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» 2010年11月15日 08時00分 UPDATE

IFRS of the day:「ムービングターゲット」と言われるIFRSでも変わらないもの

ひんぱんに改訂されるため「ムービングターゲット」と言われるIFRSにも、変わらないことが決まっていることもあります。今回は「何が変わらないのか?」について考えます。

[野口由美子(イージフ),ITmedia]

 IFRSは改訂が続いており、基準書自体が大きく変わっている最中です。このことは「ムービングターゲット」と言われ、改訂がひんぱんであることが、IFRSの適用を難しくさせる要因となっています。

 基準書の改訂が多い理由は、米国基準とのコンバージェンスが大詰めを迎えているためです。2011年中までに米国基準との共通化を達成するため、双方の会計基準を置き換えています(IFRSをめぐるアメリカの動向については前回の記事を参考にしてください)。このコンバージェンスプロジェクトでは、非常に広範囲な問題が取り上げられ、多くの基準書が改訂の対象となっています。しかし、2011年という期限を守るため、プロジェクトでの優先順位が低いものについては、検討が後回しにされることになっています。これらの項目については、当面大幅な改訂が行なわれることはありません。普段は「何が変わるか?」ということに注目しますが、今回は「何が変わらないのか?」ということを確認したいと思います。

1 財務諸表の表示

 財務諸表の表示では、キャッシュフロー計算書を直接法に一本化するということが提案されてきました。しかしこの問題については先送りされることが決まっています。

 キャッシュフロー計算書には、直接法と間接法という2つの作成方法があります。直接法はキャッシュフローを営業取引(売上代金の入金額や仕入代金の支払額など)の種類別に表示します。従って、日々のキャッシュを増減させる取引についてどの種類の取引によるものなのか記録し、集計できなくてはなりません。取引の記録も煩雑ですし、システム上の対応も必要不可欠です。それに対して間接法では、キャッシュフローを税引前当期純利益からの調整項目として表示するので、基本的に前期と当期のB/Sと当期のP/Lをもとに作成できます。間接法は、直接法よりも簡単にキャッシュフロー計算書を作成できるわけです。

 現在、日本の会計基準でもIFRSでも、キャッシュフロー計算書は直接法と間接法のどちらも採用できるので、多くの企業が間接法でキャッシュフロー計算書を作成しています。IFRSで直接法に一本化されると、多くの企業ではキャッシュフロー計算書を作成するために多大なコストを追加負担しなければなりません。それだけのコストに見合ったベネフィットがあるのか、つまり、投資家にとってそれだけ有用な情報になるのか、というところは議論の余地があり、今後もっと時間をかけて検討されることになっています。

2 負債と資本の区分

 負債と資本を分けるということは、会計では最も基本的な原則です。しかし、近年いろいろなタイプの株式が発行されるようになり、株式といっても借入と似たような性質を持つものもあります。また、国によっては借入という形式を取りながらも、実質的に債権者が株主のような権利を持っている場合もあります。何を資本とすべきなのかというのは、古くて新しい問題です。

 IASBでは、これまでの検討で普通株式のみを資本とするアプローチを改訂案として支持してきましたが、このアプローチも問題が多く、当面は現行の規定を維持し、時間をかけて検討するということに方向転換しました。

 これらのプロジェクトは先送りにされたので、基準書が大幅に改訂されることは当面ありません。いつ検討が再開されるかは明確になっていませんが、コンバージェンスプロジェクトが完了した後はしばらく基準書の大幅な改訂をしないことが予定されています。日本がIFRS適用を予定している2015年頃は、アメリカの適用も想定されているため、まだ再開されていないと思います。このようなIFRSの改訂スケジュールを考えると、2015年頃というのは、日本がIFRSを適用するのに適当なタイミングではないかと思います。


当記事はブログ「IFRS of the day」から一部編集の上、転載したものです。エントリーはこちら

筆者:野口由美子

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公認会計士、イージフ取締役。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。朝日監査法人(現あずさ監査法人)を経て、投資会社にて事業再生事業、M&Aなどに携わる。2006年より現職。決算早期化、国際会計基準対応支援プロジェクトなど、さまざまなコンサルティング分野で活躍。著書に『現場で使えるIFRS導入の実務』(日本実業出版社)。


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