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» 2010年03月01日 07時30分 UPDATE

通信・放送ビジネスの展望――「3年後に激変する」とシスコ副社長の堤氏

NGNの本格展開や地上デジタル放送の完全移行を控え、通信・放送ビジネスでは転換点を迎えようとしている。市場の展望について、シスコシステムズ副社長の堤浩幸氏に聞いた。

[國谷武史,ITmedia]

 次世代ネットワーク(NGN)の本格展開や地上デジタル放送の完全移行などを控え、国内の通信・放送サービス市場が転換点を迎えようとしている。こうした変革が市場にどのような影響を与えるのか――その展望をシスコシステムズでサービスプロバイダー事業を統括する堤浩幸副社長に聞いた。

mrtsutsumi.jpg 堤氏

 堤氏は、6年にわたって同社で国内の通信サービス事業者や放送サービス事業者向けのビジネスを担当している。国内では2000年のBSデジタル放送開始やインターネットの本格普及を受けて、「放送と通信の融合」をテーマに、各事業者が新たなビジネスモデルの実現に挑戦してきた。堤氏は、「今後3年間で収益モデルが大きく変化する。そのきっかけになるのがビデオだ」と話す。

 放送と通信の融合を具現化したビジネスモデルの1つにインターネットテレビがある。基本的には放送事業者などが抱える映像コンテンツを通信インフラで配信し、ユーザーはオンデマンドで見られるものが多いが、ユーザーは視聴者として受け身の立場だ。

 堤氏は、ユーザー自身もビデオを発信してコミュニケーションができるなど、より幅広く活用していけるビジネスモデルの必要性を指摘する。同氏によれば、欧米ではボイスメール(音声メッセージによるメール)が広く普及しており、相手にユーザーの表情を視覚的に伝えられるビデオメールへの関心も高い。このため、ビデオを双方向で活用していことに抵抗を感じるユーザーは少ないようだ。

 だが、国内ではボイスメールの利用は一般に広がっておらず、ビデオメールへの認知も少ない。「日本人にはビデオを撮ったり、送ったりするという行為に抵抗感があるように思うが、YouTubeやTwitterのようなサービスの出現で、ユーザーが情報を発信することに抵抗を感じなくなりつつある」(同氏)。

 海外ではこれらのサービスがユーザーにとっても魅力的であるとして、積極的に利用されているが、国内ユーザーのビデオに対する意識が海外のように変化する可能性がある。

 技術面では、こうした動きを促進させる要素としてIPベースのネットワークやクラウドコンピューティングがあるという。これらを事業者が活用できれば外部サービスとの連携が容易になり、ユーザーの利用拡大につながるというのが同氏の展望である。

 「ユーザー自らビデオコンテンツを制作して、メディアのように社会へ発信していく“個人放送家”のような存在が増えるだろう。コンテンツが増えると同時に、ビデオ資産を自身の環境で抱えきれないユーザーがホスティングやオンラインストレージのようなサービスを求めるようになる」(堤氏)

 こうしたニーズは事業者にとって新たな収益源になるといい、例えばビデオを提供したいユーザーに対して、事業者はコンテンツのボリュームや内容、品質、また、編集機能といった条件で柔軟な課金体系を提示できる。また、コンテンツを利用したいユーザーにも、同様の条件で課金できるだろうという。

 従来の収入モデルでは、広告を除けばコンテンツ単位での課金や定額制が中心であるため、ユーザー数を増やすことが焦点になる。しかし新たな課金モデルを構築できれば、ユーザー数以外にサービスの利用度合いによっても収益拡大が見込まれる。堤氏は、事業者が質の高いサービスを維持、向上できることにもつながると提起する。

 だが、質の高いサービスを実現するには、利用形態をある程度統制したり、ユーザーが使いやすい環境を提供したりしなければならないといった課題がある。例えば、悪質なユーザーが有害なビデオコンテンツを大量に発信すれば、良質なコンテンツを求めるユーザーが離れていく。また、ビデオコンテンツを発信したり、利用したりするための機器の操作が複雑であれば、やはりユーザーがサービスを敬遠することになってしまう。

 こうした課題について、堤氏は事業者だけでなくメーカーや管轄する行政機関などを交えて検討を進める必要があると話す。「欧米では基本的に何か問題があってから対策を考えるというスタンスだが、日本では問題を起こらないようにすることから考える。この点で日本ならでは解決法を実現できれば、グローバルにも通用できるだろう」(同氏)

 技術面でも、不適切なコンテンツの流通をネットワーク上で自動監視したり、悪用を防いだりする方法の検討が進められている。こうした技術が多くの事業者に使いやすいものとなれば、ビデオの活用を広めるサービスが加速すると期待できるだろう。ユーザーが使いやすいデバイスでも、スマートフォンの普及を例にさまざまな機器が今後ますます出現するとみられる。

 こうしたビデオの活用は、企業とコンシューマーとのコミュニケーションを密にし、企業にとってはより効果的なマーケティング手段にもなり得る。同氏はその一例としてデジタルサイネージを挙げており、ビデオ広告による顧客への訴求強化をきっかけに、逆に顧客が企業に対して商品に対するフィードバックを返すようにもなり、企業と顧客の関係が縮まるという。

 コンシューマーサービスでビデオの活用が進めば、企業内コミュニケーションでもビデオの活用が進むと期待される。現在でもビデオ会議などが活用されているが、今後は一人ひとりのビジネスユーザーが気軽にビデオ会議へ参加したり、ビデオメールを関係者に発信したりといった活用をするようになる。

 堤氏は、「ネットワークの自由度は世界の中で日本が最も高く、既に優れたインフラがある以上、いかにビジネスへつなげるかが今後の重要なテーマだ。3年後に電子メールがビデオメールに置き換わっていてもおかしくはない可能性を秘めている」と話している。

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