「褒める」効用――ほめられサロン、JR脱線事故対応に学ぶビジネスマンの不死身力(1/2 ページ)

ミスを指摘してメンバーの心身を疲弊させるのではなく、いいところを見つけて積極的に褒めることが、チームを1つにまとめるための近道になる。

» 2009年07月11日 09時00分 公開
[竹内義晴,ITmedia]

 「認めてほしい」「褒めてほしい」――。わたしたちは日々の仕事の中で、自分の成果に対して上司や仲間から認めてほしいし、褒めてほしいと思っている。認めてもらえれば胸の奥が満たされるし、褒められればやる気も出てくる。「頑張っているね」の一言が欲しいだけなのに、現実に耳にするのは「なぜこのミスに気付かなかったの?」といった指摘や、「もっとやる気を出して仕事をしなさい」など、言われたらやる気をなくしてしまう言葉ばかりだ。

 もちろん、ミスの指摘は再発を防ぐ上で重要なことだが、1つにまとまったチームで仲間と楽しく仕事をしていく上では、ほんのわずかなねぎらいの会話が大切だ。こう考えるようになったのは、わたしが過度なプレッシャーの中で仕事をし、精神的・肉体的に追い詰められた経験があるからだ。

 わたしは各企業に常駐してシステム開発を進めたり、新規システムの立ち上げに参加したりした経験がある。厳しい納期や品質に対するプレッシャーは大変厳しく、心身ともに疲弊していた。

 そんな時、不具合を出してしまった。幸い、システムが稼働する前に発見できたが、当時のリーダーは「なぜ気付かなかったのか?」「ミスをしたのはスキルがないせいだ」とわたしをしかった。もちろん、不具合を出した責任はわたしにあるが、「スキルがない」という一言は、まるで心をナイフで刺されたような痛みだった。しかられることが中心の毎日を過ごす中、突然体が変調をきたし始めた。その時の十二指腸潰瘍のあとは、毎年の健康診断でいまだに引っかかるほどだ。

9割は「褒められたい人」

 しばらくして、わたしはチームを持つことになった。これまでの経験から、ただしかるだけのチーム作りではうまく行かないことは分かっていた。わたしが疲れていた時に欲しかったのは「頑張っているね」の一言だったことを思い出していた。

 ある日、チームの仲間に「あなたは褒められて伸びるタイプか、それともしかられて伸びるタイプか」と聞いてみた。20人中18人、なんと9割もの人が「褒められて伸びるタイプ」と答えた。多くの人が褒められたいと考えてながら仕事をしていることが浮き彫りになった。

 チームをまとめるには、褒めることを中心に考えたほうがいいのは自明だった。実際、わたしはしかることから褒めることを中心に接し方を変えてみたところ、チームの雰囲気はみるみるうちに明るくなっていった。

褒めてもらった気分になってみる

ほめられサロンの入力画面 ほめられサロンの入力画面

 「ほめられサロン」というWebサービスをご存知だろうか。このサイトはニックネーム、性別、年齢層、職業を入れて「褒められたいですか?」という問いに「はい」と答えると、入力した条件に応じてさまざまな角度から自分を褒めてくれるというものだ。

 実際に「竹内」「MAN」「30代」「プログラマー(現在はプログラマーではないが)」という設定を入力すると、「竹内。スキルあげたな」「竹内。ありがとな」といった言葉がサイトに表示される。文字を目にしているだけなのだが、これが実に気持ちいい。これを仲間から言われると思うとワクワクしてくるほどだ。

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