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» 2009年06月05日 15時56分 UPDATE

クラウドでよみがえるベクトル演算機構

遠隔にあるベクトル型スパコンを仮想化でつなぎ、ベクトルコンピューティングクラウドとする試みが国立情報学研究所、東北大学、大阪大学などによって進められている。新しい演算需要を生み出すことはできるだろうか。

[西尾泰三,ITmedia]

 遠隔にある2つのベクトル型スーパーコンピュータを仮想化によってベクトルコンピューティングクラウドとする試みが国立情報学研究所、東北大学、大阪大学などによって進められている。国策として進められた地球シミュレータシステムはそのひのき舞台から事実上降りており、ベクトル機自体の将来も不安視される中、新しい演算需要を生み出すことはできるだろうか。

超大規模ベクトル計算のニーズをどう満たすか

tnfig2.jpg 新型「地球シミュレータシステム」(写真提供:海洋研究開発機構)

 日本のベクトル型スパコンの代表格といえる「地球シミュレータシステム」は登場当時からスカラ型スパコンに比べて高い実行効率を示していたが、「SX−9/E」160ノードで稼働を開始した新型「地球シミュレータシステム」では、93.38%という現時点で世界一の実行効率を達成したことがNECから発表されている。なお、現在「TOP500 Supercomputer Sites」で首位を走るIBMのRoadrunnerの実行効率は約75.86%である。流体計算や構造物の力学計算、新物質探求や気象計算などに代表される大規模科学技術計算を高い実行効率で処理できるベクトル型スパコンだが、個々のシステムの計算能力を超えた超大規模ベクトル計算のニーズを満たせずにいた。

グリッドで仮想化

 今回の試みには、東北大学サイバーサイエンスセンター、大阪大学サイバーメディアセンター、国立情報学研究所、NECなどが参加。現在、東北大学ではNEC製SX-9を16ノード、大阪大学では10ノードを導入・運用している。国立情報学研究所が研究開発したサイエンス向けのグリッドミドルウェア「NAREGIミドルウェア」を活用し、広域に点在する研究開発拠点のベクトル型スパコンをグリッド環境において統一的に仮想化しようとするのが今回の実験の骨子である。実装として、スーパースケジューラ連携用ジョブ予約サービスのほかSX―9のローカルスケジューラ(NQS)と高い親和性を持つNAREGI用仮想SX計算資源管理ミドルウェア「GridVM for SX Vector Computer」などが開発されている。

tnfigvector.jpg NAREGIによるベクトルコンピューティングクラウド設計(出典:国立情報学研究所)

 今回の実証実験では、東北大学と大阪大学のSX-9各1ノードで構成されるプロトタイプシステムに、並列化された電磁界分布シミュレーション用のプログラムジョブを投入、実行。ジョブの最適な振り分け実行が、2つのスパコン間で可能であることを実証できたとしている。これにより最短時間や最低コスト、プログラムが最も効率的に動作する計算資源など、利用者の望む条件を自動的に判断してベクトルコンピューティングクラウドにジョブを投入し得ることが示された。

 国立情報学研究所は学術研究の基盤として、サイバー・サイエンス・インフラストラクチャ(CSI)の構築を進めており、今回の発表もその一環である。学術情報基盤としての「ベクトル計算クラウド」は成熟したグリッド技術によって、具現化を果たそうとしている。

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グリッド | 仮想化 | NEC(日本電気)


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