76億8000万ドルでMcAfeeを買収したIntelの「セキュリティがコンピュータのインフラになる」未来予想オルタナティブ・ブロガーの視点

IntelによるMcAfee買収は今後のコンピュータセキュリティにどのような影響をあたえるのでしょうか。オルタナティブ・ブロガー、新倉茂彦氏が考察しています。

» 2010年08月23日 19時44分 公開
[新倉茂彦,ITmedia]

(このコンテンツはオルタナティブ・ブログ「新倉茂彦の情報セキュリティAtoZ」からの転載です。エントリーはこちら。)

 現在の円高を考えずに簡単な計算でも7000億円近い買収金額になります。7000億円の事例を検索してみましたが、赤字の記事だったりと、イマイチ規模感が分かりづらいのですが、情報セキュリティ市場、日本は世界の13%――IPA調査にあった、日本市場:7268億円というものが金額ベースでほぼ同じとなるようです。単純に考えれば、今回の買収と2008年の日本国内セキュリティ市場規模が同じことになります。(引用記事はこちら

 Intelが挙げた方向性は、今回の買収によって初めて明らかになったわけではなく、既に同社が以前から独自に取り組んできたものである。同社の企業向けクライアントPC管理技術「vPro」がその代表例だ。vProには、企業の管理者がリモートからPCを管理できる機能や省電力機能のほか、今年春にはPCの紛失・盗難対策機能とHDD暗号化の高速処理機能が追加された。つまり、コンピュータの管理性向上と電力の効率化、セキュリティ対策機能の一部を既に製品として具現化しているのである。


 関連記事は、Intel、セキュリティ大手McAfeeを76億8000万ドルで買収IntelのMcAfee買収、その意味はも参照してください。

 今回の買収は、今後のセキュリティの方向性に大きな意味を持つものだと感じています。セキュリティ業界もさることながら、単なる企業間の買収ではなく、利用者にとってセキュリティが大きく向上することになると注目しています。

 冒頭の国内セキュリティ市場規模金額と比較しても、ほぼ同じ金額になるほど大きな買収でもあります。

 個人的な感想としては、セキュリティが良い方向に向かっていると考えています。先日わんとぴ:セキュリティでツイートしました「忘れ去るHDD」が登場へ、東芝がHDDを機器から取り外すだけで瞬時にデータを無効化する技術を開発と同じく、「ハードウェアレベルでセキュリティを確保する、物理的にセキュリティを確保する」――最も有効な方法であると思っています。

 IntelのMcAfee買収によって、今後のコンピュータ製品はセキュリティ技術がよりプラットフォームに近い領域に実装されるようになると考えられる。従来はプラットフォーム技術とセキュリティ技術が連携しつつも、原則としてそれぞれが独立したものであった。例えば、PCを新規購入するとセキュリティ製品がバンドルされていることもあるが、ユーザーはほかのセキュリティ製品を自由に利用できるといったようにだ。

 プラットフォーム技術とセキュリティ技術の融合は、コンピュータの1つの流れともなっている。米EMCによる米RSA Securityの買収がその代表例だ。最近でも米Hewlett-Packardが米Fortify Softwareの買収を表明した。


 セキュリティがコンピュータのインフラになる。電気・ガス・水道・道路・インターネット……。重要な社会インフラは多くあります。我々が最も利用する、なくてはならないコンピュータのインフラにセキュリティが組み込まれることは重要な意味を持つものと考えます。

 例えば水道の場合、蛇口をひねれば「安全な水」が流れてくると誰もが確信しています。「もしかしたらヤバイ水かも?」と思うことはありません。話はそれますが、日本ってあまりにも恵まれた国であると感謝してます。飲める水で風呂に入り、洗顔し、トイレを流し、植木にも与えることが出来る。これを私たちが普段意識することはありません。当たり前にできるからです。

 インターネットはまだまだ安全なインフラになっていませんが、重要なインフラです。通信手段として、コミュニケーションとして、コンピュータだけに限らず、スマートフォンもケータイも利用しています。これも通信が遮断されない限り、普通に使えるものと思いがちです。

 結局、普通に当たり前に使える事を大前提に考えていますし、そう思うものです。ありがたいことです。不便にならないと「そう考える」こともありません。

 つまり、セキュリティがインフラ化してくると、セキュリティを特に意識することなくコンピュータが使えるようになります。既に意識せずに利用している人も多くいると思います。まだ意識しなければならないのに……。

 モバイル利用が増えている中、利用者のセキュリティをインフラレベルで安全にしてくれるのは、安心できます。誰しもセキュリティのために仕事していません。

 ただ、インフラレベルでセキュリティが確保されても、利用者がまだ意識しなければならないのは、運用面です。「水」だって日本国内では安全であっても、海外に出れば事情の良くない場所もありますし、国内であっても水あたりなど、個人差がありますが普段と違うものを体内に入れることにより、体調に変化も出てくるものです。ジェットコースターのように一気に落下するような経験は誰しもあるはずです。これは辛いです(笑)

 インフラレベルでセキュリティの確保がされ、コンピュータも意識せずに安全に使えるようになっても、作ったのは人間ですし、使うのも人間です。間違えるのも人間ですし、犯罪などのように間違えるように誘導してくるのも人間です。情報セキュリティで言えば、会話から普段の行動に至るまで、コンピュータ以外の場面も多くあります。

 普通に当たり前に「水」のように、セキュリティがインフラになる時代が近いうちにくるのでしょうね。今後の動向に期待します。

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