コラム
» 2009年05月08日 17時25分 UPDATE

IT Oasis:会社は「ゆでガエル」のようには死なない (1/2)

外部環境の変化に気づかず「ゆでガエル」のように死んでしまったように見える企業は、実際は危険に気がついていても方向転換できなかった「タイタニック号」だったということが多い。

[齋藤順一,ITmedia]

ゆでガエルの話は寓話なのか

 経営者向け研修やセミナーなどに出かけると講師からいろいろ面白い話が聞ける。ためになる話も多いが、えっ、それホントなの? という話もある。口当たりがよく、すんなりと理解できる気がするのだが、ちょっと怪しい都市伝説風の話もある。中でも以下の話は有名だ。セミナーの講師はこんな風に話をする。

 「昔、ある先生が、生きたカエルを使った実験をしました。沸騰した熱湯の中にカエルを入れると、カエルは熱さにびっくりして熱湯の中から跳び出し、死なずに済みました。ところが、冷たい水の中に入れてから、ゆっくりとあたため温度を上げていくと、カエルはしだいに温度が上がっても逃げ出せず、最後には“ゆでガエル(boiled frog)”になって死んでしまったそうです。経営者の皆さまも、昨日の続きで今日の経営をしているとゆでガエルになってしまいますよ」

 この話はゆっくりとした外部環境変化を捉える事の難しさを示す例としてよく取り上げられる。

 そもそもこの話を作ったのはグレゴリー・ベイトソン(Gregory Bateson,1904〜1980)。英国生まれの思想家、生物学、人類学者である。その後、ミネソタ大学のアンドルー・ヴァン・デ・ヴェン(Andrew H. Van de Ven)や、ミシガン大学のノエル・ティシュ(Noel M. Tichy)が著作で引用したとされる。

 日本では桑田耕太郎・田尾雅夫の「組織論」(有斐閣アルマ)で紹介されている。この本は大学の経済学のゼミなどで使われることが多く、ここから広まっていったのだろう。

 ただし本当にこんな実験が行われたのかという事には疑問がある。熱湯に放り込まれたカエルは飛び出す以前に火傷をして死んでしまうだろう。高熱でタンパク質が変性してしまうので、跳ねることはできないのである。カエルが容器の中でじっとしていることも考えにくい。追試したという話も聞こえない。

 私の友人にこたつに入っていて朝まで眠りこけ、低温やけどで入院したのがいるが、カエルにこの手のヤツはいないだろう。「ゆでガエル」の話は寓話と考えるべきである。しかし経営の舵取りを学ぶ寓話として、この話は今でも有効なのだろうか。

外部環境に鈍感な経営者などいない

 「ゆでガエル」の話はインパクトがあって、記憶に残りやすい。実際にそういう状況があればたとえ話としては有効である。それでは、経営の現場で外部環境の暫時的な変化に気がつかない経営者がいるだろうか。

 これは考えにくい。大昔の作れば売れるプロダクトアウト的な環境ならいざ知らず、現在はマーケットインの時代である。外部環境の変化に敏感にならざるを得ない。

 実際に一度つぶれてしまった会社や大リストラを余儀なくされた会社もいくつか見ているが、外部環境の変化に気がつかなかったという例は聞かない。

 むしろ考えられるのは、経営状態のよい企業の経営者が製品や事業環境を過信し、外部環境を無視してイケイケドンドンで経営を回し、あげく足元をすくわれるケースである。まさに上手の手から水が漏れるという状況である。

 事業がうまくいっている時、あるいはうまくいっているように見えるときに、周囲の人がそれを諌めることは難しい。イエスマンが経営者の周りに集まってくる。経営者は自信を持っているので悪い情報は軽視しがちである。事業の拡大基調が続くと兵站線も伸びきってしまう。その結果、正しい情報が伝わらなくなったり、伝わるのに時間がかかったりして致命傷になるのである。

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