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» 2010年04月07日 07時00分 UPDATE

不正事件に学ぶ社内セキュリティの強化策:デジカメのメモリカードで解雇された研究者 (1/2)

海外留学に選抜された優秀な研究者が出発前に解雇されました。彼がした不正行為から小型の情報機器にまつわる脅威や対策を解説します。

[萩原栄幸,ITmedia]

 総合電機メーカーの中央研究所に勤務する30代の主任研究員のK氏は、優秀な研究者として将来を期待された幹部候補生でした。A氏は、社費で海外留学をすることになっていましたが、出発の直前になってデジタルカメラのメモリカードを不正に利用したとして解雇されました。これはまだメモリカードが高価だった数年前の出来事です。

(本連載で取り上げる事件は、筆者の情報セキュリティ事件の対応経験に基づいたフィクションです。)

美人ばかりから借りる

 K氏は、出発の数カ月前から他人へ海外留学の話をして、何枚ものメモリカードを借りていました。K氏のデジタルカメラに付属していたメモリカードは容量が少なく、留学中にたくさん写真を撮ればその容量では足りなくなってしまうというのが理由です。ほかにも留学に必要なものをそろえなければならず、高価なメモリカードを何枚も買うわけにはいかない――K氏に話を持ちかけられた人はそのように解釈して、喜んでメモリカードを貸していたようです。

 しかし、K氏の行動には1つだけおかしな点がありました。彼がメモリカードを借りていた相手は、どういうわけか社内で「美人」と評判の女性ばかりだったのです。通常なら一緒に研究している同僚か上司に借りるはずです。

 K氏は研究に没頭する性格で、どちらかというと女性に慣れていないタイプの人間でした。少なくともK氏は、5〜6人にメモリカードを貸してほしいと持ちかけていたようで、社内でも彼の行動が少しずつ話題になりました。そしてK氏の行動を不審に思った別の研究員がわたしのセミナーを受講した際に、そのことを質問してきました。

 不審に思ったわたしは、すぐにその研究所の所長へ連絡を取り、関係者を交えてK氏と面談をすることになったのです。

不正行為を否認

 わたしと関係者、K氏の面談でのやりとりは以下のようなものでした。

わたし 留学という名目で他人からメモリカードを借りているのは本当ですか。

K はい。何か問題ですか? 問題があれば明日にでもすべて返却しますよ。

わたし まずメモリカードを借りた全員の名前を教えてください。わたしもだいたいは把握していますが、Kさん自身からお聞きしたいのです。

K ○事業部○研究室のAさん、○事業部×研究室のBさんとCさん、秘書室のDさん、△事業部□営業部のEさん……。あとはちょっと覚えていません……。

わたし ほかに秘書室のFさんや△事業部△研究室のGさんにも借りましたね。

K あ、そうでした。でもいちいち覚えていません。

わたし 率直に質問します。メモリカードを借りたのは、なぜ同僚や上司ではなく、すべて女性なのですか。しかも美人だと評判の人ばかりです。彼女たちに借りた理由を教えてください。

K これをきっかけに美人と仲良しになれるかもしれないと思っただけですよ。わたしもそろそろ結婚して独立したいと思っているので。法律や社則に触れるようなことだとは思いませんが。

人事担当者 昨日、緊急役員会でこの問題について話があった。K君も知っていると思うが、入社時に宣約書へサインして会社に提出してもらったね。そこで両親にも立会ってもらい、K君のPCを調査した。これは宣約書に基づいた行為で、弁護士も合意している。調査の結果は、わたしたちが想定した最悪のものだった。K君、ここまで話せばもう理解できるだろう。

K そ、そんな! わたしのPCを勝手に触るなんて、いくら宣約書にサインしたからといってもプライバシー侵害じゃないですか!

わたし Kさんはメモリカードを貸してくれた彼女たちの善意に背いて、そのプライバシーを極限まで侵害しているのです。自分だけは良くて、会社が調査をするのはダメなのですか。宣約書という合法的な手順を踏んでいるのですがね。

K ……(無言)

 その後、K氏は依願退職を余儀なくされ、会社を辞めたのです。

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