世界で勝つ 強い日本企業のつくり方
コラム
» 2009年10月07日 08時00分 公開

世界で勝つ 強い日本企業のつくり方:日本企業のBPO成功に向けて (1/2)

コンサルティング大手のアクセンチュアにビジネスプロセスアウトソーシングを成功させる方法について話してもらう寄稿の3回目。「暗黙知」の「形式知」への変換などさまざまなポイントがある。

[田村貴志(アクセンチュア),ITmedia]

 1回目2回目に続き、最終回となる3回目は、今後日本企業がBPOに取り組んでいくに当たって、成功するために重要となるポイントについて述べたい。

コアとノンコアについて

 BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)を実施する前段として、自社のコアプロセスおよびノンコアプロセスが何かについての社内合意が重要である。前述したように、バリューチェーン上、企業活動のサポートプロセスである経理・人事・総務といった機能は基本的にはノンコアである。

 もちろん、その戦略・企画機能やガバナンス機能については、極めて重要な機能であり、企業戦略の根本の部分であるが、そこに費やされる工数の大半は日々のオペレーションである。われわれは過去の経験からほとんどの企業の財務経理、人事業務の大半はアウトソース可能だと考えている。

 よって、アウトソースする対象を決める際は、「何がアウトソースできるか」ではなく「何がアウトソースできないのか、それはなぜか」と問うようにしている。われわれがクライアントとアウトソーシング領域の話をする際によく出るのが「うちは判断を求められる業務が多いので、あまりアウトソースする余地はないですよ」ということがある。しかし実態としては、その業務判断の多くは、基準を明確化、ルール化することで、誰でもできるものであることが多い。

トップのリーダーシップ

 日本企業では特に現場のラインの長である、部長、課長の方々が意思決定の権限を握っており、トップダウンではなくミドルアップの意思決定プロセスが主流となっている。特に経理、人事、調達といった業務のBPOを検討するに当たって、基本的に部門の責任者である経理部長、人事部長、調達部長の方々は直属の部下、チームに大きな影響を与えることになるため、対象部門とは一線を画したトップマネジメントの関与なしに自身で推進することは難しい。

 われわれの経験上、アウトソーシングが成功するのはほぼ間違いなく、トップが断固としてアウトソーシングを推進する強い意思を示し、重要な意思決定に継続的に参加した場合のみである。

BPOで達成する効果の明確化

 BPOによる効果は、単なる人件費単価の低減ではない。アウトソースすると業務がブラックボックス化するといった指摘もあるが、これは大きな間違いである。中にはブラックボックス化してしまうアウトソーサーも存在するかもしれないが、アクセンチュアを含む第一線のアウトソーサーが受託すると、むしろBPOを機に業務の可視化が大きく進む。

 なぜなら、これまで社内で行っていたがゆえに特に報告の義務もなく、定量的な把握もできていなかった業務についても、アウトソーサーは、実施した業務量やその品質について定期的にクライアントに報告する義務が発生するからである。SLAを締結することで、多くの場合、サービスのスピード、品質も向上する。よりビジネスに直結する効果として、例えば調達業務のBPOについては商材や間接財の調達コスト自体の削減、財務経理のBPOについては売掛金管理、買掛金管理の品質、精度向上によってキャッシュフローの改善が実現されるケースも存在する。

業務移行

 よくクライアントから「うちの経理業務は長年にわたる経験と勘がものをいうので移行は難しいです。特にオフショアに移すことなんて無理だと思いますよ」という話を伺う。もちろん長年にわたって蓄積されたノウハウや職人的なスキルによって日々の業務が支えられているのも事実である。

 ただし、その多くは個々人の頭の中にある「暗黙知」として存在してきているだけであり、その多くは「形式知」に変えられる。われわれが移行をする場合、この頭の中にある暗黙知を徹底的に業務マニュアルに落とし込む。

 中国オフショア拠点への移行を行う場合、中国の担当者が日本に来て知識の共有を実施する。業務担当者にあらかじめマニュアル化できるものはお願いするとして、実は中国の担当者が1週間程度の間、ずっと現担当の隣に張り付いて業務を見ながら自身で徹底的なマニュアルへの落とし込みを行うのである。これを「シャドーイング」と呼ぶ。

 さらに次の一週間では、逆の立場となり、自身で業務を実施させてもらい、現担当者は横に座ってこれを検証するのである。中国への業務移管については、2008年にはテレビドラマにもなった(編注:日本テレビ『OLニッポン』)が、実際にはもっと効率的、効果的な方法がある。

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