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ソーシャルグラフ志向?――「AmebaPico」の狙いFacebookと連携

AmebaPicoはアメーバピグの海外版――と、とらえられがちだが、その実、目指すところには違いもあるようだ。

» 2010年03月21日 08時00分 公開
[石森将文,ITmedia]

 アメーバピグの海外版として3月8日にサービスを開始したAmebaPico。「企画の立ち上げから、およそ半年強で立ち上げた」(サイバーエージェント 新規事業開発室 竹原康友氏)というスピード感の背景には、AmebaPicoを米国市場進出の足掛かりにしたいという狙いもあるようだ。

AmebaPicoを担当するサイバーエージェントの竹原康友氏。米国の事業拠点が立ち上がったら、竹原氏も渡米する予定とのこと

 日本におけるアメーバピグは、運営会社のサイバーエージェントが展開するWebサービス「Ameba」のひとつとして位置付けられ、アメーバブログやAmebaなうとの連携性が高い。だがAmebaPicoは海外での浸透を目指す目的から、現時点で世界最大のSNSといえるFacebookアプリケーションとしても提供される。当然、既にFacebookのアカウントを持っているユーザーであれば、アバターであるPicoを作成しさえすればすぐにでもAmebaPicoを利用できる。

 サービスイン以降、Facebook内でのプロモーションにも力を入れているといい、「開始後1週間で、Picoを作成したユーザー数はおよそ13万人」(竹原氏)にのぼる。米国のリサーチ会社によると、3月12日時点におけるFacebookアプリのユーザー獲得数ランキングでAmebaPicoは6位につけており、またその増加率は99.97%で3位となっている。日本のアプリが、このランキングに登場するのは始めてのことらしい(ちなみにサイバーエージェントでは、アバターであるPicoを作成して初めてユーザーとしてカウントするため、アプリ承認数だけでカウントする調査とは数字が異なる場合がある)。

 AmebaPicoは海外向けとはいえ、国境に制限を設けているわけではない。そのため日本(あるいはそれ以外の国)からでも利用でき、比率としては米国7割、日本2割、それ以外の国や地域が1割程度だという。なおインタフェースは全て英語で表示される。「時差があるので、米国ユーザーが多い時間帯と、日本ユーザーが多い時間帯があり、自然に住み分けられている感じ」(竹原氏)

 アメーバピグと同様に、AmebaPicoにもユーザーが活動する舞台となる、テーマ性を持った複数のエリアが用意される。現時点では、ニューヨークの「ダウンタウン」エリアや、「セントラルパーク」エリアが存在しているほか、“Coming Soon”扱いで「カリビアン」エリアなどが告知されている。またパトリックスデイ(3月17日。“緑の日”とも言われ、緑色の服を着たりして楽しむ祭日)」など現地の文化に根ざしたイベントが開催されている。

ニューヨークエリアからは、定番の“自由の女神”を訪れられる

 Facebookとの連携を意識した機能としては、撮影した画像をFacebookのアルバムに保存できる「CAMERA」、Facebookユーザーのプロフィールやログイン情報を表示する「BUDDIES」、Facebookユーザー同士でアイテムを交換できる「GIFT」などが提供される。

 加えてアメーバピグにはないサービスとして、仮想通貨である「Gummi(グミ)」を消費して回せる「Gacha(要はガチャガチャ。ランダムでアイテムを入手できる)」や、仮想空間内で課せられる課題をクリアしていく「Mission」などが用意されており、これらからは日本人スタッフのセンスが感じられる。なおMissionについては海外での評判をフィードバックする形で、「チャレンジカード」と名称を改め、3月16日から日本版でも提供している。

Gachaにラインアップされるアイテムは日替わり。ユーザーが毎日ログインする動機付けにもなっている(画像=左)、Missionはその達成状況をスタンプ帳(のようなもの)で確認できる(画像=右)。“夏休みのラジオ体操カード”を想起させ、どうしても埋めたくなってしまう――

 初期に提供するエリアやサービスについては、アメーバピグのスタッフなどとともに「ネイティブが1人いて、あとは日本人が中心になり企画した」(竹原氏)というが、今後は米国ユーザーの好みやニーズを的確に拾うため、「中期的には“サイバーエージェントアメリカ”として現地で事業化し、スタッフもネイティブを中心に運営していきたい」(竹原氏)とする。

 収益については、タイアップやアライアンスも視野には入れつつ、当面は「アイテム課金でしっかりと収益を確保する」(竹原氏)狙い。指標としては2010年中に300万ユーザーの獲得を目指すが、「それよりも相当早い段階で、ブレークイーブンする(損益分岐点を超える)見込み」(竹原氏)としている。


 「既にあるコンテンツ、企画実績、運用実績、体制を強みとし、世界のソーシャルアプリ市場に参入する。事業として成立させるロジックも見えている」と竹原氏は自信を見せる。「AmebaPicoは顔見知り同士がつながっているFacebookを母体で運営される仮想空間。ユーザーに、新しい人たちとのコミュニケーションができる場の提供だけでなく、知り合い同士のコミュニケーションにも付加価値を提供できるようサービス展開していく」(竹原氏)

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