“クラウドに全力投球” マイクロソフトの2011年度経営方針

マイクロソフトは、クラウド関連事業をオンプレミス型製品の事業と同規模にする目標を発表した。

» 2010年07月06日 17時25分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 マイクロソフトは7月6日、2011年度(2010年7月1日〜2011年6月30日)の経営方針説明会を都内で開催した。クラウドビジネスに全社を挙げて注力していく方針を明らかにした。

成長への基盤を固める

樋口社長 樋口泰行社長

 説明会の冒頭、2010年度の経営状況を振り返った樋口泰行社長は、「2008年の金融危機を契機に厳しい情勢が続き、大規模な人員削減に踏み切るなど社内体制の再編に取り組んだ。市場ではクラウドコンピューティングなどの需要が生まれ、この需要を獲得するためにチームワークと戦略的な活動ができる社内体制にした」と語った。

 国内市場ではクラウドコンピューティングへの関心が高まり、樋口氏は同社が市場において有利なポジションを保っているとの見方を示した。2010年度はWindows 7やWindows Server 2008 R2、Windows Azureといったプラットフォーム製品に加え、自社保有(オンプレミス)とクラウドサービスの双方に対応したOffice、Exchange、SharePointの最新版をリリースしたことが背景にある。また、樋口氏はパートナー企業との連携にも触れ、製品、営業現場、組織の各階層において同社とパートナー各社の関係を従来以上に深めていることを強調した。

 具体的な成果として樋口氏は、Windows 7の導入を表明した企業・団体が5360以上になったこと、Office 2010の発売初週の売り上げがOffice 2007発売の1カ月分に相当する状況になったことなどを挙げた。Microsoft Online Servicesでは25万以上のユーザーを獲得し、350社のパートナー企業が参画した。Windows Azureは50社以上が採用し、4000種以上のアプリケーションが利用されているという。

 ソリューションビジネスでは、大手町テクノロジーセンターの開設やクラウド分野における富士ソフトとの協業、情報共有分野におけるサイボウズとの協業など、パートナー各社と多数の成果を上げたとしている。

 樋口氏は2011年度で社長就任から3年が経過する。「1年目に組織の風通しを良くし、2年に四半期ベースで着実に成果を出す体制に変えてきた。今後は中長期的に“正しい”ビジネスをしていく姿勢を示したい」と述べた。同氏によれば、コラボレーション製品をはじめとする幾つかの分野では他社の先行を許している。「マイクロソフトとして伸ばし切れていない製品は多い。他社のエコシステムに参加しているパートナー企業に、もっとマイクロソフトも注目してもらい、彼らを同じ目標を持って活動できるようにしたい」(樋口氏)という。

歩み 樋口社長が就任年度から取り組んだ社内変革

クラウドに社運をかける

 2011年度に注力する分野として樋口氏は、「クラウドビジネス」「ソリューションビジネス」「クライアントインフラ」の3つを挙げた。特に注力するのがクラウドビジネスである。

 「多数の顧客がわれわれのソフトウェアを資産として保有しており、これを強みにオンプレミスでもクラウドでもどちらでも利用できる形態として推進する。クラウドでは顧客の重要なデータを預かることになるが、信頼が最も重要になるだろう。質の高い体制を築くことで顧客の信頼を獲得したい」(同氏)

 樋口氏は、同社がこれまで提唱し続けてきた「ソフトウェア+サービス」による柔軟性の高い製品の運用形態をはじめ、グローバルでの大規模データセンターの運用実績、Windows Azureを利用したスケールメリットのあるクラウド基盤などが、クラウドビジネスを展開する上での強みになると強調した。

クラウド クラウドビジネスにおける施策と目標

 既に日本法人の全社員のうち、9割以上がクラウド関連のビジネスも手掛けているという。7月には100人規模のクラウドビジネス専任の部隊を新設した。樋口氏は、現在約350社のクラウド関連パートナー企業を2011年度中に1000社へ、3年後には7000社規模に増やす方針も提示した。また、販売施策ではWindows Azureのボリュームライセンスやホスティングサービス「Business Productivity Online Standard Suite(BPOS)」の新バージョン、Dynamics CRM OnlineおよびオンラインIT管理サービス「Windows Intune」の提供も計画している。

 これらの取り組みにより、2011年度はクラウドビジネスの規模をオンプレミス型製品のビジネスと同程度に拡大させる考えだ。

 パートナー企業と推進するソリューションビジネスでも、クラウドとオンプレミスのハイブリット運用を可能にするソリューションメニューの拡充に注力する。クライアントインフラでは、Windows 7およびOffice 2010の企業での本格普及を推進していく考えである。

 マイクロソフトは米Microsoftの日本法人として1986年2月に設立され、2011年2月に25周年を迎える。これを機に同社は社名を「日本マイクロソフト」に変更し、本社を新宿から品川に移転する。最後に樋口氏は、「グローバル企業の一員でありながらも、日本市場でしっかりとビジネスをしていくという気持ちを社名に込めた。日本に根差して、社会に貢献できる企業を目指す」と表明した。

25周年 2011年2月1日に社名変更と本社移転を実施する

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