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» 2010年07月13日 11時48分 UPDATE

Microsoft WPC 2010 Report:「エンタープライズITに賭けるならMicrosoft」――バルマーCEO、パートナーにクラウドビジネスへの転換を促す

クラウドビジネスへの移行はビジネスモデルの変革を意味する。Microsoftのスティーブ・バルマーCEOは世界中のビジネスパートナーを前に「これは必要な変革」だと力説した。

[谷古宇浩司,ITmedia]

 米Microsoftのビジネスパートナー向けイベント「Worldwide Partner Conference 2010」には、17カ国の地域からおよそ1万3000人が集まった。会場はワシントンD.C.のVerizon CenterとWashington Convention Centerだ。チャイナタウンにほど近いこの辺りはワシントンD.C.の繁華街といってよく、とてもにぎやかだ。ここから南に数ブロック下ると、ナショナル・ギャラリー・オブ・アート、アメリカ自然史博物館などが林立する全米屈指の観光地区にたどり着く。

 最初の基調講演は7月12日(米国時間)午前8時に始まった。スティーブ・バルマー氏(Steven A. Ballmer, Chief Executive Officer)のクラウドコンピューティングに関する講演をまとめる。

クラウドビジネスのチャンスと責務

 バルマー氏の役割は方向性を示すことだ。今回バルマー氏は、Microsoftと同社のビジネスパートナー群という大船団の旅の目的地を、改めてクラウドコンピューティングと定めた。

 彼の大号令はビジネスパートナーたちの耳に届いたのか。Microsoftのビジネスパートナーは全世界でおよそ6万4000社あり、平均従業員数は15人だ。Microsoftが理解する彼らの最大の悩みはこうだ。

 「Microsoftについて行って大丈夫なのだろうか」

 クラウドビジネスに移行するという決断は、ビジネスモデルの変革と同じインパクトを持ち、非常にリスクの高い選択だ。規模の小さい企業が大半を占めるMicrosoftのビジネスパートナーは、日々大いなる不安に苛まれていると考えられる。

 そんなビジネスパートナーたちの不安を払拭するのが、MicrosoftのCEOであるバルマー氏の役割だ。同氏はビジネスパートナーに対し「クラウドビジネスへの移行は不可避だ」という強いメッセージを、彼独特の大音声で発した。

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 ビジネスの基盤をクラウドに移行すると、自然に発生するチャンスがある。バルマー氏はこういったニュアンスの発言をした。これは自社で開発したアプリケーションやサービスをより広い市場で販売できるというチャンスであり、新しい顧客の獲得につながるというチャンスでもある。

 例えば、企業向けクラウドサービス「Microsoft Online Services」には、6月22日時点でおよそ4000万のユーザーが存在するとMicrosoftは発表している。日本には(有料サービスの)利用者が約20万ユーザーいる。同サービスが登場したことで、新しいビジネスが生まれたことは否定できない。

 Microsoft Online Servicesは、ExchangeやSharePointといった機能をオンラインで利用できるサービスだ。これまでパッケージ製品を顧客企業に販売していたビジネスパートナーにとって、機能だけをオンラインサービスとして提供するのは、言葉だけで表現するほど簡単なことではない。そして、この意外な高さの障壁が、ビジネスパートナーのクラウドビジネスへの移行の動きを鈍らせている最大の要因にほかならない。

 「チャンスがあるのは分かる。しかし、そこにどんなリスクがあるのかを知りたい」――。多くのビジネスパートナーはこう考えている。そこでバルマー氏はチャンスと対になるリスクを「責務」と言い換えて提示した。

 クラウドビジネスを展開することでビジネスパートナーが担う新しい責務とは、サービスの運用にかかわる作業を指す。顧客企業のビジネスを中断することは許されないし、多くの場合、データセンター内に大量の個人情報を所有することになるため、プライバシー保護の施策にも注意を払わなくてはいけなくなる。セキュリティ対策はいわずもがなである。

 全体として見るならば、顧客企業のシステム運用を請け負うアウトソーサーとしての役割を担うことになる。同時に、新しいビジネスを提案するコンサルタントへの転換という側面もある。

既存製品をクラウドビジネスのどこに位置付けるか

 バルマー氏の講演を聞いていると、Microsoftのビジネスパートナーがクラウドビジネスに移行するのは、メリットもそれなりにあるとはいえ、それほど簡単なことではない気がしてくる。実際、既存のビジネスで成功を収めているビジネスパートナーほどクラウドビジネスに移行するハードルは高そうだ。

 そのため、Microsoftでは、ビジネスパートナーに提供する製品・サービスのインフラ基盤をオンプレミスとオンラインの二段構えで提供するとしている。バートランド・ローネー氏(マイクロソフト 執行役常務 ゼネラルビジネス担当)は「Googleは(将来のビジネスは)100%オンラインに移行するとアピールしているが、実際、簡単なことではない。5年先のことは分からないが」とコメントしている。

 ビジネスパートナーの業態転換に配慮しながら、Microsoft自身も大成功を収めたパッケージ製品のクラウドビジネスでのマッピングに力を注いでいる。

 データセンターに蓄積したデータを活用するために、SQL Server 2008 R2やSharePoint 2010、検索エンジンのBingがツールとして新たな位置付けを獲得している。また、コードネーム“Dallas”と呼ばれるデータ移行サービスが、上記の製品群をビジネスインテリジェンス支援ツールとしてアピールする手助けにもなっている。

 豊富で高性能な機能を持つクライアントソフトウェア(およびそれらのソフトウェアが動作する高機能なハードウェア)は、Microsoftのこれまでの成功を支えてきた重要な製品群だ。しかし、クラウドコンピューティングが普及するとGoogleのような企業は、「クライアントにOSはいらないし、ハードディスクも必要ない」と言及する。彼らによれば、オフィススイートソフトウェアをクライアントPCにインストールするのは、前時代的な行為だとしている。

 もちろんMicrosoftの判断は違う。クラウド環境に求められるのはシンクライアントではなく、リッチなクライアントだ。WindowsのクライアントPC(近々、Windows 7 Slatesが出るとバルマー氏は言及していた)だけではなく、Xbox 360(ポイントはKinect)、Windowsベースのスマートフォン(Windows Phone 7)など、「MicrosoftはWindows 7で何をしようとしているのだろう」という多くのビジネスパートナーの疑問に対し、バルマー氏の口を通じて、クラウドビジネスという大きな体系の中に既存製品・サービスを組み入れていくことで、自らビジネスモデルの転換を図ると同時に、ビジネスパートナーのビジネスモデルの変革の後押しをしようとしている。

 バルマー氏がMicrosoftのCEOに就任したのは10年前だ。当時、エンタープライズITの分野に踏み込もうとしていたMicrosoftに対し、市場は当初「準備不足」の烙印(らくいん)を押した。この10年間でMicrosoftが成し遂げたエンタープライズIT市場での業績は決して小さなものではない。

 しかし、これまでの10年間の努力は果たして、次の10年にも継承されるのだろうか。成功の鍵を握るのはクラウドビジネスであり、ビジネスパートナーの説得であるとMicrosoftは考えている。

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