機動隊でいえば義体化を行うことで補えるわけで、わたしたちの人生というもの自体を大きく変え得るものとなる技術です。

 脳内に構築されているニューロン(神経細胞)ネットワークは非常に複雑ですが、活動電位の変化を測定すれば、どんな行動を取るとどういった電位変化が発生するかという研究は古くから続けられており、それなりに解明が進んでいます。BMIの研究はジョン・チャピン氏などがパイオニアとして有名ですが、日本でも、京都大学大学院の櫻井芳雄教授や、慶應義塾大学の牛場潤一専任講師などの研究がよく知られています。牛場氏の研究成果として、脳内でイメージするだけで「SecondLife」内のアバターを散歩させた研究が発表されたのは2007年のことです。

脳内でイメージしただけでSecondLife内のアバターを操作する実証映像

 上記映像でも分かるように、活動電位の変化をとらえるには、その精度にもよりますが、やはりまだまだ特殊な装置が必要であることは否めません。脳に直接電極を指す侵襲式のBMIならより直接的でしょうが、脳に痛覚がないとはいえ、それは心理的な抵抗も少なくありません。

tnfig3.jpg マインドシーカー。いろいろな意味ですごいゲームだったようです。デバイスを用いないBMIだったといえるのかも……

 「先端医療の現場でそんな感じであれば、コンシューマレベルでBMIが普及するのはまだ先か」。そんな風に思われるかもしれませんが、活動電位の変化を測定し、それを外部の情報機器に送って制御するだけなら、そのための装置も比較的簡単なものになります。例えば昨年、OCZ Technologyという企業が開発した「Neural Impulse Actuator」という脳波制御デバイスを脳波マウスとして日本でも発売、即日売り切れという現象が起こりました。価格は2万円以上するデバイスにもかかわらず、これだけの人気が出たというあたりが面白いですね。

 Neural Impulse Actuatorはどちらかといえば色もの的な扱いでとらえられていますが、ゲーム業界の巨人が動きました。あのスクウェア・エニックスがNeuroSkyという米国のベンチャー企業と共同開発した脳波センサーを使ったゲームが昨年の「東京ゲームショウ2008」で展示されました。そう遠くない将来、脳波を使ったゲームが登場してくるでしょう。ファイナルファンタジーシリーズなどもBMIで操作する時代が来るのでしょうか。

 20年ほど前の1989年4月には、こちらもアミューズメント業界の巨人であるナムコが当時大流行していたファミリーコンピューター(ファミコンですね)のゲームとして「マインドシーカー」を発売しました。エスパーキヨタのガイドでエスパーになれた方を筆者は知りませんが、ときを超えて、スクウェア・エニックスが同じような(?)取り組みを推進しているのです。人類は歴史から何も学ばないという事例がまた1つ生まれるのか、それとも、現代の技術は人をエスパーのように振る舞わせてくれるのか。2009年から2010年はBMIが面白くなりそうです。

tnfig.jpg エスパーという言葉になぜかあこがれてしまうのは筆者だけではないはず。マインドシーカー(このゲームとBMIを比べるのも何ですが)で挫折した多くの人のあきらめきれない気持ちをBMIが具現化してくれるのでしょうか……(イラスト:架空の姉

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