Web2.0時代の終焉クリエイティブ主導型へ(1/2 ページ)

戦略コンサルタントが悠長に分析し、不明確な指針をつきつけられて企業が頭を抱えながら理解するといった時間はもうない。

» 2009年09月27日 09時34分 公開
[エリック松永,ITmedia]

AdobeのOmniture買収の意味

 Adobe Systemsがウェブ解析のOmniture買収を発表した。Adobeは、PDFをはじめ、2005年に買収したFlash Videoを核に画像、映像コンテンツビジネスを拡大させ成功している企業だ。背景には、動画共有サービス「YouTube」、テレビや映画のインターネット配信市場、そしてGoogleのインターネット広告ビジネスが生み出した新たな巨大インターネット広告市場がある。Adobeは、コンテンツをインターネットに流す上でのリスクを解決する技術の提供で影響力を拡大してきた。

 AdobeはPDF、Flashというコンテンツそのものの標準フォーマットを定義し、さらにそれらのコンテンツ活用の場を構築するための技術を用意している。企業向けにはビジネス向けのドキュメントソリューションを開発する「Adobe LiveCycle Enterprise Suite」、コンシューマー向けには「Adobe AIR」「Adobe Flex」というWebアプリ開発ソフトウェアを提供しているのがその動きだ。

 今回のOmniture買収により、構築されたウェブサイトの評価が可能になる。サイト企画者のセンスとコンテンツやサービス力さえあれば、その他はすべてサポートしますという姿勢だ。この動きはマイクロソフトも同様で、Windows Serverや映像系の場合は「Windows Media Services 2008」を活用した開発環境として「Visual Studio」「Expression」やクライアント側には「Silverlight」「Windows Media Player」などをそろえ、さらにクラウドコンピューティング環境の「Azure」を提供し、コンテンツ製作者を技術面からフルラインアップの体制でサポートする考えだ。

Web2.0が何を変えたのか

 ここで重要なのは、AdobeやMicrosoftの戦略について細かく検証することではない。重要なのは、コンテンツ提供者側がひきつける、見せる、楽しませるためのツールはそろいつつあるということだ。日々進んでいくITの世界は、AdobeやMicrosoftのみならず、Googleなどに関する報道からも誰もが実感しているだろう。

 しかし、ここで、ふと立ち止まって考えてほしい。企業ポータルで提供する情報、企業がYouTubeで展開する宣伝、Video on Demandで提供される映画やテレビドラマ、Google Booksで提供される書籍コンテンツ、Amazonや楽天で販売される商品、どれもが以前からあったものをインターネット上に移行しているにすぎない。

 ロングテールという言葉が流行したのがいい例だが、要するにリアルな店舗では置ききれない売れないものが売れるということにすぎない。CGM(Consumer Generated Media)も、個人の無責任なうわさ話が1つのデータとして活用され、商品やサービスの売れ行きに影響を及ぼしているという話にすぎず、商品、サービス自体には何も新しい影響をおよぼしていない。これは現実としてとらえるべきである。

 Web2.0に意味がなかったわけではない。インターネットという全く新しい世界が始まり、Web2.0と呼ばれる全く異なる購買行動がマーケティングの視点から分かったことは今後のビジネスにとっては大きな革命であった。

 テレビを中心にしたマス広告で消費者の目をひきつけ、立地の良い店で人を呼び込み、興味を持たせ、商品を購買させるいわゆる「AIDMA」(注:AIDMA:Attention、Interest、Desire、Memory、Action)の従来の購買行動が、AISAS(AISAS: Attention、Interest、Search、Action、Share)に変化した。SNS、Twitter、ブログ、インターネット上の広告などで興味を喚起され、Googleで詳しく調べ、インターネットで購入。そして購入した商品の感想を今度は情報発信者としてSNSやブログ に発信し、その情報からまた人が興味を喚起されるという独自の購買サイクルが確立したのがWeb2.0の時代だったではないかと考える。

 もともとインターネットは技術の上に成り立っているので、技術が先行した市場になり、IT企業はAISASを実行するためのソフトウェア、ハードウェア、ソリューションサービスを並々ならない企業努力で提供してきた。最初に紹介したAdobeやMicrosoftの動きは、まさにWeb2.0を実現させるためのIT企業の努力の結晶といえるだろう。

 こうしたIT企業が提供するWeb2.0を実現するソリューションと回線環境などのインフラがそろってきたところで、Web2.0は終えんを迎え、次の領域に足を踏み入れなければいけないポイントに来ているのである。

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