円天詐欺で考える「電子マネー」の光陰ネットの逆流(11)(1/2 ページ)

独自の電子マネー「円天」を利用して、配当の見込みもないのに資金を集め、出資金を搾取したとしてL&Gの会長らが逮捕された。この事件は何だったのか。電子マネーの今後に何を語りかけるのか。

» 2009年02月15日 11時10分 公開
[森川拓男,ITmedia]

ネットの逆流過去記事はこちらです。


 2月5日、独自の電子マネー「円天」を売り物にした健康関連商品販売会社「L&G」をめぐる事件で、警視庁と宮城・福島両県警の特別捜査本部は、組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)容疑で、同社会長の波和二容疑者や、幹部ら計22人を逮捕した。2000年から破綻状態にあったという同社が、2004年頃から始めたという電子マネー「円天」とは何だったのか。

「円天」詐欺の手口

 円天は「L&G」独自の電子マネーで、全国で開催されるバザーや、Webサイト「円天市場」や加盟店で、健康関連商品や日用品、貴金属の買い物ができるというもの。

 これまで「L&G」では顧客に対して高配当をうたって協力金を集めていた。円天では、10万円以上を「保証金」として預けると毎年同額の円天が支給されるシステムを導入して、「使っても減らないお金」と宣伝していた。主婦や高齢者を中心にして人気を集めたというが、2007年2月には現金の配当が停止され、配当自体も円天に切り替えられた。そして解約にも応じなくなり破綻、同年10月には本社ビルなどを出資法違反容疑で家宅捜索していたのは記憶に新しい。

 今回、家宅捜索から1年以上経過してから逮捕に踏み切ったのは、出資金を配当に回すという自転車操業の末に資金繰りに行き詰まったとみて、組織的詐欺容疑に問えると判断したからだという。

 この円天のおかしなところは、宣伝される通りに「使ってもお金が減らない」と、利用者が思い込める仕組みだ。普通に考えれば分かることだが、保証金を預けて、それと同額の円天がもらえるまではいいが、「毎年同額の円天が支給される」というのはあり得ないだろう。早々に破綻するのは明らかだったはずだ。さらに、「ウォン天」という電子マネーも計画していたというから呆れてしまう。

 普通、電子マネーというのは、チャージした分だけの金額が使えるが、使えば減るものだ。戻ってくるはずがない。「うまい話にはウラがある」わけだ。

 この円天をめぐる詐欺は、今後、いろいろ解明されてくるだろう。注目していきたいと思う。

 電子マネーとはいっても円天は、お金を搾取するための道具にすぎなかったのかもしれない。巨額の詐欺行為が成立したという事実は、「電子マネー」が人の心につけ入るという陰の部分を持つことを明らかにした。

進化する電子マネー

 もちろん、こうしたネットの逆流としての電子マネー事件がある一方で、ビジネスとしての電子マネーは日々進化を遂げている。野村総合研究所では、電子マネー市場は2011年度には2兆8000億円まで広がると推計している。電子マネーには、主だったものでも「Edy」「QUICPay」「Suica」「PASMO」「ICOCA」「nanaco」「WAON」「iD」などがある。全国展開のものだけでなく、地域限定のものもある。

 2008年3月26日には、首都圏のタクシー約5800台に複数の電子マネーに対応した共用決済端末を導入すると発表されている。まずは、PASMOやICOCAも含むSuica専用端末の導入を行い、2008年秋以降で、順次、QUICPay、iDにも対応していくというものだ。

 この仕組みには、JR東日本とNTTドコモが設立した共通インフラ運営有限責任事業組合が管理・運用する「共通インフラ」が使われている。今回はSuicaからスタートしてQUICPay、 iDへ広げるとしているが、それ以外の電子マネーの追加も可能となっている。

 この共通インフラは、全国のイオンでも導入されるなど、これまで、それぞれの電子マネーが独自に拡張してきた端末の一本化を進めている。

 1月27日には、エーエム・ピーエム・ジャパンが、電子マネー専用のセルフレジの導入店舗を拡大すると発表した。EdyとPASMOの両方、もしくは一方で支払いができるセルフレジという。

 2月5日には、総合メーカーダイフクがICカードの社員証を使った決済システムを食堂に導入したと発表。これにより、これまでプリペイドカードを利用していた社外員の決済には、Edyを使用することができるようになったという。

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