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» 2013年03月18日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:NECの新サービスにみる中小企業向けビジネスのヒント

NECが先週、クラウドを活用した中堅・中小企業向け経営支援サービスを発表した。こうしたサービスが今後、同市場でのクラウドビジネスの主流になっていくかもしれない。

[松岡功,ITmedia]

「クラウド型ビジネスプレイス」が登場

 「今回発表するサービスは、新しい発想から生まれた中堅・中小企業の経営を革新する仕組みだ」

 NECの中堅・中小企業向けビジネスを担当する松下公哉執行役員は3月15日、同社が開いたクラウドベースの中堅・中小企業向け経営支援サービスの発表会見でこう力を込めた。

 会見に臨むNECの松下公哉執行役員(右)と柳田真産業ソリューション事業部長 会見に臨むNECの松下公哉執行役員(右)と柳田真産業ソリューション事業部長

 「N-town(エヌタウン)」と呼ぶ新サービスは、中堅・中小企業の経営力強化や販売力強化、サプライチェーン強化、基幹業務強化といった経営上の課題に対し、各種クラウドサービスや経営コンサルティングサービスなどをワンストップで提供するもので、同社では「クラウド型ビジネスプレイス」と呼んでいる。

 クラウドサービスとしては、販売管理や会計などの基幹業務を中心に、NECとパートナー企業との連携により、5月のサービス開始時点で約20種類のメニューを用意。それぞれのサービスが連携する仕組みも提供する。メニューは今後3年間で100種類に増やす計画だ。

 また、日本能率協会コンサルティングなどのコンサルタントによる経営相談や企業間での情報交換、ビジネスマッチングの場なども提供。さらにパートナー企業とともに、基幹業務サービスを中心に、業種・業態向けに最適化したテンプレートを用意し、ユーザー企業ごとのカスタマイズ費用を抑えて、低コストでサービスを利用できるようにする。

 サービスを利用する際は、N-townのポータルサイトで会員登録するだけで、各サービスの契約やさまざまな情報へアクセスできる。さらにサービス選択のアドバイスや導入・利用時のサポートが必要な場合は、販売パートナーが直接出向いて対応するなど、「ネットとリアルの両面で全国津々浦々の中堅・中小企業をサポートする体制を整えていく」(柳田真産業ソリューション事業部長)としている。

 利用料金はサービスによって異なるが、1ID当たり月額数百〜数千円の価格を設定。こうした仕組みにより、N-townを利用する企業は社内にIT資産やITの専門知識を持った社員を抱えなくても、N-townで提供されるサービスの中から必要なサービスを選択し、利用することが可能になるとしている。

新たなステージに入ったクラウドサービス

 今回のNECの新サービスで特に注目されるのは、中堅・中小企業の中でも年商100億円未満の中小企業を一番のターゲットにしていることだ。基幹業務の観点でいうと、同社ではすでに年商500億円以下の企業向けにソフトパッケージ「EXPLANNER」、年商300億円以下の企業向けにSaaS型ソリューションを提供しており、今回の新サービスはその下位層を狙ったものとなる。

 こうした戦略展開の背景となる市場認識についてNECでは、「中堅・中小企業においては、事業拡大や経営基盤の強化に向けて、経営ノウハウの提供や専門家によるアドバイスなどが期待されている一方、経営を支えるITについては要員不足や費用が課題となっている。また、クラウドサービスについては個別サービスの導入にとどまっており、複数のサービスを組み合わせ、連携させて利用できる環境の整備が進んでいない状況だ」(松下氏)ととらえている。

 そうしたニーズを踏まえ、とりわけ裾野の広い中小企業を対象として、クラウドを活用した経営支援の“よろず相談の場”ともいえる新サービスとしてNECが仕立て上げたのが、今回のN-townである。

 元々、IT投資を抑えながら短期間で必要な業務アプリケーションなどを利用できるようになるクラウドサービスは、中小企業にこそメリットが大きいと言われてきた。しかし、実際にはサービス選択のアドバイスや導入・利用時のサポートが必要なケースが多いことも分かってきた。N-townはパートナー企業との連携によって、その最後のサービスレベルを引き上げようというものだ。

 しかも、単にITの利用を促すだけでなく、経営支援を第一義に掲げてさまざまなサービスやコンテンツを用意しているのも新たな試みだ。今後、クラウドサービスが中小企業に浸透していく大きなきっかけになるかもしれない。

 ただ、発展に向けては課題が2つあるとみる。1つは、いかに魅力のあるサービスメニューを揃えられるか、である。その意味では業務・業種・業態をカバーする数量もさることながら、実績のあるサービスからなる「質」をどれだけ高められるかが鍵を握る。

 もう1つは、パートナー企業とのビジネスモデルを確立することである。クラウドサービスとパートナー展開を掛け合わせたビジネスモデルの確立に向けては、業界全体としてもまだまだ道半ばだ。とりわけN-townはパートナー企業との連携が基本となっているだけに、パートナー企業がきちんと利益を確保できる仕組みを構築しないと発展はありえない。

 こうした課題はあるものの、先述したように今回NECが発表したクラウド型ビジネスプレイスは、今後、クラウドサービスが中小企業に浸透していく大きなきっかけになる可能性がある。正確に言うと、NECが発表したようなクラウド型ビジネスプレイスが、である。というのは、恐らく今後、NECの競合となる大手ベンダーがこぞって同様のサービスを仕立て上げてくるのではないかと推測できるからだ。

 クラウド型ビジネスプレイスが今後、中小企業向けビジネスの主戦場になる可能性もあるのではないか。GoogleやSalesforce.comといったグローバルなクラウド専業ベンダーも参戦してくるだろう。そうなると、まさしく企業ブランドの戦いになる。

 競合ベンダーたちは今、元々パートナー企業との連携に強みを持つNECの今回の発表をヒントに戦略を練っているのではないか。その意味では、同社の今回の発表は、クラウドサービスにおける戦いが新たなステージに入ったことを物語っているのかもしれない。

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