“心の風邪”では片付けられないうつ病をどう乗り越えるか自殺者を1人でも減らしたい(1/3 ページ)

仕事や家庭の悩みから心身のバランスを崩してうつ病になる人が後を絶たない。企業や個人がうつ病問題にどう向き合うべきかについて、メンタルヘルスケアを手掛けるセーフティネットの山崎敦社長に聞いた。

» 2009年06月27日 07時30分 公開
[國谷武史,ITmedia]
山崎氏

 仕事や家庭での悩みから心や体のバランスが崩れ、うつ病になってしまう人が後を絶たない。うつ病から自殺に至るケースも多いとも言われ、個人や企業にとってうつ病への取り組みは重要な課題だ。メンタルヘルスケアを手掛けるセーフティネットの山崎敦社長は、「“心の風邪”という表現もあるが、もっと真剣に向き合うべきもの」と話す。

 山崎氏は、1967〜1999年まで海上自衛隊に在席し、第6航空隊指令や下総教育群指令などを歴任したが、退官までの6年間に3人の部下を自殺で失った。「悩みを抱える人の受け皿があれば、自殺に至るケースを少しでも減らせるのではないかと考えている」と山崎氏は話し、人材会社パソナの支援を受けてセーフティネットを創業した。

 セーフティネットは、約400社の企業から委託を受けて、従業員やその家族からの悩み相談に応えている。1日当たり約100件の相談が電話やメール、面談で寄せられ、50人ほどの専門家が24時間体制で受け付けている。対応する専門家は、産業カウンセラーや看護士、弁護士、警察OBなど、さまざまなキャリアを持つベテランばかりだ。

なぜうつ病が増えるのか?

 うつ病は、雇用や経済的な不安、人間関係、家庭問題、身体の変化といった悩み事を日常的に抱え込むことで発症することが多いといわれる。うつ病になる人のタイプは、真面目で責任感が強いという特徴が指摘がなされるが、山崎氏はそれらに加えて、ストレスの発散や息抜きが苦手なタイプである場合が多いという。

 「スポーツをしたり、人と会話をしたりするのが苦手であり、悩み事を常に考えている状態が続いてしまう。本来は悩みとは別のことに目を向け、脳を休める機会を持つのが望ましい」と山崎氏。

 また、悩みの愚痴を言いたくても言えず、愚痴を聞いてくれる環境が失われていることも、うつ病が増加の背景の一つにあるのではないかともいう。「ストレスが増えたというよりも、ストレスを解消できる場面が少ない」(山崎氏)

 例えば、かつては仕事帰りに上司と部下が飲みに行くというのが職場における一つのコミュニケーションだった。「上司が部下の悩みや愚痴を聞くようで、実際には上司も愚痴をこぼす。お互いがストレスを解消できる機会だった」(山崎氏)

 また核家族化や集合住宅に暮らす人が増え、近隣住民と顔を合わせる機会も少なくなった。以前であれば、ちょっとした井戸端会議での雑談や愚痴がストレス発散の場になっていた。「こうした人間関係はわずらわしいと感じつつも、お互いにストレスを発散、吸収する仕組みとして機能していたと思う。個人的には残念に思う」(山崎氏)

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