一筋縄ではいかないMDM、先ずはデータの信頼性から

顧客や製品といった、いわゆる「マスターデータ」と呼ばれるビジネスの基本単位をどのように統一的に把握すべきか。MDMは一筋縄ではいかない大きな課題だが、先ずはデータの信頼性から始めることを専門家は勧める。

» 2011年08月02日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「向こう1〜2年、日本においてもデータ統合の機運が急速に高まるだろう」── InformaticaでMDM(Master Data Management)製品を統括するシニアデイレクター、ラメッシュ・メノン氏は期待を込めて話す。

 Informaticaは、企業内の複数のシステムからデータを抽出し、変換・加工してデータウェアハウスなどに統合する、いわゆるETL(Extract、Transform、Load)ツールの「PowerCenter」で知られるデータ統合ソリューションベンダーだが、2010年2月にSiperianを買収したのを機にMDM分野を強化している。

 メノン氏は、Kodakの例を挙げ、「InformaticaのMDMを導入することでセールスコンタクトが20%増え、関連商品の売り上げを6%増やすことができた」とビジネス上のメリットを紹介する。Kodakは、企業向けに複写機やプリンタなどを提供しているが、重要な企業顧客トップ100のリストをつくるのもIT部門に依頼し、3〜4週間も待つ必要があったという。複数のチャネルがあり、企業の購買も部門ごとにばらばらに行われていることが多いからだ。

 このようにMDM技術は、顧客や製品、部品、サプライヤーといった、いわゆる「マスターデータ」と呼ばれるビジネスの基本単位に対して統一された総合的な視点を提供するものだ。顧客だけでなく、マルチドメインでMDMを導入すれば、例えば、あるサプライヤーから過去に納入した部品の不具合が報告された場合にも、該当する製品と購入顧客を迅速に特定し、適切に対応することもできるようになる。

 とはいえ、日本の多くの企業にとってMDMが最も難しいプロジェクトのひとつであることに変わりはない。分かりやすい顧客情報の管理をとってみても、部門ごとに異なるシステムが導入され、一筋縄ではいかない。

 「われわれの顧客企業でも、顧客情報が11のシステムに分断されている例があった。こうしたカオスから脱するには、2〜3の顧客データ統合から小さく始め、次第にソースを足していくアプローチがいい」とメノン氏。Informatica MDMの最大の特徴は、顧客だけでなく、製品、部品、サプライヤーといったマルチドメインで使える点にある。

 また、InformaticaがPowerCenterを核として培ってきたデータ統合プラットフォームはデータの品質を高めることを得意としており、ビジネスの現場に役立つ、価値ある情報をもたらすはずだ。同社のデータ統合プラットフォームには「Identity Resolution」と呼ばれる機能も統合されており、法人顧客の階層構造を理解し、部門ごとではなく、全社でどのような取引状況にあるのかを把握できるようになるという。

 「これからのMDMは、データの接続性だけでなく、品質の高いデータをリアルタイムで現場に提供する機能が求められる」とメノン氏。例えば、オペレーターがCRMに新規顧客を登録しようとしたとき、先ずMDMに送られ、本当に新規なのか、既存顧客の一部門なのか、などをチェックし、CRMに戻す。こうして維持される質の高いデータは、CRMだけでなく、ERPをはじめとするほかのアプリケーションからも利用できるようにする。

 さらにわれわれは、企業に散在するデータだけでは顧客を捉えきれない時代を迎えている。いわゆる「Big Data」への取り組みだ。顧客がソーシャルメディアで自社製品に対してどのような評価を下しているのか、顧客ではない企業がなぜ競合製品を選んでいるのか。こうした社外のナレッジもMDMによるカスタマービューと連携できなければ真の価値は生まない。

 「先ずはデータの品質、データの信頼性から始めるべきだ」とメノン氏は話す。

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