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» 2010年08月30日 08時00分 UPDATE

事業の核はSIからサービスへ――NEC 富山執行役員常務(前編)

NECでITサービスビジネスユニットを統括する富山氏は「SIを負担に感じ始めているユーザー企業もある。NECはじめITベンダーはサービス提供にビジネスモデルをシフトすべき時だ」と話す。

[石森将文,ITmedia]

 2009年の4月に掲げた「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」という旗印の下、クラウド事業を推進し、既存アプリケーションのSaaS提供にも力を注いできたNEC。関連ビジネスユニットの再編も行うなど、そのIT提供モデルも、大きくクラウド型へシフトしつつある。ITサービスビジネスユニットを統括する取締役 執行役員常務 富山卓二氏に、クラウド戦略について聞いた。


取締役 執行役員常務 富山卓二氏 NEC 取締役 執行役員常務 富山卓二氏

ITmedia 国内外を問わず、ITベンダーにとって“クラウド”は主要なキーワードとなっている。他方NECのメッセージを見ていると、ハードウェアベンダーでもありながら、クラウドのモデルの中でも“SaaS”に力点が置かれている印象がある。

富山 我々の「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」という名称については「サービスなのに、なぜソリューションなのか?」と言われたり「(ハードウェアの仮想化などに軸足を置いた)一般的なクラウドとは異なるのでは?」と指摘されたりもしました。ですが、命名の背景にはAmazonやGoogleのような北米発のクラウドサービスが、果たして国内のユーザーが求めているものなのか、そして受け入れられるのかという問題意識があったのです。

 例えば、IT基盤だけをクラウドで利用するにしても、実際にはその上(で稼働する業務アプリケーション)を開発する必要があります。そして日本企業の場合、アプリケーションは自社開発ではなく、システムインテグレーター(SIer)の協力を受け、開発するケースが多いのです。つまり、(AmazonやGoogle から)IT基盤だけ借りてきたとしても、上位アプリケーションを乗せなければいけません。真にユーザーの役に立てるのは、ただの“リソース貸し”ではなく、業務システム、業務サービスまでを提供してくれるパートナーでしょう。だからこそ我々は、“クラウド指向のサービスプラットフォーム”を目指します。

ITmedia 例に挙がったAmazonやGoogleだけでなく、IBMも“IBM Cloud”として、年内に国内でもクラウドサービスを開始する。いずれも主な用途としてスクラップとビルドの多い開発環境向けが想定されているようだが、一般の企業にとっては、業務システムそのものがクラウド化しないと、本当の効率化は難しいのではないか。

富山 メガクラスの企業であれば、開発部門と運用部門を、人材を含めて自社で持つでしょう。ですが、中堅以下の非IT企業においては、人材を確保するだけでなく、先進技術に対応できるように育成し、将来のキャリアパスまで示すのは、相当の負担になります。

 一般に、ITの使い方には2種類あります。事業のコアコンピタンスとしてITを使うか、コストセンターとしてITを使うかです。(NECのように)ITがコアコンピタンスである場合は、ITを自前で作りたい、いや、作らなければいけません。

 ですが、例えば製造業のように、ITを事業の道具として使っている場合には、そのコストをいかに下げるか? ということを考えます。我々のターゲットはそこです。“開発環境を効率化するクラウド”とは、ターゲットが違うのです。

 ただ、金融業や通信業においては、ITで構築された彼らのサービス自体が、収益の源泉になりますから、外部には任せたくないことも多いでしょう。このように業種によっても事情は異なります。

ITmedia ユーザー企業の情報システム部門には、「IT基盤と業務システムのクラウド化は、自分たちの存在意義の希薄化につながりかねない」という危惧もあるのではないか。

富山 はい。ですからクラウド化のプロジェクトは、経営層のトップダウンで進める必要があるでしょう。日本企業では“現場”が強く、彼らがそれぞれのニーズで業務システムを作る“自前主義”の傾向があります。現場に近いほど、心理的にクラウド化への抵抗もあるでしょうね。

ITmedia クラウドサービスで収益を上げる手段は、大きな方向性として“従量課金”のビジネスモデルになるだろう。他方、NECに限らずクラウドを標榜するITベンダーの多くが、オンプレミスなビジネスモデル(サーバの箱売り、ソフトウェアのライセンス売りなど)で収益を上げてきた。直近の収益構造も、まだ後者の占める割合が相当に大きいと思われる。国内ITベンダーの営業、あるいは製品開発の現場には、自分達が会社を支えてきたという自負もあるだろう。

 このような現状の中で、クラウド型のビジネスモデルに舵を切ることに対し、現場の戸惑いや混乱はないものだろうか。

富山 分かります。短期的に収益を組み立てるなら、サーバやソフトウェアライセンスの販売で大きく売り上げを立てた方が良いですから。

 ですが“景況の変化に左右されない継続的なビジネスモデルを構築する”という視点で考えると、クラウド型のストックビジネスの方が安定します。従量課金のサービスが1つだけあるのでは駄目ですが、それを幾層にも積み重ねることで、景気の変動に強い収益構造が実現します。我々はそのことに気付く必要があります。

 また、これまでのシステムインテグレート(SI)事業では、ユーザーが何をしたいのか? をずっと考えてきました。ある意味、“ユーザーの要件に従いSIしてきた”のです。ですが今後、クラウドサービスをユーザーに提供するに当たり、“(NECのクラウドで)ユーザーがどのようにして新しいビジネスモデルを構築できるか”を一緒に考え、提言していきます。つまり、ユーザーとともに新しいビジネスモデルを考えるビジネスパートナーというあり方です。事業の核がSIからサービスへ変わるのなら、ユーザーとの関係も、変わらなければなりません。

ITmedia NEC自身がSIからサービスへ軸足を移すとなると、SIerなどNECのパートナー企業は、どのように振舞うべきだろうか。IT基盤や業務システムがクラウド化、SaaS化していくと、SIの必要がなくなり、ユーザーが直接調達してしまうケースが増えるだろう。そうなると、SIerのビジネスがシュリンクすることになるのでは。

富山 業務システムの全てが、すぐにクラウドで調達できるようになるとは考えていません。カスタマイズしなければならないアプリケーションは相変わらず発生するでしょう。そういったケースでは、SIerと共同で開発することになります。

 とはいえ、ユーザー企業の中でこれだけクラウドが注目されている背景には、従来のSIを中心としたIT提供モデルに対し、ユーザー企業が負担や無駄を感じ始めていることがあります。我々だけでなく、SIerも変わるべき時でしょう。単に請け負いでITシステムを作るだけでなく、自社が提供できるサービスを開発し、それをNECがSaaSとして調達するというパートナーシップも、考えられるでしょう。


後編は9月7日に公開する予定です

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