インタビュー
» 2010年02月02日 11時30分 UPDATE

オルタナティブな生き方 栗原進さん:ネットでリアルを楽しくしたい (1/2)

SE出身の企業広報マンでありながら、趣味は落語で憧れの人はインディ・ジョーンズとアナログ全開の栗原さんに、ブログを書く理由やネットからはじまるコミュニケーションについて伺った。

[土肥可名子,ITmedia]

 栗原さんには2つのブログがある。IT企業の広報マンとして書く、ITmedia オルタナティブ・ブログ『栗坊のマロン通信』と、旅や映画や落語などのプライベートな世界を綴る『栗ッピング』の2つだ。

ブログに写真を載せるわけ

栗原進さん 『栗坊のマロン通信』 栗原進さん

 僕は積極的にインターネット(ネット)に自分の写真を載せています。なぜかというと、ブログを読んでいる人がどこかで僕を見かけたら声を掛けてほしいから。SNSにしてもブログにしても、その中だけで終わっちゃうのは寂しいんです。

 落語が好きでよく寄席に行くんですけど、同僚にも友達にも落語好きがいなかったので、最初は一人で行っていました。その感想をプライベートのブログに書いていたんです。ある日、寄席で少し離れた席から若い女性が寄って来て、「栗坊さんですか」って声を掛けられたんです。次からはその人と一緒に行ったり、mixiで好きな噺家(はなしか)さんのコミュニティーを作ってオフ会を開いたりするようになりました。

 ついこの間も、落語会で隣に座った男性からiPhoneのTwitterで僕のつぶやきを指差しながら、「もしかしてこの方ですか?」って尋ねられました。その場でお互いフォローしあいましたよ。顔を出していないとこうはなりませんね。アメリカ人の友人にも「どうして日本人は、匿名で顔写真も出さないの?」って素朴な質問をされたことあります。人それぞれ考え方がありますが、僕は、人脈が広がる楽しい方を取っています。

 周りに落語好きはいなくても、寄席に来る人はたくさんいる。リアルだけで趣味の合う人を探すのは大変ですが、ネットを使えば簡単に仲間が見つかります。おかげさまで、今では会場に行けば必ず誰か友達がいる。一人で寄席に行くことはなくなりました。ネット上のバーチャルな付き合いから、やがてリアルなコミュニケーションにつながる、そういうネットの使い方が僕は好きなんです。ITってそれそのものが目的じゃない、それを使って何かをする道具ですから。

 ネットで知り合った人とはほとんど会ってるんじゃないかなぁ。好きな噺家さんが札幌で公演をやるというと、じゃあと出かけて札幌のネット友達と落ち合って、福岡公演のときは福岡で知り合ってその後でネット友だちになったり、彼らが東京に来るときには僕が東京を案内して……という感じでね。

 初めて会う人でもブログを通じてお互いの趣味やパーソナリティが分かっているので、初対面という気がしないんです。久しぶりに会った友達と話すような感覚。英語でブログを書くと世界中の人からメッセージが来るし、普通に暮らしていたら一生会わないような人とも知り合いになれる。ブログは本当にいいコミュニケーションツールだと思います。何より楽しいですしね。

落語に考古学、古いものが好き

 大学では、考古学を専攻しようと思ってたんです。遺跡や史跡を尋ねて、往時に想いをはせるのが好きだったし、映画「インディ・ジョーンズ」のような冒険もしてみたくて。でも何故か、図書館・情報学科に進んでしまいました。専門課程を決める際に、ちょっとコンピューターに興味を持ち始めまして、図書館・情報学科はパソコンのプログラミングの講義などもあったので、ふらふらっとそっちに進んでしまいました。もし、ここでコンピューターに触れていなかったら日本アイ・ビー・エムには行かなかったでしょうね。

 今でも考古学は好きで、文明発祥の地チグリス・ユーフラテスは憧れの地です。エジプトには行ったことがあるんですけれど、イランやイラクにはまだ行ったことがないんです。学生時代は、湾岸戦争があり、また今も不安定な情勢が続いていますね。早く平和が訪れてほしい。学生のころ、「千一夜物語」にも夢中になりましたから、アラビアへの想いは強いですね。

 伝統があるものが好きなんです。落語も古典が好き。最近のお笑いや創作落語は「世の中にはこんな変な人がいるね」という違いで笑わせるけれど、古典落語はどこにでもいる普通の人を題材にしているんです。300年前の人間も今の人間とやってることは変わらない。子どもに知ったかぶりをしたり、隣人が美人の奥さんをもらったとうらやんだり妬んだり。そういう人間の普遍性に何百年前の人と心が通じるような魅力を感じるんです。

 出会いは高校生のころです。たまたまテレビで「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに水くくるとは」という百人一首の意味を子どもに聞かれて知らないと言えないお父さんがご隠居に意味を聞きに行く噺(『千早振る』)を見たんです。まったく違う意味を付けていく過程がおかしくておかしくて。ちはやも神代も花魁の名前で、竜田川はそれに振られる相撲取りにしちゃうんですよ。知らないのに知らないと言えないその人間らしいところが好きなんです。

 座布団の上に人がいて、小道具は手ぬぐいと扇子だけ。それだけで宇宙の広がりがある。すっかりその魅力に取りつかれて、寄席に通うようになりました。最近は年に100回ほど落語を聴きに行きますが、ネットで知り合った落語仲間には250回も通っている人もいますよ。

ブログ人脈から受ける刺激

 映画は子どものころからほぼ毎週観てきました。当時の映画雑誌『スクリーン』や『ロードショー』を片手に。中学・高校時代はスタンリー・キューブリックにはまっていましたね。あとはウッディ・アレンやアンドレイ・タルコフスキーとか。でも1番観たのはウエストサイド物語かな。ミュージカルも好きなんです。

 映画は劇場で観ます。緞帳(どんちょう)がすーっと上って映画が始まり、終わると静かに下りて場内が明るくなる。旧丸の内ピカデリーの最終上映日に、緞帳が下りたステージにそっと花束を置いた女性がいて、そういう風情が好きなんです。シネコンが増えて便利になったのはいいんですけれど、緞帳がある劇場が少なくなったのが残念だなぁ。

 ブログで知り合った人たちの影響で、どんどん趣味の幅が広がっています。歌舞伎や文楽に誘われたり、生け花を見に行ったり。東京にいると地方では観られないものをたくさん観られる。小さな舞台やマイナーな映画、美術展にコンサート、オペラともう観たいものだらけ。

 刺激も受けます。つい最近も、落語仲間で書道や絵画をやっている人の展覧会を観に行ったんです。それがもうすごい緻密(ちみつ)で立派なもので。話を聞いたらその作品に半年ぐらいかけたって言うんです。失業したらその道で食っていくぞっていう、それぐらい気合いを入れて描いているって。これはちょっと衝撃でした。僕も仕事以外に何か専門の分野が欲しいなって思いました。

 そうそう、今、着物が欲しいんです。歌舞伎座が建て替えられるでしょう、だからその前に桟敷席をとって着物で観に行こうと友人と計画してるんです。でも着物も凝りそうで、怖くて一歩が踏み出せません。(編集部注:このインタビューの直後、着物をお買いになったそうです)。

 これだけ観たいもの聞きたいものがあると、会社の飲み会などにはほとんど行けません。だから会社の人からは付き合いが悪いと思われているかも知れません。さすがに送別会は行きますけれど、歓迎会はこれから毎日9時から5時まで付き合うわけだから、ごめん、勘弁してねって感じです。

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