ビッグデータで「心を察したおもてなし」、Facebookのソーシャルグラフをマーケティングに生かすニッセンTeradata PARTNERS 2012 Report(1/2 ページ)

「Teradata PARTNERS 2012」で現地時間の10月23日夕方、ユーザー事例講演の目玉ともいえるニッセンが登場した。Facebookのソーシャルグラフ情報をマーケティングに生かし、「心を察したおもてなし」を目指す。

» 2012年10月25日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
ニッセンの柿丸氏(右)と横手氏

 ワシントンD.C.で開催中の「Teradata PARTNERS 2012」では、米国時間の10月23日夕方、ユーザー事例講演の目玉ともいえるニッセンが登場した。「Facebookから抽出した洞察の活用」というテーマが多くの参加者の関心を集め、セッション会場には米国のユーザー企業も足を運んだ。同社は今年3月に行われた「Teradata Universe Tokyo 2012」でも講演していたが、同社のソーシャルメディア分析はわずか半年で大きく前進し、具体的な成果を上げ始めている。

 1970年、京都の染色メーカーから独立し、呉服のカタログ通販を始めたニッセンは、その設立間もないころからデータベースマーケティングに取り組み、分析をコアコンピタンスとする。現在では性別・年齢別・ライフスタイル別に編集した14種類のカタログ誌を組み合わせ、年間2億冊を顧客に届けている。顧客の情報に応じて用意するパターンは数百にも上り、例えば、3世代が同居する世帯には本人宛てに加え、子ども向けと年配者向けを一緒に送るといった工夫をしている。

 また、2000年には本格的なオンライン通販サイト「ニッセンオンライン」を開設しており、現在では売り上げの半分以上がWebサイトから生み出されている。

 「オンライン売り上げの3割以上は携帯電話から生まれており、中でもスマートフォンの比率が急伸している。スマートフォンとその普及によって利用が活発化しているソーシャルメディアが今後のe-コマースを大きく変えていくだろう」と話すのは、同社マーケティング本部CRM推進部でソーシャルメディアチームを率いる柿丸繁セクションマネジャーだ。

テキストマイニングが競争力の源泉に

 顧客を理解するためのアプローチは、これまで購買履歴の分析やWebログの解析が主だったが、今後はソーシャルメディアへの書き込みを分析することで、家族関係・友人関係、人生の節目となる行事、日常の出来事、さらには感情やパーソナリティーまで把握し、「顧客の心を察したおもてなし」(柿丸氏)へと同社のCRMを進化させようとしている。

 「ソーシャルメディアは単なる顧客にリーチするツールから顧客とのコミュニケーション媒体へと変貌を遂げている。今後は、そうした顧客の声をテキストマイニングによって理解することが競争力の源泉になるはずだ」と柿丸氏。

 同社では個人のプロフィールや人間関係、書き込みなどのいわゆる「ソーシャルグラフ」情報にアクセスするため、FacebookやTwitterなどのソーシャルIDによってログインをできるようにオンライン通販サイトを改善した。そして、ソーシャルグラフ情報へのアクセスを許可してもらう代わりにパーソナライズされた「マイコネクトショップ」サービスの利便性を提供する。

 「ソーシャルIDとニッセンの会員IDがつながることによって、社内の購買履歴とソーシャルグラフ情報が関連付けて分析でき、購買につながるバックグラウンドやトリガーを発見できるようになった」(柿丸氏)

 購買履歴やWebログの分析では知ることのできなかった、例えば、結婚、出産、ペット、引っ越し、旅行、好きな食べ物やスポーツといった人生の節目となるイベントから趣味嗜好の情報までソーシャルグラフ情報から把握でき、カタログの送付やWebサイトでのレコメンデーションに応用したところ、マーケティングに有効な200以上の変数をこれまで特定できたという。

 「ソーシャルグラフ情報を提供してもらった会員の16%がペットを飼っていることが分かり、ペットグッズのカタログ誌を送ったところ有効性が見られた。また、レコメンデーションエンジンにも応用しており、その精度向上はもちろんのこと、友だちへのギフト需要も喚起できた」と柿丸氏。

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