あなたのルールを見つけよう〜『魂を売らずに成功する-伝説のビジネス誌編集長が選んだ 飛躍のルール52』マネジャーに贈るこの一冊(1/3 ページ)

誰にもルールが分からない時代だからこそ、自分の経験則を作る。1つ1つの経験から学び、それを自分のルールとして昇華させる過程こそが、持論を育てるべきマネジャーの参考になるであろう。

» 2010年02月28日 11時00分 公開
[堀内浩二,ITmedia]

変化の時代には“経験則”を共有しよう

 「誰にもルールが分からない」。この本の一番はじめに書いてある言葉です。誰にもルールが分からないと言いながら、なぜ“ルール”について語るのか。ここをよく理解することが本書『魂を売らずに成功する-伝説のビジネス誌編集長が選んだ 飛躍のルール52』(英治出版)を楽しむカギです。

魂を売らずに成功する-伝説のビジネス誌編集長が選んだ 飛躍のルール52 『魂を売らずに成功する-伝説のビジネス誌編集長が選んだ 飛躍のルール52』英治出版

 『訳者からのメッセージ』によれば、「この本の原題である『Rules of Thumb』とは、『理論ではなく経験に基づいた法則』といった意味の慣用句」とのこと。つまり「個人的な経験則を集めた(だけの)本ですよ」とタイトルでうたっているわけです。実際、本書には著者が結晶化した理論があるわけでもないし、参考文献のリストもありません。こういう本が尊敬を集めるのは通常は難しいことです。ネット書店の書評でも「著者が言っていることは個人的な経験に過ぎない」といった批判的なレビューを見かけます。

 でも、そんなことは著者は百も承知です。何しろファスト・カンパニー誌を立ち上げる前にはハーバード・ビジネス・レビュー誌の編集者だった人です。だからこそ理論化は学者に任せ、自分は実業家としての経験則を世に問うたのでしょう。

 誰にもルールが分からない時代だからこそ、自分の経験則を作っていこう、それを共有しながら皆で学び合おう。著者は『はじめに』で、そう語りかけています。その率直さと著者自身の豊富な経験が、本書を貴重な学びの書にしています。

 わたしがファスト・カンパニー誌を見かけたのは1998年、シリコンバレーの近くで働いていた時期でした。ビジネス雑誌でありながら論文集でもニュース雑誌でもなく、企業や個人のあり方そのものを問うような特集が多かったように思います。こう書いてしまうと哲学的な印象を持たれるかもしれませんが、とてもデザイン性の高い雑誌でした。時々日本に戻るときに、ちょっと見栄を張ってカバンに入れておいたような記憶もあります。

 ファスト・カンパニー誌は、創業者の経歴(もう1人の創業者もハーバード・ビジネス・レビュー誌の編集者)やそういった編集姿勢のためか、新進の雑誌ながらいわゆる“大物”のインタビューや寄稿が多いのも特徴でした。本書でも、トム・ピーターズ、ジム・コリンズ、ムハマド・ユヌス、ダライ・ラマ14世といった著名人の逸話が目白押しです。プロの編集者である著者の目を通してそういった著名人の考えやエピソードに接することができるのも、この本の魅力です。

あなたの“ルール”をまとめてみよう

 しかし、今回この本を取り上げたのは著名人が多く登場しているからではありません。著者が1つ1つの経験から学び、それを自分のルールとして昇華させている様子が、持論を育てるべきマネジャーの皆さんの参考になると思うからです。

 著者のルールを紹介しましょう。テーマ別にまとめたものが巻末にありますが、構造がない方が経験則集らしくて面白いので目次から引用します。タイトルで内容の想像が付くものが多いと思いますので、ざっと目を通して共感できるルールの番号を3つか4つ控えてみてください。

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