富士通とシスコシステムズが先週16日、ユニファイドコミュニケーション分野で戦略的提携を結んだと発表した。注目度が高まる新市場だが、はたしてブレークポイントは何か。
「国内のユニファイドコミュニケーション(UC)市場はまだ未成熟だが、ブロードバンドなど先進的なインフラが整っていることから潜在需要は大きい。コミュニケーション分野で強みを持つシスコとIT基盤で強みを持つ富士通が力を合わせることによって、この市場を本格的に立ち上げ、リードしていきたい」
富士通とシスコシステムズが先週16日に開いたUC分野での戦略的提携の発表会見で、富士通の川妻康男 経営執行役常務はこうぶち上げた。
提携の柱は、日本市場に向けたソリューションの開発、サービスの提供、プロモーションを共同で実施することだ。とくにソリューションの開発では、ロードマップを共有するなど両社の開発部門が連携する体制を整える。「今回の提携は単なるリセラー契約ではなく、メーカー同士の契約」(川妻常務)というのが“戦略的”とした所以だ。
具体的には、まず富士通がシスコ製システムのモバイル機器対応を支援。日本の携帯電話やPHSをシステムに組み込むための接続機器を開発、同日発売した。また富士通は、PBX(構内交換機)を利用している顧客に対してシスコ製システムへの移行を促すほか、業種別のUCシステム向け応用ソフトを順次投入する。
さらに詳細な提携内容については、すでに報道されているので関連記事を参照いただくとして、両社が今回の提携に至った背景について少し触れておこう。
富士通とシスコは1998年にグローバルSI契約を結び、2004年には通信事業者向けの高性能ルーターなどの分野に提携範囲を拡大。今回の提携はそれをUC分野まで広げた格好だ。それぞれ「世界のUC市場でシェアトップのシスコと組みたい」(川妻常務)と考えた富士通と、「日本ではこれまで提携関係を深めてきた富士通と組むのがベスト」(エザード・オーバービーク シスコシステムズ社長兼CEO)と判断したシスコの両社の思惑が一致した。
今回の提携を通じて「2012年度にUC分野で国内シェア40%の獲得を目指す」(川妻常務)という両社。新たな市場の開拓へ向けて、強力なタッグチームが動き出した格好だ。
両社の戦略的提携に対し、競合他社の反応はどうか。とくに富士通にとって国内市場で最もライバルとなりうるNECは、「UC分野では当社もさまざまなパートナー企業とケースバイケースで協業を行っている」(コーポレートコミュニケーション部)。その一環として、昨年1月には米IBMと両社製品の連携ソフトの商品化で協業するなど、着々と適用範囲を広げている。
ちなみに、あまり知られていないが、NECは国内で「ユニファイド・コミュニケーション」の登録商標を保持している。「使用権を主張しないのか」と聞いたところ、「市場の拡大が最優先。使用権を主張することは考えていない」(同)とのことだった。
富士通とシスコの戦略的提携で注目度が高まっているUC市場だが、はたしてブレークポイントは何か。筆者なりに考察してみたい。
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