育てばラクチン、後継者ドジっ娘リーダー奮闘記(1/2 ページ)

事業を拡大・発展させるためには、人材の育成が大切です。メンバーを育てるコツとポイントを、新米リーダーペアのしんこちゃん&春美ちゃんとともに学びましょう。

» 2010年04月01日 11時30分 公開
[小俣光之,ITmedia]

 IT事業部のリーダーが集まるミーティングが終わり、席に戻ろうとした新米リーダーのしんこちゃんを、ライバルリーダーの春美ちゃんが呼び止めました。

イラスト:本橋ゆうこ イラスト:本橋ゆうこ

春美ちゃん あー、忙しい忙しい。と、に、か、く、忙しい! あったま来るほど忙しい!

しんこちゃん 春美ちゃん、落ち着いて。忙しい忙しいと言ったって、仕事が減るわけじゃないんだから。

春美ちゃん もう、どうしてしんこはそんなにノホホーンとしていられるの? 自分の仕事だけでも大変なのに、リーダーになってからやることや考えなければならないことも増えるし、これで落ち着いていられるわけないじゃない!

しんこちゃん その気持ちは良く分かるけれど、イライラしたって仕事は片付かないし……。

春美ちゃん 言われなくても分かっているわよ! ただ、しんこならこの気持ちを分かってくれるんじゃないかと思って愚痴ってみただけよ。そんなことぐらい気が付いてよ、鈍感ね。

しんこちゃん 分かった分かった。わたしだって愚痴の1つも言いたくなる時があるもの。確かにリーダーは仕事が多くて大変。自分のクローンがいたら楽になるかなあ、なんて時々思ってしまうわ。

春美ちゃん やだー。しんこみたいな鈍感な人がたくさんいたら、ますますイライラするわ!

しんこちゃん わたしだって、春美ちゃんみたいにせっかちな人がたくさんいたら、胃に穴が開いちゃうわよ。

春美ちゃん 何よ、ノホホン!

しんこちゃん 何よ、イライラ!

 2人が険悪な顔つきでにらみ合っていると、いつものように先輩リーダーの輩田(やからだ)さんが“たまたま”通りかかりました。

輩田さん よーっ! しんこちゃんに春美ちゃん。フレッシュリーダーが2人そろって何をしているんだい。さては合コンの作戦会議だな? って冗談を言っている場合ではなさそうだね。ずいぶん険悪な雰囲気だし、それより何より2人ともずいぶん疲れた顔をしているじゃないか。

春美ちゃん 輩田さん、リーダーってどうしてこんなに忙しいんですか? やることがどんどん増えて、疲れがたまる一方です。しかもその話をしてもしんこはノホホンノホホンとしているから、余計イライラしちゃう。

輩田さん わっはっはっ。春美ちゃんは頑張りやだから、自分で自分をどんどん忙しくしているんじゃないかい? でもこの先ますます仕事は増えるぞ。今から弱音を吐くようでは心配だな。

しんこちゃん でも輩田さんもリーダーなのに、いつでも元気ですよね。輩田さんはどうやって忙しさを乗り切っているのですか?

輩田さん 簡単なことだよ。君たちに仕事を任せて、自分の仕事を減らしているということだ。

春美ちゃん それじゃあわたしたちもメンバーに仕事を任せちゃえ! とは言っても、内山君は頼りないし、江口さんは技術力がないし……。

輩田さん おいおい。君たちはリーダーなんだから、ちゃんとメンバーを育ててくれないと困るよ。メンバーを育てるには仕事を任せるのが1番だと、この間話したばかりだろう? 技術力は身に付けやすいが、信頼性やコミュニケーション能力を高めるのは時間がかかるものだ。こういった能力は教えてもなかなか身に付かないから、経験してもらうことが大切なんだ。育てるというよりも自分の後継者を作るくらいの意識で、メンバーに仕事を任せてもらいたいな。

しんこちゃん なるほどー。だからわたしたちは輩田さんにどんどん仕事を押し付けられ、もとい任せてもらってきたのですね。わたし、てっきり無責任に放置されていたのだと思っていました。

輩田さん 失礼な! 押し付け、もとい任せてきたのはちゃんと計算の上でやってきたことだ。ところで、メンバーに難しい仕事を任せて経験してもらうためには、少しコツがあるんだけれど、分かるかな?

春美ちゃん 有無を言わさないこと、でしょう?

輩田さん メンバーがやらされ仕事だと思ってしまうから、それでは駄目だな。コツは、リーダーがよりレベルの高い仕事をしているとメンバーに理解してもらうことだ。「リーダーが高度な仕事で忙しいから、ここの分野は自分が何とかしなければ」とメンバーが思ってくれればしめたもの、こちらから何か言わなくても前向きにしっかりやってくれるようになるものなんだよ。メンバーに難しい仕事を任せるためには、リーダーがより高いレベルの仕事にチャレンジすること。メンバーを育てると同時に、自分自身も成長しなければならないんだ。

しんこちゃん 確かにわたしたちが輩田さんの任せてくれるのに応えてきたのも、輩田さんはもっと難しい仕事をしているって分かっていたからかもしれません。頼まれた仕事を断る代わりに輩田さんが担当している仕事を回されたら、わたしたち困っちゃうもの。

輩田さん だっろー? わたしが仕事を任せてきたおかげで、君たちがしっかり成長し、わたしはほかの仕事に時間を割けるようになり、組織全体の仕事のレベルも上がった、ということだ。君たちもしっかり後継者を育ててくれたまえ、期待しているよ。わたしは高度な仕事で忙しいから、そろそろ行かなくちゃな。では、!

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