Google Appsの企業導入が50%増に、ユーザー事例を披露 グーグル

グーグルがエンタープライズ分野の事業戦略などを説明し、国内でのGoogle Appsの企業導入が広がりつつあることを強調した。

» 2011年07月20日 18時48分 公開
[國谷武史,ITmedia]
アミット・シング氏

 グーグルは7月20日、都内でエンタープライズ分野の事業戦略説明会を開催した。米Google グローバルセールス & ビジネスデベロプメント 担当副社長のアミット・シング氏らがユーザー企業動向や米Microsoftの「Office 365」サービスとの違いなどを紹介した。

 冒頭でシング氏は、戦略の基本方針を「100% Web」と披露し、検索および位置情報、Google Appsの3つの主要サービスとこれらサービスの提供基盤であるデータセンターのリソースを、ブラウザだけで全て利用できる点が強みであると語った。

 特にGoogle Appsは、世界で約300万社、3000万ユーザーを獲得するまでに成長し、国内のアクティブユーザー数も50%増加したという。3月に発生した東日本大震災では、安否確認を始めとするさまざまな情報の共有にGoogle AppsやGoogle Earth、Person Finderなどの同社サービスが広く活用されるなど、災害時におけるデータの活用においても同社の実績を証明できたとした。

エンタープライズ分野での戦略方針

 直近のユーザー事例としては、事業継続を強化する目的で6月にGoogle Appsの導入を決定した戸田建設の総合企画室 情報管理課長 佐藤康樹氏が、その背景などを紹介した。

 同社では3年ほど前からGoogle Mapsを利用して建設を担当した施設の管理などを地図上で行える仕組みを構築し、運用している。今年2月には建築現場の事務所が放火に遭い、現場で管理していたデータを失うという被害を経験。これをきっかけに事業継続体制の強化の検討をはじめたところ、東日本大震災によってさらに甚大な被害が発生した。

震災の津波で現場事務所が流され、データも失ったという。福島第1原子力発電所から2キロメートル地点にある事務所は、警戒区域に指定されているため、データを取りに行けないという事態に

 また、当時利用していた外部のメールサービスが設備を大規模災害が予想される地域に移転させることにもなったという。佐藤氏は、「こうした状況から海外のデータセンターの利用も検討に加え、その結果としてGoogleを選択した」と述べた。

 Google Appsの本格運用は9月を予定。「特に年配の社員には、どうすれば新しい仕組みをスムーズに利用してもられるかが悩みどころ」(佐藤氏)と、円滑な移行を実現するための工夫を重ねているところだという。

 また東日本大震災での情報共有にGoogle Appsのスプレッドシート機能が活用されたケースを、グーグル エンタープライズ部門シニア プロダクト マーケティング マネージャーの藤井彰人氏が紹介した。

 育児や介護支援サービスを手掛けるポピンズコーポレーションでは、全国100カ所あまりの施設の被害状況を把握するため、情報システムを担当する管理本部の渡邉勇一氏がスプレッドシートを作成し、各施設の担当者が項目別に状況を入力できるようにしたという。特に震災直後は電話などによるやり取りが十分にできず、この仕組みを利用して短時間で情報を把握・共有することができた。

ポピンズコーポレーションで活用されたスプレッドシート

 藤井氏によれば、同社を含めて東日本大震災ではGoogle Appsがリアルタイムの情報共有基盤として広く活用されたとしている。

デスクトップにしばられない

 Google Appsの対抗馬と目されるMicrosoftのアプリケーションスイートのクラウドサービス「Office 365」が6月に正式に開始されたことを受け、シング氏はOffice 365に対する見解を次のように語った。

 「彼ら(Microsoft)はデスクトップ体験を重視しているが、われわれはコラボレーションを前提したものだ。ユーザーは過去の資産にしばられる必要もない。彼らはプロプライエタリな資産とクラウドでも活用方法を模索しているようだ。ライセンスも非常にシンプルだし、彼らのように、(既存ライセンスに)追加して使うことを意識させるようなことない」

 Google Appsでは、2010年だけでも200種類以上の機能追加を図るなどしており、シング氏は当初の料金を据え置いたままで常に最新の機能を利用できる点が特徴だとも話した。また販売モデルについては、「国内だけでも200社以上の販売代理店がおり、日本の商流に対応している。独自サービスを追加できるなど、きめ細かい展開が既に可能だ」(藤井氏)とした。MicrosoftがOffice 365の販売戦略でパートナーとの協業体制を強く打ち出していることに対し、Googleはこの点でも先行していることを強調した。

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