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» 2011年09月21日 08時00分 UPDATE

Asia Innovation Forum 2011 Report:崖っぷちの日本、どうする? ソニー元CEO、NEC元副社長らが議論

今年で5回目を迎える「Asia Innovation Forum 2011」が開幕。オープニングセッションでは、日本の将来を憂うビジネスリーダーたちが問題提起とその解決の糸口を探った。

[伏見学,ITmedia]

 コンサルティング事業などを手掛けるクオンタムリープが主催する、アジア各国の企業経営者やビジネスリーダーに向けたセミナーイベント「Asia Innovation Forum(AIF) 2011」が9月20日、21日の日程で都内にて開催されている。

 AIFは2007年にスタートした年次イベントで、アジアの人材、技術、金融資本を有機的かつ戦略的に掛け合わせ、次世代の新産業創出を目指す場と位置付けている。今年は「岐路に立つ日本 ―今こそ次世代のための選択を―」をテーマに、3月11日に発生した東日本大震災によって甚大な被害を受けた日本が今やるべきことを模索するとともに、単なる復旧ではなく、日本の社会構造や産業構造を本質的に転換し、日本を再設計するためのビジョンを提起するのが狙いである。

 初日の冒頭、開会挨拶に登場したクオンタムリープ代表取締役ファウンダー&CEOの出井伸之氏(ソニー元CEO)は、復興に対する日本政府のビジョンのなさを目の当たりにして「震災から半年が経過しても無力感、脱力感がまん延しており、日本は岐路どころか崖っぷちに立たされている」と指摘。本来であれば、「3.11」が日本大転換のトリガーになるべきなのに、(国会などで)震災以前と同じような議論をしていることに苦言を呈した。

 こうした問題提起を受けて、「3.11で露呈した日本の課題」と題したオープニングセッションでは、出井氏のほか、一橋大学大学院 国際企業戦略研究科教授の楠木建氏、ボストンコンサルティンググループ パートナー&マネージング・ディレクターの秋池玲子氏、コラボ・ビジネス・コンサルティング代表取締役の川村敏郎氏によるパネルディスカッションが行われた。モデレーターはTBSテレビ 報道局解説・専門記者室長の杉尾秀哉氏が務めた。

オープニングセッションの登壇者。左から出井伸之氏、川村敏郎氏、秋池玲子氏、楠木建氏、杉尾秀哉氏 オープニングセッションの登壇者。左から出井伸之氏、川村敏郎氏、秋池玲子氏、楠木建氏、杉尾秀哉氏

本質的な問題は変わらない

 現在、日本においてさまざまな課題が山積しているのは紛れもない事実である。しかし、これは震災によって新たに生み出されたものは少なく、3.11以前と「本質的な問題はまったく変わらない」と楠木氏は強調する。例えば、既存産業の硬直化、新規けん引ビジネスの欠如、中・長期国家ビジョンの欠如、縦割り行政の弊害、規制産業の競争力低下などは、従前から存在していた課題であり、これらに加えて、震災の影響で、需要・供給双方の停滞、既存インフラのぜい弱性、ライフラインの確保、エネルギー供給、医療システムの弱点といった課題が浮き彫りになった。

 特に既存インフラのぜい弱性に関して言及したのが川村氏である。川村氏はNEC元副社長で、ITソリューション事業の責任者などを歴任したバックグラウンドを持つ。「日本はネットワーク基盤が強固だというわりには、震災直後のITインフラはガタガタだった。とても社会インフラを支えるシステムになっていなかった」と振り返る。

 また、秋池氏は震災発生以降、日本の強みである現場力やチームワーク、助け合いの精神が復興に役立っている反面、政治や経営の場でリーダーシップの欠如が顕著に見られたという。双方のスキルを兼ね備える人材を育成するのがこれからの日本が果たすべき役割であると力を込める。

東京一極集中という現状

 このように数多くの問題が複雑に入り混じる状況にある中、日本がすぐに取り組まなければならない課題とは何か。出井氏は、これから東北という地域で何ができるのかを考えたとき、地方行政、あるいは地方分権の重要性がいっそう増すと述べる。現在は政治、経済などあらゆる物事が東京に一極集中しているが、これを少しずつ長期的に変えていく必要があるという。

 また、東北地方の産業創出という点では、部品工場を復旧して、従来のように下請け中心の産業に甘んじるのではなく、新たな仕組みを考えるべきだとしている。

 東京の一極集中の是非について、川村氏は、産業の効率化という面では一理あるわけだが、現状では大震災のような事故を想定したシステムになっていないことが問題だと話す。

「機能を集中するのであれば、事故に対してバックアップやフェイルセーフ(障害が発生することをあらかじめ想定し、起きた際の被害を最小限にとどめる工夫をしておくという設計思想)が実現できる体制でなくてはならない」(川村氏)

 例えば、企業の情報システムで考えたとき、サーバを集約したデータセンターが事故などで機能停止しても問題なくビジネスが継続できるように、バックアップセンターを用意しておくのはごく一般的である。そうした発想に基づいて、東京から遠方にバックアップ機能を持つ副都心を構築するなどの対策が不可欠だという。

ローカルからグローバルへ

 東北地方の新たな産業創出についてはどうか。楠木氏は、海外を含め多くの企業が投資したくなるような魅力的な案件があるかどうかが重要だと説く。

 その具体例として、秋池氏が挙げたのが「スマートシティ」である。スマートシティとは、スマートグリッドなどによる電力の有効利用や、再生可能エネルギーを導入するなどの環境に配慮した都市を指す。スマートシティへの取り組みは世界規模でなされているものの、特に新興国では既に都市そのものが出来上がっているために、ほとんど成功事例がないのが実状である。秋池氏は、震災による津波でさら地になってしまった場所にこれから新しい街を作る際、地方行政はさまざまな民間企業と協力して技術援助を受けながら、スマートシティのように次代の東北の産業をけん引する土台を築いていくことが大切だという。

 また、東北地方の復興をきっかけに、日本という国の作り方や都市のあり方を見つめ直す時期が来ていると出井氏は強調する。そのキーワードが「グローカル」である。これはソニーの創設者である盛田昭夫氏がよく口にしていた言葉で、地球規模で物事を考え、地域視点で行動するという意味である。

 「日本がローカルで魅力的であれば、グローバルでも通用するはず。そのためには、他国の真似をするのではなく、先端技術や知識産業などで違う魅力を作っていくべきだ」と出井氏は力を込めた。

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