クラウドコンピューティングの幻想から目覚めよ単純ではない企業ITの実情(3/4 ページ)

» 2009年03月13日 08時00分 公開
[エリック松永,ITmedia]

なぜ幻想が起きるのか

 クラウドコンピューティングの議論では、提供者向けの話とユーザー側向けの話が混同している。これはNGNの時と全く同じ構造といえる。NGNでは、ITベンダーにとっての最初の顧客はNGNを構築するNTTだった。しかし、NGNが構築されてもユーザー側に利益のあるような話には切り替わらず、NGNのアーキテクチャがどうなのか、標準化がどうなのかというユーザー不在の議論が繰り返された。

 クラウドコンピューティングでは、まずITベンダーが仮想化技術などを売りたい相手はクラウドコンピューティグを構築する企業である。この議論では技術的な話が重要になる。しかし、次にクラウド上でサービスを展開するサービスプロバイダーに対して同じレイヤーで話をするべきではなく、サービスを提供するアプリケーションとクラウドとのインタフェースや呼び込める機能などを中心にするべきだ。

 サービスプロバイダーにとって差別化要素がサービスそのものであるならば、開発などのIT領域からサービスプロバイダーを少しでも開放するような仕組みを提供するべきである。また、クラウドサービスを受けるユーザー側向けとなると、さらにIT色はなくなるはずだ。これは消費者向けでも企業向けでもレベルこそ違えど同じである。ユーザーをITから解放する事がクラウドコンピューティングの意義になるので、サービスの内容とクオリティーが議論になるはずだ。

 クラウドコンピューティングはさまざまな切り口で議論すべきであり、その切り口が混同しているのはおかしいということになる。

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