活用広がるHANA 開発者にライセンスの無償提供もSAPPHIRE NOW 2012 Orlando Report

先週開かれた年次カンファレンスの中で、SAPはインメモリコンピューティング「HANA」に関するさまざまなアップデートを行った。

» 2012年05月21日 07時45分 公開
[伏見学,ITmedia]

 独SAPが5月14日〜5月16日の日程で、米国・フロリダ州オーランドで開催した年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW 2012 Orlando」では、同社の主軸製品であるインメモリコンピューティング「SAP HANA」に関して、いくつかの新製品や事例が発表された。

SAPのビシャル・シッカCTO SAPのビシャル・シッカCTO

 SAPでCTO(最高技術責任者)を務めるビシャル・シッカ氏によると、現在、HANAは、353の顧客企業、145のインプリメント(実装)、5万6500以上のエンドユーザー、Amazon上での2000のインスタンス、7社のハードウェアパートナー、1791の専門コンサルタント、33のソリューションを持つ。「HANAは幅広い採用実績と顧客の成功を生み出している」と同氏は力を込める。

 このたびアナウンスされた最新版の「HANA SP(Service Pack)4」は、構造化および非構造化データも可能なテキスト検索や、オープンソースの統計解析言語である「R」 とのシームレスな相互運用性などの機能を持つほか、オープンソースの分散バッチ処理ソフトウェア「Apache Hadoop」技術との相互運用性によって、ビッグデータにおけるプラットフォームを実現する。

 また、今回のカンファレンスで繰り返し強調された「HANAがすべての基盤になる」という言葉が示すように、SAPの既存アプリケーションにHANAを組み込んだソリューションも登場した。BIソフトウェア「SAP NetWeaver BW on SAP HANA」や、経営管理ソフトウェア「SAP BusinessObjects Planning and Consolidation on SAP HANA」のほか、販売運用計画アプリケーション「SAP Sales and Operations Planning application」、キャッシュ予測アプリケーション「SAP Cash Forecasting analytic application」などにもHANAを実装した。例えば、BW on HANAでは、従来と比べてパフォーマンスが19倍も高速化し、リアルタイムでのデータ分析が可能となった。

 用途のさらなる拡大に向けて、開発者のサポートも強化した。Amazon Web Services(AWS)プラットフォーム上におけるHANAのライセンスを開発者向けに無償で提供する。これによって、開発者は事前設定済みのHANAの開発インスタンスを実行することでデータ分析アプリケーションなどを作成できるようになる。

 そのほか、HANAの活用事例として、100台のIBM X5、100テラバイトのメインメモリ、4000CPUコアで構成される「全世界で最も巨大なインメモリデータベースシステム」(シッカ氏)が紹介された。IBMとの協業によって実現したこの100ノードのHANAクラスタはカリフォルニア州サンタクララで稼働しており、SAPのビッグユーザー企業上位8社のシステム規模にも対応できるとしている。

SAPの創設者の一人であるハッソー・プラットナー氏の講演では、サンタクララのデータセンターと中継をつないで力強くアピールした SAPの創設者の一人であるハッソー・プラットナー氏の講演では、サンタクララのデータセンターと中継をつないで力強くアピールした

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