加熱するクラウド市場と顧客視点オルタナティブ・ブロガーの視点

クラウドを提供する事業者側とユーザー企業側の温度差について、オルタナティブ・ブロガー林雅之氏が考察します。

» 2010年09月10日 16時18分 公開
[林雅之,ITmedia]

(このコンテンツはオルタナティブ・ブログ「『ビジネス2.0』の視点」からの転載です。エントリーはこちら。)

 クラウドコンピューティングというキーワードが注目され、外資系の事業者だけでなく、日系企業も「クラウド」という言葉をマーケティングに積極的に活用しています。

 わたしは毎日クラウド関連の記事をウォッチしていますが、各ベンダのクラウド関連サービスまでは、あまりにも多すぎて追いかけられない状況です。果たしてそれらのすべてがクラウドなのか、という疑問も少々あるのが正直なところです。クラウドというキーワードは、IT業界に従事している人間の視点から見るとやや過熱気味であり、どこかで冷静な視点が求められているような気がします。

 ITmediaエンタープライズの記事「加熱するクラウド市場と冷静なユーザーマインド」では、ITベンダとサービスを活用する企業の間の温度差の実態が分析されています。事業者側は積極的にクラウドのメリットをアピールしているのですが、ユーザー企業側は、セキュリティや品質の不安がまだまだ払しょくされておらず、提供者側のクラウドという発言内容を冷静に判断しようとしています。そういった状況で、クラウドという言葉を活用するITベンダは、改めて「顧客視点」を見直すべきであるという点が指摘されています。

 先日、「クラウドビジネスの進展と事業者の投資リスクについて」や「クラウド時代の営業を考える」という記事を寄稿させていただきました。顧客視点を置き去りにしてクラウド事業への投資をしつつ従来の営業活動を続けていれば、さらに、事業者とユーザー企業の温度差が広がる可能性も懸念されます。

 顧客視点を少し整理してみましょう。ユーザー企業がクラウドの導入を検討・導入する場合、経営の効率化という視点から考えると経営者が、経費として考えれば総務部門や営業部門などが、独自に導入することができるでしょう。

 実は、一番冷静な視点で捉えているのは、情報システム部門ではないでしょうか。すべてがクラウドに移行すると、自分の業務がなくなるのではないかという心理的な抵抗はあるかもしれませんが、クラウドを導入することが自社にとって安全でメリットのあるものか、冷静にかつさまざまな観点から検討を進めていることでしょう。情報システム部門は、クラウドの流れで情報戦略をうまくコントロールできない状況に陥り、情報戦略と経営戦略の整合性をはかるなど、これからの情報システム部門のあるべき姿を再構築する時期に来ていると考えることもできるかもしれません。

 以上のように、クラウドを提供する事業者とユーザー企業の間に、大きな温度差がある中で、これからどのようにギャップを埋めていくのか、もう少し顧客視点に立ち、冷静な視点で、クラウドビジネスの展開に向けた具体的な取組みをしていく時期にクラウド事業者は来ているのかもしれません。

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