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» 2011年03月22日 11時05分 UPDATE

Weekly Memo:「3.11」にみる危機管理の勘所

「3.11」と記される未曽有の大震災への対応で、あらためて危機管理の重要性が浮かび上がっている。その勘所とは――。

[松岡功,ITmedia]

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原発事故をめぐる情報が錯綜

 戦後、日本が経験したことのない最大の地震から10日を超えた。被災地ではなお懸命の救命・救援活動が続けられているが、日が経つにつれ明らかになる被害の甚大さに、ただただ胸が痛むばかりだ。

 また、制御不能に陥った東京電力福島第1原子力発電所では、放射性物質の大量放出をくい止めようと、懸命の作業が続けられている。一刻も早く深刻な状況から脱することを願うのみである。

 本コラムでも前回、私たちも強い当事者意識を持って「まずはできることから始めよう」と、ささやかながら訴えた。節電や支援の輪は大きく広がっている。その大きな力でこの難局を乗り切り、復興へと力強く前進していきたいものだ。

 さて今回は、未曽有の大震災への政府や東電の対応で、あらためて危機管理の重要性が浮かび上がっていることに注目した。

 今回の大震災への政府や東電の対応で、とりわけ当初問題視されたのは、原発事故や計画停電について国民に正確に伝えるべき情報が錯綜していたことだ。

 とくに原発事故については、想定を超えた地震と津波だったことから被害状況の把握がなかなかできなかった面はあるだろうが、テレビでたびたび中継された政府および東電の記者会見は、何とも頼りなさを感じずにはいられなかった。

 その背景として、原発事故では政府と東電との間に意思疎通の齟齬(そご)があるとも伝えられた。また、首都圏で混乱を起こした計画停電についても、綿密に検討されたものとは思えなかった。こうした状況は危機管理上、非常に問題である。

 なぜ、こんな事態になったのか。この点について、小泉内閣の5年半、首相首席秘書官を務めた飯島勲氏が、3月21日付け朝日新聞のインタビューでこう語っている。

 「危機においては官邸に情報を一元化し、課題に優先順位をつけ、衆知を集めて指示を出す。そして、トップは大局を見据え、国民にビジョンを示す。ところが、菅直人首相は政治主導にこだわるあまり大局を見失い、現場を混乱させていたのではないか」

 ここでキーワードとして挙げたいのは「情報の一元化」である。

信頼関係に基づいた情報の一元化を

 ただ、政府も情報の一元化への対応は図っている。地震発生の翌朝、菅首相は福島第1原発を視察。その3日後の15日には、原発事故に対応する統合連絡本部を東電と共同で設置し、官民一体で取り組む体制を整えた。東電との意思疎通を円滑にし、情報を共有することで事態悪化を防ぐのが本部設置の目的だが、これには伏線があった。

 菅首相が東電との意思疎通を円滑にしないといけないと考えたのは、それまで東電から官邸への情報提供の遅れがあったからだ。怒った首相は15日朝に自ら東電本店に乗り込み、同社の対応を責め立てたという。そうした経緯があって、新組織が設置された。

 一方、情報提供の遅れを指摘された東電側からみると、官邸に上げる情報は正確を期したいとの言い分もあるようだ。ただ、原子力産業は歴史的に隠ぺい体質が残っているとの見方もあり、今回の情報提供の遅れもそれに起因しているとみる向きもある。

 また、東電は地震発生翌朝の原発視察において、首相訪問の受け入れ態勢をつくる必要があった。そのために、現場の事故処理の初動が鈍くなった可能性を指摘する声もある。

 政府と東電はもともと、政府が原発の新増設や運転などの許認可権などを握っていることもあって密接な関係にある。だが、今回の原発事故の対応をめぐっては、相互に不信感を募らせた形になったようだ。

 こうしてみると、危機管理においては情報の一元化が非常に重要ではあるが、そのベースとなる信頼関係がいかに大切か、あらためて認識させられる。

 さらに今回の原発事故は、世界中が注視していることも十分に認識しておく必要がある。例えば、米紙ニューヨーク・タイムズは3月18日付けの社説で、今回の原発事故をめぐる日本政府と東電の対応について「心配になるほど不透明だ」と批判した。また、こうした対応が「日本だけでなく世界中に懸念を深めている」とした。

 政府と東電はこうした懸念を払拭するためにも、あらためて強力なタッグを組み、原発事故の収束に努めてもらいたい。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。



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