NRIがビッグデータ活用の企業支援活動を開始

野村総研はビッグデータを活用して企業の業務改革を支援するという取り組みを始めた。同社執行役員の嵯峨野文彦氏は、「ビジネスモデルにつなげるためにどうビッグデータを使うかが重要」と語る。

» 2012年07月30日 16時53分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 野村総合研究所(NRI)は7月30日、ビッグデータ(多種・大量のデータ)を企業の業務改革支援に活用することを目的とした「NRI ビッグデータ・ラボ」の開設を発表した。顧客企業と共同でビッグデータによる業務改革手法の実証実験をスタートさせている。

 NRI ビッグデータ・ラボは、同社が顧客企業などと新サービスの創出を目指すプロジェクト「NRI 未来ガレージ」の一環として立ち上げたもの。この日行われた記者会見では組織概要や方向性と、耐久消費財メーカーおよび金融機関との先行事例が発表された。

 執行役員 IT基盤インテグレーション事業本部長の嵯峨野文彦氏は、ビッグデータに関する製品やサービス市場について「多数のハードや高度なソフトを売りたいというベンダーの思惑が先行している。業務課題の解決やビジネスモデルの創造に貢献する仕組みとして提供することが重要」と述べ、今回の施策は同社の包括的なサービス強化に向けた取り組みであると強調した。

 NRI ビッグデータ・ラボではコンサルタント、データアナリスト、システムエンジニアが“三位一体”で、企業が抱く経営課題の解決にあたる。専門家が課題の明確化と原因や解決のための仮説を立案。その検証にビッグデータ分析を取り入れ、従来に比べてより効果的な施策の実現を目指すとしている。

NRI ビッグデータ・ラボの概要

 また嵯峨野氏は、ビッグデータの活用領域が「顧客関係(CRM)の強化」と「スマートシティの創造」の2つにしぼられつつあるとも話す。「CRMは既に事例も出始め、2013年から2015年にかけて定着していく。センサーからのビッグデータをスマートシティに活用するアイデアも近いうちにたくさん生まれてくるだろう」という。NRI ビッグデータ・ラボではまずCRM領域における実証を進めていく。

 先行事例とした耐久消費財メーカーでのケースは、従来以上に的確な顧客ニーズの把握と新規会員の獲得が目的となり、ソーシャルメディアの口コミ効果でこれを実現することを目指した。具体的には既存会員の情報とTwitterでの書き込み情報を紐付けて分析し、積極的に情報発信する顧客を抽出した。その顧客に焦点を当てたキャンペーンを実施した。

耐久消費財メーカーにおけるビッグデータ活用のケース

 分析では情報発信力(発信量と発言力)を5段階に分け、既存会員を分類。そこから、購買金額が少ない顧客でも情報発信力の高い顧客が存在することなどが分かり、こうした顧客に焦点を当てたキャンペーンを実施。ランダムに顧客を抽出する場合に比べて、口コミの波及効果が7倍に向上したという。

 一方、金融機関では金融商品の解約の予兆を、コールセンターでの応対記録と顧客情報や契約情報の分析から察知して、解約阻止につなげることを目的にした。それまでの手作業による分析作業と比較して、解約予兆の検出率が2倍に向上したとしている。

金融機関での取り組み事例

 ビジネスインテリジェンス事業部長の柿木彰氏は、「メーカーの場合、事前にソーシャルメディアやキャンペーンと親和性の高い商材を選んで実施しており、どういったケースがビッグデータ活用に向くのかを顧客を十分に検討している」と説明する。金融機関のケースでは以前は、顧客の解約阻止を営業担当者の経験や能力に依存していたが、これにビッグデータ分析を加えることでの新たな効果を確認できたという。

 従来のコンサルティングとの違いについて嵯峨野氏は、「基本的な取り組みは同じだが、分析に使う情報量や手段がより広がった。仮説と検証を同時並行で進められるようにもなり、短期間で効果を出せるメリットがあると」と話す。

 同社は、今後3年間でNRI ビッグデータ・ラボの人員を現在の約60人から350人以上に増やし、社内横断型の組織として活動を推進していくという。

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