マーケティング活動に不安を感じる企業実態が浮き彫りに

電通イーマーケティングワンの調査によれば、自社のマーケティング活動に不安があるという企業が多い。自社の状況を客観的に把握できるサービスが米国で開始され、マーケティング戦略の再構築に役立てる企業が多い。

» 2010年12月14日 15時12分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 「自社のマーケティング活動は他社に比べて遅れている」と考える企業のマーケティング担当者が半数以上に上る――電通子会社の電通イーマーケティングワンが実施したアンケート調査で、こうした実態が浮き彫りになった。

 この調査は、「CRM」(顧客関係管理)に関する意識を企業のマーケティング業務責任者300人を対象に尋ねたもの。自社の活動が他社よりも遅れているという回答は56.0%で、「世間並み」は34.0%、「進んでいる」は10.0%だった。

 今後重要性が高まると思われるマーケティング活動では、「新規見込み客の獲得戦略・施策の検討」(26.7%)や「顧客データベースの統合・一元化」(23.0%)が上位に挙げられた。新規顧客をどのように開拓するか、既存顧客の情報をいかに活用するかについて課題を抱える企業が多い様子がうかがえる。

今後重要性が高まると思われるマーケティング活動は何か(出典:電通イーマーケティングワン)

 また、CRMを実施する上での課題には「成果が出るまでに時間がかかる」(44.3%)や「成果を可視化しにくい」(37.3%)などが挙がった。マーケティング活動で一定の成果を得るには時間がかかるものの、経営側は短期間での成果を求める傾向にあるという。電通イーマーケティングワンは、短期的な効果が見込まれる新規顧客の獲得と、長期的な効果が見込まれる施策を識別し、実行する必要があると分析している。

思うほど進まない成果

Webtrends デジタルマーケティング最適化プラクティス ディレクター ジェーソン・ウィダップ氏

 海外でも、マーケティング活動で成果が得られていないと考える企業は少なくない。企業のWebマーケティングに関するコンサルティングを手掛ける米Webtrends ディレクターのジェーソン・ウィダップ氏は、「マーケティング担当者が立案した戦術をうまく実行できていないケースが目立つ」と指摘する。

 同社はWebアクセス解析ツールやコンサルティングサービスを提供する。ウィダップ氏は、米国でIT企業や消費財メーカーなど多数の企業で効果的なWebマーケティングの実現を支援している。同氏はその経験を基に、企業のマーケティング活動の成熟度を測るフレームワーク「Digital Marketing Maturity Model」(DM3、デジタルマーケティング成熟度モデル)を開発した。

 DM3は、「計測のための戦略」「リソースと知識」「データの統合と可視化」「分析と洞察」「運用とガバナンス」「継続的な最適化」の6つの柱で構成され、マーケティングの主要な取り組みであるWebサイト解析、アクイジションマーケティング(新規顧客の獲得)、リテンションマーケティング(顧客の囲い込み)の成熟度を測ることができる。同社では成熟度を診断する無償サービスを今年秋に開始した。

 このサービスは、既に16の業界のマーケティング担当者約700人が利用している。その結果から、ウィダップ氏が指摘する米国企業でのマーケティング活動の実情が明らかになった。このサービスは日本でも2011年1月から提供を開始する予定という。

サービスの概要。Webサイト解析、アクイジションマーケティング、リテンションマーケティングについてWeb上の質問に回答するとDM3に照らした成熟度が分かる。ウィダップ氏が指揮するチームのエキスパートが改善策のアドバイスを含めて回答するため、結果が通知されるまで一定期間を要する

 同社日本法人社長の木村和之氏は、「企業の方針や事業活動によって目標は異なるので、6つの柱すべてで成熟度を高める必要はない。実情をまず把握し、目標を実現する戦略の立案と実行に活用してほしい」と話す。ウィダップ氏は今後、日本以外もDM3を提案していく考えで、「自社のマーケティング活動が世界の中でどの水準にあるのかを知ることができる手段にしたい」と語る。


 TwitterやFacebookといったソーシャルサービスがマーケティング手段として注目されるなど、企業のマーケティング活動の幅が広がっている。しかし、長引く景気の低迷で企業のマーケティング予算は縮減傾向にある。担当者には、限られたリソースの中で高い効果を得られるマーケティング戦略の実行が求められているが、その立案には自社の実情を客観的に把握できるサービスなどが役立ちそうだ。

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