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» 2010年11月29日 08時00分 UPDATE

IFRS of the day:概念フレームワークに見る、「IFRSの感覚」と「日本の感覚」の違い

IFRSに基づいた会計処理を考える時、原理原則だけに基づいた画一的な議論ばかりでは判断を誤ってしまいます。概念フレームワークに触れ、個別論点は柔軟に考えましょう。

[野口由美子(イージフ),ITmedia]

 IASB(国際会計基準審議会)とFASB(米国財務会計基準審議会)は共同で「財務諸表の概念フレームワーク」の改訂を進めています。段階的に改訂を進めていく予定になっており、2010年9月に最初のフェーズが完了しました。これで、財務諸表の概念フレームワークの中でも、一般的に利用される財務諸表の目的、と有用な財務情報の質的特性が新しいものに置き換わりました。

 財務諸表の概念フレームワークというのは、他のIFRSの基準書とは違って、企業がどのような会計処理をしなければならないとか、どういう情報を開示しなければならないとか、ルールを定めているわけではありません。あくまでも“ガイド”です。しかし、IFRSの各基準書はこの概念フレームワークに沿って個々の規定を定めているわけで、概念フレームワークがIFRS全体の思考を支えているのです。

 IFRSを考える時、どうしても基準書に定められている個々の基準書の内容に注目してしまいがちですが、概念フレームワークが何を定めているのかということは、IFRSの本質を知る上で重要です。IFRSが日本の会計基準と全く違う思考のもとに成り立っていることを考えると、おろそかにはできないところです。

 今回は、その新しい概念フレームワークの中に、IFRSについての議論で見落とされがちなポイントがありますので、紹介します。それは“重要性”という考え方です。日本の会計でも、企業会計原則の中で重要性の原則が出てきます。重要性がとぼしいものについては、本来の厳密な処理をしなくても、簡便的な方法でよい、ということです。特に私たちにとっても新しいものではありません。

 概念フレームワークの中では、その情報が省略されたり間違って報告されたりした場合、財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えるかどうかという観点で、重要性を規定しています。また重要性というのはその情報の質的、量的側面から企業が個別に判断するものとしています。従って、このような企業個別の事情については基準書の中で考慮することはないし、画一的な重要性の基準値を設けるようなこともない、ということになります。

 IFRSに基づいた会計処理を考える時、なぜか「出荷基準は認められない」「減価償却の定率法は認められない」「子会社の決算期は絶対親会社と統一しなければならない」と画一的に語られてしまうことが多いように思います。確かに、基準書には原理原則しか書いていないので、それをそのまま当てはめれば、そのような議論になってしまいがちだと思います。しかし、そのような基準書の原則は個別の企業の事情を敢えて考慮しない、それは各自が判断すべき、という概念フレームワークに基づいたものなのです。このような画一的な議論ばかりでは、判断を誤ってしまいかねません。

 IFRSについて、概念フレームワークなどIFRSの大枠の考え方に触れることで、個別論点はもっと柔軟に考えることができると思います。このようなIFRSの考え方を身につけることが一番重要なことです。


当記事はブログ「IFRS of the day」から一部編集の上、転載したものです。エントリーはこちら

筆者:野口由美子

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公認会計士、イージフ取締役。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。朝日監査法人(現あずさ監査法人)を経て、投資会社にて事業再生事業、M&Aなどに携わる。2006年より現職。決算早期化、国際会計基準対応支援プロジェクトなど、さまざまなコンサルティング分野で活躍。著書に『現場で使えるIFRS導入の実務』(日本実業出版社)。


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