情報大航海時代、テクノロジーが新市場を切り開く

日本IBMは「Business Analytics Forum Japan 2012」を開催し、「テクノロジーが新たな市場を切り開く」とし、同社の「スマーターアナリティクス」を売り込んだ。

» 2012年09月07日 17時25分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 日本IBMは9月7日、都内のホテルで「Business Analytics Forum Japan 2012」を開催し、企業が膨大な情報の洪水から洞察を獲得し、素早く、より良い意思決定を行えるようにする「スマーターアナリティクス」を売り込んだ。

 「経済の停滞から抜け出す方法は、今も昔も変わりない。テクノロジーが新たな市場を切り開いてくれる」── 日本アイ・ビー・エム ソフトウェア部門でビジネス・アナリティクス事業部を担当する清水徳行事業部長はオープニングの基調講演でそう話した。

 かつて経済産業省でも東京大学生産技術研究所の喜連川優教授を中心に「情報大航海プロジェクト」が立ち上げられ、今でこそ「ビッグデータ」として知られる、多種多様かつ大量の情報の中から価値ある情報を的確に検索・解析するテクノロジーの開発が取り組まれたが、清水氏もテクノロジーを上手く生かすことで何世紀も前の大航海時代と同様、新市場を開拓できるとみる。

 大航海時代は、幾つかの歴史的な事件が玉突きに起こることで始まったとされている。15世紀半ば、南太平洋のバツアヌで海底火山が噴火し、大量の火山灰が噴出される。その影響は遠く欧州にも及び、冷夏によって世界は大飢饉となる。オスマン帝国による周辺支配が強まる中も、ローマ教皇や有力都市国家とのつながりで何とか生き長らえてきた東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルだったが、キリスト教国挙げての支援が得られず、その命脈も尽きた。

 事実上は一つの都市の陥落に過ぎなかったが、東ローマ帝国の滅亡はその後の欧州に甚大な影響を及ぼす。東西交易の拠点を失ったジェノヴァやヴェネツィアといった都市国家は衰え、航海士の多くはスペインやポルトガルの新興国家に移り、新天地開拓に乗り出す。また、コンスタンティノープルは古代ギリシア文化の流れをくむビザンティン文化の中心だったため、陥落後は学者や知識人がイタリアなどに移り、ルネサンスに影響を与えた。さまざまなテクノロジーが航海術の進歩に大いに役立ったに違いない。

 「今、多くの企業が新市場としてアジアに目を向けているが、アジアと言っても実に多様だ。人々は異なる気候の下、異なる価値観で暮らしている。工場の展開と違い、“個”のレベルで顧客を理解するのは難しい」と清水氏。

 ちょうど大航海時代に天文学、羅針盤、造船技術などが遠洋航路開拓に大きく貢献したように、新市場開拓の武器としてIBMが売り込むのが「スマーターアナリティクス」だ。情報活用に関連するIBMのさまざまなテクノロジーを次の5つの視点でまとめ上げたものだ。

統合 さまざまな情報を統合する
予見 アナリティクスで素早く洞察を獲得、将来も読む
行動 分析を行動につなげる
変革 問題の解決から組織全体の変革へ
学習 Watson技術を経営に生かす

 同社がとりまとめたIBM Global CEO Study 2012では、世界のCEOは「つながり」による優位性の構築に取り組み始めたという。

 「社員とは価値観の共有と権限委譲を進め、顧客には個のレベルで応対する。自社だけでは困難なイノベーションをパートナーと実現していくことで、より複雑な経営環境を乗り切ろうとしている」と清水氏。

 大航海時代ではテクノロジーが新市場開拓の機会を拡大した。ビッグデータの時代もテクノロジーをどう生かすかが企業の優位性を左右するはずだ。

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